コンテクストとハイコンテクスト「シン・ゴジラ」は何故海外では受けないのか?

日本では大ヒットしている庵野秀明総監督「シン・ゴジラ」ですが、海外報道では非常に不評で、早々に打ち切られる国も相次いでいます。なぜ、こんなことになったのか、バノイスさんと討議しました。ちなみに私は日本人として「シン・ゴジラ」を傑作だと思っています。
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 「劇画漂流」は辰巳ヨシヒロの自伝で、戦後、漫画家を志してから、児童漫画の枠を超えた大人向けの漫画「劇画」を考案し、仲間達とともに劇画表現運動を始めるまでの物語です。辰巳が描いてきたフィクションとしての劇画とは異なっています。

2016-09-18 23:34:11
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 正直日本の戦後史と漫画史の知識がないと難しい内容だと思うのですが、海外ではどのような文脈で評価されたのか、私は英語が苦手なのでw 今度「劇画漂流」の担当編集者に尋ねてみます。アイズナー賞はアメリカでは出版界のアカデミー賞みたいなものですから、一流の書評家が

2016-09-18 23:38:15
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic こぞってこの本を書評してくれたのです。アメリカでは書評家に権威があるので、欧米の年配読書家や、インテリ層に注目されることになったのです。大人向けの漫画は欧米にもありますが、辰巳ヨシヒロが「劇画」の呼称を考案したのは1957年で、この流れは世界的に一番早いのです。

2016-09-18 23:42:06
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic エリック・クーがアニメーション映画化した「TATHUMI」は「劇画漂流」に描かれた辰巳の自伝の中に、辰巳の劇画作品をアニメとして挿入したもので、フィクションとノンフィクションが混合したユニークな作品です。辰巳のフィクションは、戦後日本の風俗の中で時に私小説、

2016-09-18 23:46:03
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 時に戦後の混乱期に生きた人間の浅ましい姿、また高度経済成長から取り残された人間の孤独をテーマにした文学的な作品が多く、欧米人のインテリからもユニークで文学的な漫画だと評価されているようです。

2016-09-18 23:50:24
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 日本漫画のコンテクストがほぼ存在しない欧米で、日本の現状と無関係に欧米の書評家が評価したことで、「成熟した大人の読み物」としてのコンテクストが発生した稀有な例と言えるかもしれません。エリック・クーは辰巳を非常に尊敬し、映画は漫画を執筆する辰巳の実写で終わります。

2016-09-18 23:54:21
うちゃか @sayakaiurani

シンゴジラは台湾で大コケしたらしく、台湾の友人たちがシンゴジラの面白さを教えてくれ!って言ってきたから、シンゴジラの魅力を語ってたけど、日本人が共通して抱く感覚や歴史的背景をこと細かく説明しないとわかってもらえないから、結局社会文化学と異文化における認識の擦り合わせ的な話になった

2016-09-19 01:51:08
うちゃか @sayakaiurani

台湾ではもう打ち切りになってるのよー!1500万円ぐらいの売上だったらしい… pic.twitter.com/b1ZtcUkO4n

2016-09-19 02:01:52
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竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@ichina_sakura やはりレイモンド・バーが出てきて「日本人は意思決定の際に長い会議をしてなかなか決められないのだ」とか「自衛隊は憲法上軍隊ではないので総理の許可がないと発砲できないのだ」「日米安保条約はアメリカが日本を守る条約でないのだ」とか説明すればいいと思う。

2016-09-19 13:57:41
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@sayakaiurani 私の台湾人の友人は「シン・ゴジラ」を絶賛していましたが、それは彼が京都に15年住んでいて、日本の大学を出て日本で仕事をし、日本人の奥さんをもらって子供を作って、日本に定着しているからかもしれません。

2016-09-19 17:40:55
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@sayakaiurani ちなみに彼は日本史が大好きで、特に明治維新以降の日本の近現代史を勉強しています。

2016-09-19 17:41:15
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic やはりバノイスさんの危惧が現実的に裏付けられてきましたね。バノイスさんが提起した「日本固有のコンテクスト問題」は、まさに本質的な議論で、今後は映画のみならず、日本文化を輸出するうえで、避けて考えることができないと思います。

2016-09-19 17:54:15
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

@hkdic 私は専門が漫画ですので、日本の版元や漫画家自身の無自覚ぶりに業を煮やしていました。数年前からこの件で問題提起をしていて、「日本漫画のセリフをすべて横書きにして本も洋書開きにしろ」とツイッターで主張したら(おそらく)業界関係者に袋だたきに遭い、大炎上しました。

2016-09-19 18:04:49
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic その通りだと思います。それで私は漫画業界の支援をまったく受けないで「電脳マヴォ」を作ったんです。経営が軌道にさえ載ってくれたら、Web雑誌のまま、海外展開を独自にやりたいと考えています。道は遠いですが。業界の中でやろうとしたら、企画は絶対に潰れます。

2016-09-19 18:09:58
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 黒澤映画は、実は日本ではそれほどでもありませんでしたが(「七人の侍」でさえその年の邦画ランキングで3位)、海外では非常に受けています。北野武の映画も同じです。この二人は、特に海外受けを狙っていたわけではないのですが、海外で受けて、日本ではいまいちなのです。

2016-09-19 18:15:11
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 私は日本の文化市場を「1億人のガラパゴス」と呼んでいます。日本は昔から「文化は海外から取り入れるもので、出すものではない」と考えているとしか思えません。外に出したところで、どうせわかりっこないと思っているのです。そこに私は拗れたプライドと、ナショナリズムを見ます。

2016-09-19 18:22:43
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic 最大の問題は、日本の人口は1億3千万人あり、「中途半端に大きな市場」だということです。国内でヒットすれば、それで満ち足りてしまうのです。これが韓国のように人口5千万人しかいない国であれば、文化でビジネスしようと思えば海外進出を真剣に考えざるをえません

2016-09-19 18:28:31
竹熊健太郎《Aタイプ》 @kentaro666

.@hkdic しかし日本も自動車産業などでは、いち早く右ハンドルを左ハンドルにした海外仕様車を製造して、ガラパゴスを脱したおかげで、高度経済成長が終わった今も日本の主要輸出産業になり続けています。家電製品は「性能神話」が徒になって、韓国や中国の後塵を拝するようになりましたが。

2016-09-19 18:34:55