マンガを展示するということについて、「ルーヴルNo.9~漫画、9番目の芸術~」への指摘

好評を博している『「描く!」マンガ展』の監修を手がけるなどしている マンガ評論家・伊藤剛さん(@GoITO)のツイートより。
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リンク フジテレビ ルーヴルNo.9 〜漫画、9番目の芸術〜 | Manga-9Art Manga is Art ー 2016年夏、ルーヴル美術館総監修の”漫画館”が日本に出現? 漫画/バンドデシネ(BD)作家たちによる、魅惑の共演。 38 users 5688
伊藤 剛 @GoITO

東京工芸大学マンガ学科教授。著書『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』共著書『マンガメディア文化論』『鉱物コレクション入門』など 2012~14年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査員。2019年大英博物館マンガ展学術協力。※ツイートは個人の見解、意見です。 好きなもの:ホームセンター、農産物直売所

畠山宗明 @gilledwhale

『「描く!」マンガ展』二回目、手塚治虫から石ノ森章太郎、水野英子を扱った第一部は、手塚に見られる他のキャラクターの借用など、あえて他者の影響の大きい初期作品を展示することで、手塚前後の歴史を流れとして示すだけでなく、作家性(個性)とは何か、という問いかけも行っていると思った。

2016-09-23 00:22:10
畠山宗明 @gilledwhale

石森や水野英子の、自分がわからなくなるほど強く影響される中から、反動でしなり返す葦のように、個性みたいなものが浮き上がっているの、ちょっと感動的だった。差異を生み出す反復というか。

2016-09-23 00:24:14
畠山宗明 @gilledwhale

石森に関しては、なんか手塚との距離の取り方がうまくいってないところがあるが、しかしだからこそヒーローものなどのフォーマットを作れたのでは、とぼんやり思っているんだけど、作家性だけど最初から「作家」として見てしまうと見えなくなりそうなところに光が当たっていた気がした。

2016-09-23 00:26:36
畠山宗明 @gilledwhale

あと水野英子先生の『赤いくつ』や今ネットで無料で読めるものを何作か読んだけど、少女マンガの源流というイメージとはちょっとズレる、あまりにも堂々とした「活劇」ぶりに、えもいわれぬ感動を覚えた。

2016-09-23 00:29:46
畠山宗明 @gilledwhale

水野英子『赤いくつ』のダンス、幾何学的な模様の連続みたいに描かれてるの、バズビー・バークレーみたい。本当に素晴らしい。

2016-09-23 00:31:25
畠山宗明 @gilledwhale

あと思い人の顔がふわふわ空中に出た直後、彼女のもとに急ぐ彼の場面に移るの、完全にグリフィスのラスト・ミニット・レスキューの呼吸(実際にグリフィスを参照したのかはともかく)。

2016-09-23 00:34:33
畠山宗明 @gilledwhale

あと改めて竹宮恵子をじっくり。この世代のマンガは実家にたまたまあったものが原体験となったせいで、趣味がそれに強烈に決定されてきたけど、逆に、そのラインアップになかったというだけできちんと読まずに来たものも多く、その中で一番大きなのが竹宮恵子。しかしその分衝撃も大きい。

2016-09-23 00:43:21
畠山宗明 @gilledwhale

竹宮恵子はやっぱり肉体表現がすごいと思ってみてた。60年代の線のダイナミズムを、線のエロティシズムに生まれ変わらせたというか。

2016-09-23 00:45:06
畠山宗明 @gilledwhale

実家にあったのが大島弓子、山岸凉子、倉田江美とかだったのでいかんともしがたく細い線の抽象的なイメージを持たされてきてしまった(そしてこういう人はけっこう多いのでは)が、その分竹宮恵子の線の肉体性を衝撃として受け止めることができた。感動。

2016-09-23 00:47:23
畠山宗明 @gilledwhale

『竹宮恵子のマンガ教室』、ほんとやばいでしょ。あのお尻。

2016-09-23 00:51:21
畠山宗明 @gilledwhale

そしてこうして流れで見てくると陸奥A子の突然変異っぷりが際立つ。

2016-09-23 00:54:31
畠山宗明 @gilledwhale

陸奥A子、二回目に見て思ったのは、実はかなり時空間の感覚が厳密な人なのだということ。視線を介した焦点人物の転換が、コマ内、コマ間、コマの拡張や包含(アップからミドル、ロングへの変更、それに伴うコマ内の人数の変更)が高速で展開されていく。

2016-09-23 00:59:00
畠山宗明 @gilledwhale

だから陸奥A子の作品に見られる「いわゆる」少女マンガっぽさでもある思いへの「没入」、三一致的な、遠近法的な空間感覚に接地しているからこそ効果として立ち上がってきている。

2016-09-23 01:01:30
畠山宗明 @gilledwhale

その意味でこの展覧会では、陸奥A子の作品、さいとう・たかをとのつながりの中にも置かれてるんだよね。さいとう・たかをのところで視点とコマの関係を問題意識として持たされていたからこそそれが見えてくる。

2016-09-23 01:03:27
畠山宗明 @gilledwhale

個人的に特に衝撃を受けたのはこれで、映画を見ているのと「同じ」スピードでコマが転換していくような錯覚を覚えた。 pic.twitter.com/SBMM5ynYii

2016-09-23 01:07:04
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畠山宗明 @gilledwhale

さっきの人物の転換とコマ云々でイメージしてたのはこれ pic.twitter.com/gmtYfih3EE

2016-09-23 01:12:10
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畠山宗明 @gilledwhale

あ、さっき読書体験を出したのは、自分の中に蓄積された解釈学的な背景を示すためです。そしてどうしても映画を重ねて見てしまうというのも、ものを見るときの身体的な条件としてある。その上で自分の「こう見えた」を記録してる感じです。

2016-09-23 01:17:17
畠山宗明 @gilledwhale

だから陸奥A子に関しても、「おとめちっく」なものの登場とか、解説で指摘されていたインテリア的なものの重要性とか、60年代から70年の時代の変化とか、ちゃんと考えるためには総合的な視点が必要となるだろうなとは思いますね。

2016-09-23 01:22:56
畠山宗明 @gilledwhale

このつながりでいうと、次の諸星大二郎も、想像力や絵の過剰なところなどで語られがちなのに対して、実は視点などが周到に設計されているのだ、というところが強調されていた。

2016-09-23 01:29:16
畠山宗明 @gilledwhale

で、こうした流れで見てくると、あずまきよひこの「登場人物とは自律的に動くカメラ」というのもすごいよくわかった。

2016-09-23 01:34:09
畠山宗明 @gilledwhale

身体がトリガーになってない。逆に、まず視点が強制的に変わって、人物に関しては、次のコマで位置が変わっていることから、逆算して移動なりなんなりの行為を割り出すという順番になっているというか。

2016-09-23 01:37:06
畠山宗明 @gilledwhale

で、前回は力尽きてちゃんと見れなかったPEACH-PITだけど、分業のあり方という点で、冒頭の石森の代筆から、藤子不二雄やさいとう・たかをのプロダクション、さらには島本和彦や田中圭一の「他者の線をなぞる」みたいな、展覧会全部の問題意識と関わっているのだとわかった。動画が良い。

2016-09-23 01:50:04
畠山宗明 @gilledwhale

何でこんなに饒舌になっているかというと、中学生まではわりとすっきりオタクだったのに、途中からシネフィルになってなんか体に切断層が走っている感じがずっとあったのが、その層ごと動いたみたいな感じが今してるからなんだと思う。

2016-09-23 01:56:01