- Uroak_Miku
- 1796
- 5
- 0
- 0
1)『アマデウス』は私の大好きな映画です。思うところあってセリフの分析をしています。時制の視点からです。すると面白い発見があります。 pic.twitter.com/znCmIdBlAI
2016-10-01 21:58:032)冒頭から。老作曲家アントニオ・サリエリがでっかい屋敷の奥で何か叫んでいるので召使いコンビがドアの前で「おいしいお菓子がありますよ」と声をかける場面から。
2016-10-01 22:05:203)"Signore, beIieve me. This is the most delicious thing I ever ate in my life!" ここで I have ever eaten(現在完了形)でないのはなぜでしょう?
2016-10-01 22:07:094)This is the most delicious thing(一番おいしいお菓子ですよ)は現在時制。一方で I ever ate in my life(生きてて食べたなかで) が過去時制。現在時制と過去時制で対比ニュアンスを強調しているのです。
2016-10-01 22:10:245)自殺未遂後、精神病院の一室で老作曲家は、見舞いに来た神父を相手に自分の往年の大ヒット曲の出だしを弾いてみて無反応なのに驚く。ところがあるメロディには神父は目を輝かせる。
2016-10-01 22:14:346)"I' m sorry, I didn't know you wrote that."(おお、今のはあなたが書いた曲でしたか)
2016-10-01 22:15:577)老人はうなだれる。"I didn't. That was Mozart."(違う。モーツァルトだ) 過去時制ですね。「私はその曲を書かなかった、モーツァルトが書いた」。日本語だと「私が書いた曲ではない。モーツアルトが書いた曲だ」つまり文末が「ない」や「だ」なのに。
2016-10-01 22:18:578)日本語では文の基本が「今」で、そこに過去ニュアンスが混じるスタイルですが英語では過去のできごとは過去時制で語られる。
2016-10-01 22:20:179)"l admit, l was jealous when l heard the tales they told about him."(実際、神童モーツァルトの噂を耳にすると妬ましかった)
2016-10-01 22:23:4410)"Not of the brilliant little prodigy, but of his father, who had taught him everything."(天才少年にではなく、父親のほうの噂に嫉妬したんだ。息子に英才教育を施したという父親に)
2016-10-01 22:25:2311)過去時制の文のなかに過去完了時制が混じる。英語は過去を表すにも二段構え。神童くんの神童ぶりを耳にする少年時代のアントニオが「過去」で、その神童伝説の始まりとなった英才教育は「もっと過去」という二段構えぶり。
2016-10-01 22:28:0313)「今」と「過去」はあくまで相対的なものと日本語では考えられているからです。英語では「過去」とは物差しの0地点よりマイナス部分にあるのをそう呼ぶけれど、日本語では「今」に比べてもっと前の出来事を「過去」と考える。
2016-10-01 22:31:2214)英語では地下一階は地下一階だから「過去」であるのに対し、日本語では地下一階は地上階に比べて下の階だから「過去」。
2016-10-01 22:32:2015)自分の父親は根っからの商売人で音楽なんて無関心。アントニオは死別して久しい父親をこう振り返る。"How could I tell him what music meant to me?"(私にとって音楽は命だとどうやっても彼には理解してもらえなかった)
2016-10-01 22:35:0017)ところが無理解な父親が急死し、少年の運命が変わる。"I knew God had arranged it all. That was obvious."(神が用意してくださったんだ。明白だったね) 過去時制に過去完了時制(大過去というべきか)が混じる。
2016-10-01 22:39:5419)"As l wandered through the salon. l played a little game with myself. This man had written his fiirst concerto at the age of 4."
2016-10-01 22:42:5420)回想シーンです。画面に映るは現役時代の彼だけど声は老アントニオ。「サロンを歩き回りながら、私はささやかなゲームをひとりでしていた。問題の男は4歳で最初の協奏曲を書き上げたというではないか」。
2016-10-01 22:46:2222)"Did it show? ls talent like that written on the face?"(当時からか?そういう才能は顔に出るものだろうか) 今度は過去時制と現在時制が対比をなしていますね。なぜでしょう。
2016-10-01 22:50:0923)声は老サリエリだけど画面に映っているのは若サリエリ。ナレーションのはずがいつのまにか若サリエリの内心の声になっている。つまり回想シーンはもう「過去」ではなく「今」なのです。
2016-10-01 22:51:5624)回想シーンのなかでアントニオは騒々しい青年と遭遇し顔をしかめる。が、屋敷のどこかから妙なる音楽が響きだすと、その青年は棒立ちでこうつぶやく。「ぼくの曲だ…指揮者抜きで始めるなんて!」アントニオは衝撃。まさか今のが?!
2016-10-01 22:54:5825)ここで画面は老アントニオの病室に戻る。"That was Mozart!"(それがモーツァルトだった!) つまり老アントニオが「今」で、回想シーンが「過去」だからセリフも過去時制に。
2016-10-01 22:58:03