#ダークエルフ王国見聞録 その4 ~ゴブリン退治~

著者 へどばんさん pixiv版(https://www.pixiv.net/series.php?id=823771) ゴブリン退治編 その1 (http://togetter.com/li/1031866) 続きを読む
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へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

これまで里のダークエルフ達に親切に接して貰っていし、族長の町では揶揄するような言葉を度々耳にはしていたが、久しぶりに異種族からの明確な敵意というものをひしひしと感じる。族長の少女はむしろ例外で、やはり身分が高い程、他を見下す意識が強いのであろうか #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-15 17:40:38
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

そのようなことを考えながら、森の中の山道を歩み続けること半日、正午ごろになって討伐隊は歩みを止める。どうやら目的地に到着したようだ。 森が開け、荒れ地のちょっとした広間になっている山腹の崖下、その崖に7尺ほどの高さの大きな穴が開いている。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-15 17:43:56
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「ふむ、かつて土竜の巣穴か何かであったのだろうか。であれば、中は広そうだ」 洞穴を遠巻きに囲む一隊の中で、横に立つ女戦士は推測する。 洞窟口は枯枝や蔦で乱雑に覆われ一応の偽装はされているが、周囲に打ち捨てられた動物の骨や武具の残骸がその意味を薄めている #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-15 17:47:26
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その時、別の里の恐狼が何かを見つけ、主人に静かにその位置を鼻先で示す。見れば、ゴブリン達が付けたであろう獣道に、蔦で偽装した細い縄が地面の直ぐ上に張られている。おそらく鳴子の類の警戒装置であろう。この辺りは流石ゴブリンらしい狡猾さである。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-15 17:49:53
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「ふむ、彼奴ららしい小細工であるな。まぁ、それではこれを逆手に取らせてもらうとするか」 将は何らかの策を考えたらしく、討伐隊の弓兵や剣士達に静かに支持を飛ばし始める。戦の火蓋がこれから切られるという緊張感が、その場に漂い始める #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-15 17:51:52
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

木々の合間あるいは樹上に軍勢が展開し終わると、少年兵の手によって鳴子の細紐が勢いよく、ついで細かく数度振られる。案の定、ガチャガチャと金板が打ち合わされる音が森の中に響き渡る。加えて鳴子の細綱の先二尺ばかりの地面にどさりと人頭大の石が落ちてくる。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:46:48
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罠にかかった獲物を確認するためであろう、洞窟からゴブリンの一団が飛び出してくる。入り口の両脇を、大盾を抱えた2匹のゴブリンが固め、短剣や鋭い石斧、柄を切り詰めた槍を持った小鬼達5名が周囲を警戒しながら荒れ地の広間をこちらに向かうのが遠眼鏡で見えた #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:47:51
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「一の弓、二の弓放て」 馬上の将からの下知により、一斉にダークエルフの弓が放たれる。風の加護を得る彼女らの弓矢は恐るべき速度を持つ水平射撃であり、簡素な皮鎧や鉄鍋の兜もろとも胴や頭を次々と射抜かれた小鬼達は無力にも広間に倒れ伏していく #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:49:33
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「ギギッ!」 鋭く鳴いた盾持ち小鬼の後ろから2匹が片や弩を、片やスリングを構えてこちらを撃つ。略奪品であろう弩は小鬼には大き過ぎるのか狙いを大きく逸れたが、印字打ちの狙いは正確で射手の一人の肩骨を砕いた 「面倒な!魔道兵、盾持ちを燃やせ!」 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:51:23
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

女魔道士が手の甲の呪印に赤色の燐光を浮かばせながら、呪文を唱えると盾持ち小鬼の周りに火球が殺到し、たちまち彼らは黒焦げになる。それでも果敢に射撃を続ける小鬼達は防御を失いやはりあちこちを射抜かれて倒れる。入口付近の前衛はこれで全滅したようであった。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:52:59
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「よし、入り口を塞げ」 洞窟の中で敵を迎え撃つ態勢となったらしい小鬼達を戦士達が警戒しつつ、入り口の両脇に駄馬から降ろされた木杭が小荷駄の少年達の手によって打たれ、畳まれていた矢来が展開され口を塞ぐように杭へ打ち付けられる。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:54:05
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

薬師が何やら植物の種を皮袋から取り出し、矢来の傍に巻くと共に水筒の水をそこにかける。すると、むくむくと太い茨が生え出し、杭や矢来に絡み付きながら枝を伸ばし、それらを覆う。おそらくは砂漠に産し、雨期に急成長する砂漠茨の一種を品種改良したものであろうか #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:55:14
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「よく知っているな。急成長し2日ほどで枯れてしまう唯の太い茨ではあるが、戦場での矢来や柵の強化には大いに役立つのだ」そう女戦士は解説してくれる。 「軍機ではないが、人間にあまり余計な知識を教えないで頂きたいな」後ろから将の咎める声が聞こえる #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:58:19
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

入り口の封鎖が完了すると、その前で炭火が熾され、周辺の枯れ葉や枯れ枝が次々と燃やされる。次に魔道兵達が進み出て風の呪文を唱え、洞窟の外から中へとゆっくり流れ続けるように風の流れを整える。 「ゴブリンどもめ、盛大に燻してくれよう」将が残忍な笑みを浮かべる #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 14:59:03
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

洞窟の入り口の火に、次いで乾燥させた狼の糞が投げ込まれていく 「ゴブリン達は穴掘りが上手いからな。この入口の他に出口を作っていればそこから狼煙が上ってくるはずだ」とは女戦士の解説 しばらくすると崖の上部の向こう側で細い狼煙が上り立つ。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:00:55
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

一部の兵は副将に率いられ搦め手であろう崖の上側へと回った。 私は盾持ちが持っていた大盾の検分を始める。樫の木板を金具で固めた大盾であり、表面には顔料で紋章が簡素な筆致で描かれている。おそらくは集めた農兵や傭兵に貸し与えられる類の盾でろう #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:32:18
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

大盾に描かれた紋章は西方の諸侯連合に連なる、とある伯爵家のものであった。彼らの名誉を考え、この見聞録では具体名を書き残すのは避けようと思う。いずれにせよ、先日見つかった騎士階級の剣とは見合わぬものであり、略奪した武具はまだあるだろうと将達に伝える #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:33:06
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

加えて、先程の弩を検分すると見たことのない巻き取り機構がある。ゴブリンによる工夫かもしれないが、おそらくは遥か西方の国で用いられる弩であろう。冒険者か狩人から奪ったものであろうか。いずれにせよ、この洞窟に巣食う小鬼達は相応の経験を積んできたと思われる #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:33:59
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「なるほど、では装備の良い手練れの小鬼がまだ控えているということだな」女戦士は期待を込めた表情で頷く 「まぁ、多少の役には立ったようではあるな・・・」しぶしぶながら将は頷き、近習と回しのみしていた煙管から独特の香りのする紫煙を吐き出す #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:34:42
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

洞窟の周りの森には恐狼達が解き放たれ、上空には放たれた大鷹や灰色鳶、大鴉が舞い、ダークエルフ達と共に一匹の小鬼も漏らさぬと包囲網を形成している。 「そろそろ次の策と参ろうか」 新たな下知を将が飛ばすと、入り口で燃え盛る火に再び薬師達が近づいていく #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:35:20
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

薬師達は何やら相談しながら、竿秤で薬瓶から取り出した薄紅色の粉を計量している。それを火にくべると、洞窟内に流れ込む灰色の煙が徐々に赤黒くなっていく。 「これは小鬼やオークの目と喉を強く刺激する煙でな。死にはしないがひどく苦しむ」と女薬師の解説 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:53:53
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「人間にも効くかは調べていないが、一応これを顔に塗り、少し舐めておくとよい」 お茶を飲み始めた女薬師が軟膏壺を渡してくれる。 「まぁ、中に人間の苗床が居たとしても死にはしないであろう。毒の煙を焚いた方が駆除としては早いのであるがな」 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:55:04
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

赤黒い煙が洞窟に入り始めて半刻ほど立つと、洞窟の中から風に逆らい何やら音が聞こえてくる。 ダムダムと一定のリズムで打ち鳴らされる太鼓、おそらくは彼らの士気を著しく高めるゴブリンの戦太鼓か。鼓に合わせ武具をガチャガチャと打ち鳴らしあう音も響いてくる #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:56:24
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

それら打ち鳴らされる音と共に、多数の小鬼達による雄叫びの合唱が何度も繰り返される。これは彼らの戦歌なのであろうか。それら不気味な音楽と唸りが洞窟から漏れ出してくる。まるで地中の怪物が唸りながら穴から這い出てくるような有様に私は恐怖を感じた。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:57:22
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「奴ら打って出てくるぞ!小荷駄と獣使い達は下がれ。戦闘用意!」 将の指揮によって入り口を囲う様に戦列が組み直される。騎兵により角笛が吹き鳴らされ、搦め手側の兵にこちら側の戦闘の開始を伝える。視界を確保するため、炭の上が払われ煙の量が減っていく。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-16 15:58:15