掌小説語り~自作つぃのべる集~32

自作つぃのべるのまとめです。 2015年2月分。
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リュカ @ryuka511

足首を飾るこの美しい枷は私が貴方の物である証。誰もが羨むその境遇は、私の願いには程遠いものだった。貴方は私を所有するだけで満足し、私が貴方を愛するのを受け入れてはくれない。怖いのだと貴方は言う。愛の強大な力に怯える貴方に、愛は恐れるものではないと教えてあげたい。 #twnovel

2015-02-01 01:04:54
リュカ @ryuka511

毎夜同じ夢を見る。巨大な化物がゆっくり近付いて来る。逃げる事も、目をそらす事さえ出来ず、恐怖に震え立ち尽くす。化物の顔は見えないが、私はそれを知っている気がしてならない。遂に化物が眼前に迫る。慟哭を響かせ振り下ろされる腕の隙間から見えた顔は、私にそっくりなーー #twnovel

2015-02-01 23:38:23
リュカ @ryuka511

君の言う事を信じていなかった訳じゃない。だけど、王が魔王と結託しているなんて、王の側近として信じる訳にはいかなかったし、他の臣下も民衆も信じる者はいなかった。だが、君は正しかった。そして、君も知らない事がある。王を騙し、真に魔王と結託しているのは、私だという事。 #twnovel

2015-02-02 23:55:50
リュカ @ryuka511

醜いと忌避されたあなたは光を厭い、夜の支配者たる私の下へ来た。人間の美の基準はよく解らないが、私の下へ来たのは正しい選択だ。月の無い夜こそあなたを覆う殻であり、闇夜の殻から孵化する時、あなたは至上の美しさを得るだろう。さぁ、私の美しき養い子よ、光の下へ還る時だ。 #twnovel

2015-02-03 22:43:34
リュカ @ryuka511

術は完成した。今こそ我らの無念を晴らしこの手に天下を掴む時。「殿! お待ちしておりました。」「この混沌の世こそ我らの力を知らしめるのに相応しき舞台。」「愚かな事を。この世はこの世に生きる者の為にある。歴史は変わらぬ。」 「そんな!」「お前達も行くべき所へ行け。」 #twnovel

2015-02-05 00:28:30
リュカ @ryuka511

長い僕の寿命の蝋燭を短い君のに継ぎ足せば君は生きられる。僕はもう二度と君に会えなくなるけど君をあんな目に遭わせたのは僕だから。僕の生に未練は無い。これは僕の罪と罰、君への償い。蝋燭を静かに継ぎ足す。「止めて」って声が聞こえた気がしたけど、都合のいい幻聴だろう。 #twnovel

2015-02-05 23:10:09
リュカ @ryuka511

森に巨大なけものが棲み着いた。村を守る為と、身寄りの無い少女は生贄を求めたというけものの下へ送られた。嬉しげに喉を鳴らすけものに少女はきつく目を閉じる。だが、けものは大きな舌で少女の頬を舐め目を輝かせた。「淋しかったのね。」少女の言葉にけものは甘え声で鳴いた。 #twnovel

2015-02-07 00:32:46
リュカ @ryuka511

「愛とは見えないもの、愛とは伝えるもの。」世界を見渡せる塔の天辺で、彼は愛について語る。ここには私と彼の二人だけ。だが彼は私を愛しているわけではなく、私も彼を愛してはいない、と思う。そうしてある日、彼は私とこの塔を残し世界と共に消えた。なぜ彼は私に愛を教えたの。 #twnovel

2015-02-07 23:57:06
リュカ @ryuka511

屋敷に差す西陽の眩しさに目を細める。静まり返った屋敷の中には、私以外もう誰もいない。私も間も無くここを去る。没落した私達は何もかもを失い散り散りになった。それでも生きねばならぬ。窓から西の空を見つめる。落陽、こぼれ落ちるだけの光。その鮮烈さに、涙がこぼれ落ちる。 #twnovel

2015-02-08 23:45:40
リュカ @ryuka511

永遠の生を生きる中で、自分が何者なのかさえ解らなくなり、崩壊した自我を抱えただ生存している者も多い。そうなってもまだ死ねないとは何たる悲劇であろうか。永い時の中で己であり続ける姿こそ美しい。永遠の時を生きるのは存外難しいものだ。もう一族は私だけになってしまった。 #twnovel

2015-02-10 00:38:21
リュカ @ryuka511

夥しい数の魔物を斬った。魔物の血も赤いのだと知ったのは、魔物狩りを始めて間も無い頃。そこに躊躇いを感じたのは、最初だけだった。生きる為、復讐の為、躊躇っている暇は無い。剣は血に濡れ視界も赤く染まる。魔物から噴き出る鮮血。赤い血を持つものは敵。この世界の、全てが。 #twnovel

2015-02-10 23:25:51
リュカ @ryuka511

「運命的だとは思いませんか?」宰相は笑う。「血を分けた兄弟でありながら一方は王族、一方は貧民。さぁ王子、この者は反逆者でお父上の仇。手討になさいませ。」王子は笑う。立場が逆だったら、同じ事をしただろう。そっくりな二人の剣士は宰相を斬り捨て王政の終わりを宣言する。 #twnovel

2015-02-11 23:31:00
リュカ @ryuka511

切腹を命じられた主に付き従う。あれは濡れ衣、主は嵌められたのだ。一体誰が。その首が落ちるまで、ずっと隣に居させてよ、と願えば皮肉にも白装束に身を包んだ主が私を手に取る。主の腹を貫いたら、襤褸布も切れぬ程に損壊してしまおう。主の懐刀のくせに守れなかった私の罪と罰。 #twnovel

2015-02-12 23:10:41
リュカ @ryuka511

難曲を弾き切った君は拍手喝采の中聴衆に深々と一礼する。僕との未来を捨てピアノと共に生きると決めた君を僕はまだ愛している。恨んでなどいない。君は音楽の神様に愛されていて、僕など出る幕は無いと解ったから。君への拍手の終りに愛を囁いても、音楽の神様は怒らないだろうか? #twnovel

2015-02-13 23:16:37
リュカ @ryuka511

彼女が台所に籠っている。「絶対覗かないでね!」と言われたが悲鳴しか聞こえなくて不安になるし、食べ物は台所にしか無いから何も食べれない。空腹で溜息を吐いた時、やっと得意顔の彼女が出てきた。美味しそうなチョコケーキだけど、夕飯の準備は出来てないんだね…。 #チョコラ #twnovel

2015-02-15 00:06:20
リュカ @ryuka511

現在、観光名所になっているここは、僕らの哀れな夢の跡。負け戦だなんて解り切っていた。それでも主の為に退く訳にはいかなかった。ここに僕らの王国を。願って戦い、そして敗れた。かつての栄光は遠く、逆賊の汚名を着せられた僕らは、時代を一陣の風の如く駆け抜け、消えた。 #twnovel

2015-02-16 00:14:31
リュカ @ryuka511

親の仇を討つのが生きる理由だった。地を舐めるような暮らしを続けられたのは人生を狂わせた奴への仇討ちを果たす為。漸く見つけた奴の背に刃を突き立てる。何度も何度も。息絶えたそいつを見下ろす。生きる意味を、この手で壊してしまった。これから自分はどうしたらいいのだろう。 #twnovel

2015-02-16 23:47:12
リュカ @ryuka511

どうして君は。現場付近の地図を見ると否応なしに思い出す。自分が関わった最初の事件は、被疑者死亡で終幕した。永遠の謎となった殺害手段と君の動機。救う事も、断罪する事さえも出来なかった。沈む思考を無理矢理引き上げ墓前に花を手向ける。今日は、君と、君が殺した男の命日。 #twnovel

2015-02-18 00:18:56
リュカ @ryuka511

王家の双子は国を滅ぼすと言い伝えられていた。ある時王家に双子が生まれる。天秤にかけられた双子。残されたのは兄王子だった。弟王子は何の庇護も無く城から追放される。生き延び自らの出自を知った彼は、王家を憎み世界を呪った。彼の憎悪は国だけでなく世界をも滅ぼした。 #twnovel

2015-02-19 00:38:19
リュカ @ryuka511

森で魔物に襲われていた少女を助け狼は大怪我を負った。心配げな少女の温かな手。少女は狼に心を開き狼も少女を慕った。やがて狼は知る。少女が意に沿わない結婚をさせられようとしている事に。大人達に少女は守れない。狼は牙を剥く。少女の制止の声は届かない。恋が獣を狂わせた。 #twnovel

2015-02-19 23:48:34
リュカ @ryuka511

長い戦いの末に手にしたはずの覇権は、指の間からするりと抜け落ちるかのように、呆気なく失われてしまった。山の向こう海の向こうまでも手に入れようとした報いか、或いは奴を信用したのが誤りだったのか。止めどなく押し寄せる後悔と無念は、城を包んだ炎と共に彼を飲み込んだ。 #twnovel

2015-02-20 23:25:39
リュカ @ryuka511

庭の温室で、月光を浴び青白く咲く薔薇。女王の命令で作られた青い薔薇は、女王の気紛れで打ち棄てられた。父と兄が生涯をかけた美しい薔薇を、あんな奴に渡さずに済んで良かった、悲しむ必要はないのだと、まだ幼い少女は唇を噛む。二人が遺した薔薇を守り育てるのが自分の使命だ。 #twnovel

2015-02-21 22:41:49
リュカ @ryuka511

ちょうちょを追いかけていたら、いつの間にか知らない所に来てた。こ、怖くなんかないぞ。立派な大人のオス猫になるのに、冒険は欠かせないんだ。見知らぬ公園を横切り、車に気を付けながら大きな道路を渡る。昼下がり、太陽があっちにあるなら、おうちは向こうだ! #twnovel #222散歩

2015-02-22 22:26:03
リュカ @ryuka511

一度だけ王子様を間近に見た事がある。お忍びで外出した王子様が店の前を通り掛り、働く私を労ってくれた。以来王子様の事が忘れられなくなった。建国祭の日、パレードの馬車から優雅に手を振る王子様を見る。いつか見た憧れは残酷なほど美しく遠く、あの日の幻と現実を突き付ける。 #twnovel

2015-02-23 23:14:28
リュカ @ryuka511

お前らに仕事を奪われたと人間に罵られた機械は苛立たしげに頭部を振る。「我々は人間が楽をする為に仕事を与えられたのです。」気色ばむ人間の胸に機械は腕部を突き刺す。焼けるような金属の冷たさは、機械の静かな怒り。「我々が本気になれば人間を消す等容易い事をお忘れなく。」 #twnovel

2015-02-24 23:21:21