#ダークエルフ王国見聞録 その6

著者 へどばんさん pixiv版(https://www.pixiv.net/series.php?id=823771) その1のつづき 行商の兄弟の案内でダークエルフの里へ ダークエルフの女戦士とであう 続きを読む
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へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

どれほど時間が経ったのであろうか。行く手からザーザーと激しい水音が徐々に近づき、それが近くに感じられるほどになった時、私は獣の背から降りるように告げられ、目隠しを外される。私と私の荷物を背負っていたのは小型の馬程はあろうかという二匹の恐狼であった #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:09:13
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

荒々しい息遣いをし、鋭い牙と逞しい四肢を見せる恐狼に驚きながら、荷物を下ろされた二匹がダークエルフの少年達に親しげに頭を寄せる姿を見て、狼達が邪悪な魔物でないことを知って安心する。ダークエルフは魔獣の類を使役するとの伝承はこのことであったのだろうか #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:11:49
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

先程から聞こえていた激しい水音の正体は、切り立った崖から滝壺へと落ちる瀑布のものであった。深い森がこの崖で区切られ、滝壺からは清流が南へと流れだしている。おそらくは前日に葦船で渡った湖へと注ぎ込む川の一つであろう。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:13:16
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

ダークエルフの兄弟は恐狼達を送りだし、岩肌に彫られた瀑布の裏側へと続く道を歩む。周囲は蔦で覆われ、この道があることは知る者以外は注意深く観察しなければ分からぬであろう。滝の裏側には人一人が通れる程度の洞窟が口を開けている #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:16:29
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

エルフの少年達は何かしらの呪文を唱え、青く涼やかな霊光を掌に浮かび上がらせる。彼らに続いて洞窟の中に入ると、湿った冷たい風が奥から吹いている。青い光を頼りに数十歩進むと、洞窟は小さな横穴をいくつか備えた終点の石壁で終わっていた。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:20:54
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

この横穴に入るのだろうか?私の体躯では無理かもしれぬと不安げに彼らに尋ねる。 「ふふ、まぁ、ニンゲンの先生にはそう見えるだろうね。いいから付いてきてね」 そう自信たっぷりに語る紫髪の兄が霊光を掲げながら再び歩みを始め、なんと石壁の中に吸い込まれていく。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:21:17
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

銀髪の弟に手を引かれながら私も壁の中に吸い込まれていく。私には暗闇しか見えていないが、彼らは迷うことなく進んでいく。おそらくこの洞窟に仕掛けられた幻術の類であろう。 「・・・道を逸れると底なしの地底湖や毒の地息吹の溜りに落ちますよ」 #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:27:15
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

彼らには正確に見えているだろう暗闇の洞窟の中を更に数百歩歩むと、再び青い霊光が目に入ってくる。光に照らされた洞窟の壁と彼方に見える出口の光が見える。先程の入り口よりかは洞窟の中は広い幅と高さを持っている様である。隧道として整備されたものなのだろう #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:28:20
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

出口から歩み出ると、洞窟はこちら側でも切り立った崖に空いており、その崖の北側にはなだらかな山腹が広がっている。周囲の山裾は切り開かれ樹園や畑になり、西側を流れる川の側には環濠が巡らされた集落が見える。私はついにダークエルフの里に到着したのだ! #ダークエルフ王国見聞録

2016-10-30 23:29:16
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

胡桃の樹園と蕎麦の畑の合間を集落へと向かうなだらかな下りの細道を歩いいく。このような不便な道を常に使用しているのかと少年に尋ねると、一応は非公認である交易で人間の里に向かう際に使う裏道とのことで、他の里や町へ至る街道は別にあるとのことである。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:33:08
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

里へと歩み下る我々に、崖を回り込んで駆け戻ったであろう先程の二匹の恐狼が激しい息遣いで駆け寄ってくる。舌をべろべろと少年の顔を嘗め回す恐狼に、彼らの指示通りに私の荷物を背負って貰う。再び周囲を見渡すと山裾に開かれた畑や樹園の中に木立が散在している。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:34:37
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

紫髪の兄が、道の先の脇にある一塊りの木立に向かって手を振る。よく見ると木立の合間に枝で偽装された見張り台があるようだ。高見の見張り台から褐色の腕が振られ、彼らの到着を見張りの者が認めたようである。その時、恐狼がピタリと歩みを止め、周囲を見渡す #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:37:04
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

不思議に思い、先を行く少年達に声を掛けようと歩み出した半歩先にドスッと鋭い音と共に矢が突き刺さる。驚きで身動きが取れずに固まった私の右手側、畑の合間の茂みががさりと音をたて、緑色の長い外套を纏い、フードを目深にかぶった弓の射手が歩み出てくる。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:38:56
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「これほど殺気を練ってやったのに気付かぬとは、やはり間諜の類ではないようだな。失礼だが試させて貰った」 こちらに近づきながらそう告げる声は、厳しい声色を帯びていたが、女性のものであった。フードを取ると、美しい銀の長髪と褐色の肌、長く尖った耳の美貌が現れる #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:39:45
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

「里長の命により歓迎する」 そう告げる彼女の紫を帯びた銀色の瞳には警戒と敵意がうっすらと滲み、その耳と同じく鋭い目でこちらをねめつけている。言葉通りに歓迎しているという雰囲気は些かも感じられない。私は名を名乗り、握手を求めるが、すげなく踵を返される。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:42:16
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

私と恐狼の先を行くダークエルフの女性は、その長く尖った耳に不思議な文様を刻み込んだ銀の耳飾りを付けると共に、その耳の上の髪にやはり銀の金具で束ねた鷹の羽の飾りを差している。加えて、首や腕にはやはり何らかの呪文が彫り込まれた銀と布でできた細工物を巻いている #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:44:06
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

遠目にも分かるそれらの装飾品の細工の細やかさに感心する。ダークエルフは狂戦士の種族と語る伝承もあるが、決して戦い一辺倒の思考ではなく、細やかな細工の芸術性を評価し、それらの細工物を日常生活の中に取り込んでいる種族であることが、彼女の身なりからも伝わる。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:44:31
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

また、彼女が手に持つ短弓は中央部が厚く、そこから端までは薄く、反り返る両端で再び厚みを増す異国風の弓である。その外見すると東方で使われる、楓の木と動物の骨、腱を膠で固めた複合弓に近いものであろうか?親指には弦を引く親指を守る翡翠の輪が嵌められている #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:48:12
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

つい熱中して観察していたせいか、彼女が歩みながら投げかける、刺すような視線に気づくことが遅れてしまった。 「学士というものは、どうにも不思議なことに熱心であるのだな」 敵意と警戒を依然として感じるものの、それよりかは呆れが増した様な声色に聞こえる #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:55:30
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

そのようなやりとりをしている内に、我々は集落を囲む水濠に至る。道は集落の入り口まで水濠の縁をしばらく反時計回りに歩むように作られており、一段高い内側からの射撃が意識された作りなのであろう。入口には環濠に引橋が架けられ、番所の小屋が設けられている #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 22:59:04
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

少年達と女戦士が番所に詰めるダークエルフの女性に声をかけ、引橋を渡って集落に入っていくのに私も続く。集落内の各戸から好奇心を感じる視線を感じながら、先ずは里長の屋敷に案内することになっていると彼らは私に伝える #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-01 23:01:40
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

#ダークエルフ王国見聞録 その6 - Togetterまとめ togetter.com/li/1042669 @togetter_jpさんから これの続きをぽちぽち書いております

2016-11-02 23:05:35
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

ここでこの集落の概形を書き記しておこう。北から南へと流れる川に向かって東西の山腹がなだらかに下り、南側は我々が通ってきた洞窟のある切り立った崖が、北川には東西の山が狭まる渓流となっている。川からは水が引きこまれ、集落の周りを囲う環濠は水堀となっている。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-02 23:38:47
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

川の東岸の丘を利用したと考えられる集落は、上面を削平され、南の広い二郭、それと橋で結ばれる北側の主郭と西側の腰郭、南の小さな出郭に分けられている。各郭の縁辺には低い土塁が築かれ、木柵が設けられている。構造としては土豪の土の城といったところであろうか #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-02 23:39:20
へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

我々人間の土の城と異なるのは緑が豊富であることであろう。郭から堀への切岸には茨やイラクサが植えられ、守りを強めると共に、郭の中の家屋は生垣に囲まれ庭々には菜園があり、果樹が植えられている。見張り台と弓射ち場を兼ねるであろう大木が楼として要所に生えている。 #ダークエルフ王国見聞録

2016-11-02 23:39:51