#ダークエルフ王国見聞録　その７

へどばん👊🏽皇牙組 @Ero_Thrasher

とある夏の満月の夜、私は里長の館の集会所、その横にある控えの間に女戦士と並んで座っていた。私は大きな朴葉を被り木の仮面を顔に付け、女戦士も鳥獣を模った仮面を被り、青銅の鉾を持っている。鉾は刃の無い丸い縁取りで、複雑な文様が刻まれた儀礼用のものである #ダークエルフ王国見聞録

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集会の間には里の女家長達のうち８名ほどが座し、薄布だけを羽織って杯で薬酒を酌み交わしている。今宵は大水青の成虫が飛び始めて初めての満月の夜に行われる儀式の夜である。板敷の間に敷かれた絨毯は片づけられ、甘い芳香の煙が香炉から立ち込める #ダークエルフ王国見聞録

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しばらくすると、館の入り口にある階段を上り、集会の間にダークエルフの美童達が上がってくる。少年達の顔はあるいは強張り、或いは赤面し、これから行われる儀式の内容を既に言い含められているのであろう。彼らを先導してきた女性が家長達に礼をし、控えの間に移ってくる #ダークエルフ王国見聞録

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ダークエルフの少年達は白い締め込みのみを身に付け、褐色の肌には白い顔料を油で溶いたもので、水青の形を模った紋様とその周囲の複雑な渦巻き模様を描かれている。彼らは北の里よりこの里にやってきた少年達であり、今宵彼らはこの里の女性達とこの場で交わるのである #ダークエルフ王国見聞録

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「お役目ご苦労」「そちらもな」 梟の面を被り、艶やかな黒髪の北里の女性と隣に座る女戦士が言葉を交わす。豊饒の女神はこの生殖の儀式の場に、異性と交わらぬ者が居るのを好まない。この仮面を被り、化外の者として振る舞うのだとは女戦士の説明である #ダークエルフ王国見聞録

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女戦士が沢で冷やした鉄の水差しからセージを煎じた茶を杯に注ぎ、北の里の女性と私に渡す。 「薬香の催淫作用が体に沁みる前に、これを飲んでおけ。心を鎮める働きがある」 「そちらは人間の男か？巣山の里は妙な者を飼っている」 杯を空けながら北の里の女性は尋ねる #ダークエルフ王国見聞録

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集会の間では、ダークエルフの年増達が先程交していた薬酒を少年達に口移しにして飲ませている。あの薬酒も何かしらの催淫・興奮作用があるものであろう。少年達の褐色の肌に汗の玉が浮かび、とろんとした表情を浮かべている。ジジッと篝火に飛び込んだ羽虫が焼ける音が響く #ダークエルフ王国見聞録

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少年と女性、どちらからという訳でもなく、舌を重ね、少年達の引き締まった肢体が女性の柔らかな体に包み込まれていく。重ねられる口から零れ出る涎、吹き出る汗が少年達の体に描かれた白い模様を溶かし崩していく。この紋様が全て溶け落ちるまで交合は続くそうだ #ダークエルフ王国見聞録

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少年達の中性的な声が苦しげに、しかして夢中にあることを示して館の中に響き渡る。家長の女性達の随喜の嬌声もそれに重なり、ぬるぬるとした蜜が床に零れ落ちていく。多数の女性と少年が絡み合う様、これは成程、ダークエルフが淫蕩のも無理はないのかと感じる光景である #ダークエルフ王国見聞録

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とは言え、これは成人男性が少なく、その長命に反して繁殖力の弱いダークエルフ達が子を為すための儀式であり、彼女達にとっては女神の祝福の元に行われる神聖な儀式である。同じ氏族の別の里から少年達を招き、新たな子を望む家長の女性達が彼らと交わる #ダークエルフ王国見聞録

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長命の種族である彼らからすれば、大水青が愛を交す夏の夜の一時など、本当に短い時間であろう。にも拘わらず、短命でありながら恋の為に夜を飛び交し、メスの元に多数のオスが集う美しい蛾の生態に、ダークエルフ達は彼らの望みを託しているのであろうか #ダークエルフ王国見聞録

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白濁の液が注ぎ込まれ、女性達は次々と相手の少年を変えていく。腰の動きに合わせて揺れ動く麗しい髪は蝋燭の灯りに照らされ、水青の羽の如く煌めき、溶けた白の顔料と共に飛び散る汗はその鱗粉の如く感じられる。美しくも妖艶で生々しい生の喜びに満ちた空間と私は感じる #ダークエルフ王国見聞録

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「ふぅ、この茶があるとはいえ、こうもお盛んだと当てられるな。そちらでその人間とまぐわっても構わんぞ」 くくくっと北の里の女性が悪戯っぽく笑い声を上げるが、隣の席の女戦士は無視を決め込み、再びセージを煎じた茶を一口飲む。 #ダークエルフ王国見聞録

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淫液に塗れた少年達の荒い息吹がやがて穏やかな寝息に変わり、その横で彼らを慈しむ様に並ぶ家長の女性達も眠りについていく。 「さて、そろそろ夜番の交代の頃合いか。貴方も代わりの者が来たら休むがよかろう」 女戦士はそう言って私を連れ、その場を辞す #ダークエルフ王国見聞録

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「さて、我が家で床に就くとするか！」 館の外で仮面を外した女戦士の顔は、しっとりと汗に濡れ、その頬は紅潮している。 「むっ、何を期待している。べべ、別に私はそういう気分ではないからな！」 そう言う女戦士と手と繋いで家へと戻るのであった #ダークエルフ王国見聞録

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半月が満点の星空の天頂に至り、冷たい空気がその空から静かに下りてくる晩秋の夜、私はダークエルフの女戦士と集落の北にある見張り台に座っていた。赤く燃える炭と木灰が詰まった陶製の暖房器具から漏れるかすかな赤い光が彼女の褐色の肌をうっすらと照らし出している #ダークエルフ王国見聞録

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見張り台は、山裾の平原にいくつかの木立が固まる場所の一番高い樹木に据えられている。せいぜい二人が座ることの出来る板の床は簡易な柵とそれを隠す枝に囲まれている。天井には雨除けの筵が何枚も重ねられており、燃える炭と隣の女戦士の体温がその空間を温めている #ダークエルフ王国見聞録

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この見張りは、里の者が交代で行うものであり、女戦士は今晩の夜番であるそうだ。 「オーク、ゴブリン、或いは人間。邪な者が我らの里を襲うことがあってはならぬからな。まぁ、そう見つかることなどないが、これも戦士としての倣いだ」 彼女はそう説明する。 #ダークエルフ王国見聞録

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西から川の流れが、北東に広がる森から金目梟の寂しげな鳴き声が、微かに聞こえる。半月の光にうっすらと照らされた山裾が眼前に広がっている。 「ほら、そこの林縁で狐が動いているぞ。野鼠を狙っているのであろうな」 退屈を紛らわせるためか、彼女が右の林を指し示す #ダークエルフ王国見聞録

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夜目が効くダークエルフは私とは異なる夜の世界を観ているのであろう。彼女にそう伝えると不思議そうな表情で答える 「当たり前を言うのだな。例え同胞でも、視ている世界などそれぞれ異なる。お前のしている民俗学というものは、その違う世界を繋ぐ学問ではないのか？」 #ダークエルフ王国見聞録

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私の真意とは少々異なる返答であるし、何気ない言葉なのかもしれないが、彼女が私の学問の真髄を言い得てくれたようで嬉しかった。そう伝えると彼女ははにかんだ様な笑みをこぼす。 「ふふ、そうか。いや、もう、だいぶ長く一緒に過ごしたからな、お前とも」 #ダークエルフ王国見聞録

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見張り台を包む冷気と月明かりの中、不快ではない静寂がその場に流れる。女戦士は手にした長弓を柵に立てかけ、ごそごそと布の鞄の中をまさぐる。 「静かで獣達も動き回る夜だ、危険はあるまい。ここらで一服するか」 彼女はそういってパイプを取り出す #ダークエルフ王国見聞録

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銀の吸い口からトネリコの枝をくり抜いた羅宇が延び、赤い鉱石を成形した火皿には複雑な呪印が彫り込まれている。煙草入れから刻んだ煙草（けむりくさ）を幾らか布に掬い出し、別の袋から乾燥させた苔桃や樹皮、薬草も掬い出し、刻み煙草と揉み込むようにして丸めていく。 #ダークエルフ王国見聞録