2016年12月9日

そねむつ、龍むつ?【追う話 近江屋】

【追う話 池田屋一階編】の続編です。 龍馬を追う陸奥守吉行と、陸奥守を追う長曽祢虎徹の話。 ※歴史改変有り、歴史的人物と刀剣男士が会話をします ※エセ土佐弁注意 続きを読む
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り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL ゆっくりとそねむつの話を書いていきます。 近江屋へ向かったそねさんと、はたして近江屋にいた陸奥の話。

2016-11-24 22:41:47
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 青黒い闇が渦巻く中を長曾祢は走っていた。はためく白の黒の羽織も、黒に金が覗く虎のような頭髪も、短い吐息でさえ、すべて夜に飲み込まれて、望まない青に染められていた。 ただ、目だけは星のように、獣のように、人の業のように金のまま、見えぬ先を睨めつけていた。

2016-11-24 22:51:51
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 「必ず戻る。」 五人の仲間を池田屋に残して自分は本来の戦場とは異なる場所を走っていた。 敵の怒号も、仲間の声も、出撃を決める審神者の賽子ですらこの闇の中では聞こえてこない。 あるのは自分の身、一つだけ。 急に明るい場所にたどり着き、長曽祢は足を止めた。

2016-11-25 13:41:12
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 雨が上がったばかりのぬかるんだ地面が、止める足を不安定にさせる。 辺り一面が妙に明るい。 それはところどころにできた水たまりが頭上の月光を映して青々と光っていたのだった。 波紋一つ立てない水面はまるで水鏡のように白い羽織を明るい青に染める。

2016-11-25 13:47:37
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 刀に手をかけ、髪を逆立て、前髪の奥に隠された金の目をぐわりと見開き辺りの気配を伺う。 その様はまさに獣そのものであり、かつての誰かが「好敵手を探す獣そのものだ」と表した自身の元主と瓜二つであった。 しかし、周囲には誰もいない。耳鳴りだけが静寂を表していた。

2016-11-25 13:55:30
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 不意に考えないようにしていた疑問が、気泡のようにいくつも浮かんでは消える。 ここに陸奥守がいなかったら、歴史がすでに修正されていたら、この一人の状態で修正主義や検非違使に遭遇したら… 慣れていたはずの独りが、今は妙に心細い。

2016-11-26 08:53:25
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 心が揺らぎかけた時、自分の腰にある刀剣ではないものが手に触れる。 何かを包んだ柔らかな布。 「かならず戻ってこい。一振りとして折れることは許さん。そして、陸奥守を発見し、連れ戻せ。」 近侍長谷部が蜂須賀に託し、そして、蜂須賀から自分に託されたお守りだった。

2016-11-27 08:30:39
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 腰元にぶら下げられ、夜風に晒されたにもかかわらず、お守りはとても温かかった。 刀剣男士が敵に敗れた時にそれは一度だけ救ってくれるという。ぎゅっと握ると、手の先から体温が戻ってくる。ここは賽子の音も、仲間の声も聞こえないが、確かに帰り道に繋がっている。

2016-11-29 22:09:31
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 長曽祢はまた走り出した。青い小道を通り過ぎ、線対称の街を走る。突然、見覚えのある建物にたどり着いた。 「池田屋…」 ここは自分が先ほど仲間たちと降り立ち、別れた場所と全く同じ地点だった。しかし、何かが違う。 長曾祢は最初の出撃になかった柱の傷に気がついた。

2016-11-29 22:25:19
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 雨と風に晒され水の含んだ柱の無数の傷は紛れもなく刀傷であり、激しい戦闘の跡を示していた。 そっと指で傷の名残に触れる。丸みを帯びて、切れ目にはうっすらと苔のようなものが発生している。 「時間が…経過しているのか…?」 人の気配に経過しながら、勝手口を探す。

2016-11-29 22:31:35
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 見つけた勝手口からよじ登り、屋根の上から中庭を覗き込む。 先ほどまで存在していたはずの、ぽっかりと浮かんだ闇のような入り口も、自分を見送った仲間たちの姿もなく、大きな水たまりが、月を照らしてやはり青く光っている。 それはとても静かな光景であった。

2016-11-29 22:38:51
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL そっと屋根を飛び降りるが、ぬかるんだ土は思った以上に大きな音を立てる。誰かが出てくる気配はなかった。 家主は眠っているのだろうか、それともここは誰もいないのだろうか。 再度池田屋を一瞥すると、また長曾祢は走り出す。0.3km。池田屋から近江屋までの距離だ。

2016-11-29 22:41:07
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL ぬかるんだ土を含んだブーツが重く感じる。それでも迷路のような長い小道を風のように走る。 「長曽祢虎徹。陸奥守が坂本龍馬の歴史を改変する兆しを見せれば即刻切り捨て、その亡骸を連れて帰れ。いいな。」 自分に課せられた主命を実行したくはなかった。

2016-11-29 22:46:50
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 静かな小道を抜けた先に近江屋はあった。 開け放たれた扉の向こうからひどい殺気を感じ、長曽祢は瞬時に物陰に隠れた。 金の目を獣のように見開き殺気を放つ主を探す。 しかし、動くものはなく、ただ時間ばかりが過ぎていく。 行くか、退くか、二つの言葉が頭を交差する。

2016-11-29 22:51:32
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 今まで走り続けていた体の疲れが今になって襲ってきた。額から首筋にかけて流れる汗を拭うことができない。その時、内部で人影のようなものが動く。闇の中で光る橙の瞳。それは燃えるような怒りを含んでいた。 上の階へと上がっていく気配がして、それきり殺気が消えた。

2016-11-29 22:57:16
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 気配が消えたと同時にふぅと白い息を吐く。それはけして、安堵を示す吐息ではなかった。 「主命を果たさねばならんのか。」 あの瞳に見覚えがあった。 わずかに踊る膝を叱咤し、長曾祢は息を潜めて建物に潜入する。 青い夜だというのに、建物の中は妙に赤い。

2016-11-29 23:02:05
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 中の光景に、潜めていた息をはっと短く吐いてしまう。咄嗟に吸う空気は錆びた鉄と血の香りともとれる臭いがした。 暗い廊下に巨大な男の影がうつ伏せで倒れている。近寄れば、剥き出しになった体は岩のような筋肉に覆われ、黒曜石のような髪からは二本の角が覗いていた。

2016-11-30 22:50:17
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL その姿は池田屋で蜂須賀が斬り伏せた歴史修正主義者の大太刀と同じものであった。 よくよく目を凝らせば、屋敷の中は修正主義者たちの死体が塵のように積み上げられていた。死体は全部で6体。歴史修正主義者の一部隊分であった。皆、一様に一撃の刀傷を受けて絶命している。

2016-11-30 22:51:34
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 床や壁を染め上げた毒々しい血はまだ水分を含んでおり、長曾祢が、立ち止まっている間も刻々と広がっていくようだった。 考えるよりも早く、長曾祢は目の前の階段を駆け上がる。修正主義者たちを斬り伏せた刀傷は全て真っ直ぐな刀身をもった刀が作り出したことを示していた。

2016-11-30 23:02:26
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 長い足が階段を一段も二段も飛ばして二階へと駆け上がる。 二階も乱闘があったのだろうか。模様が描かれていたであろう襖には鮮やかな血潮の痕が紅梅図のような模様を描いている。 そこに佇む影を見たとき、長曽祢の金の瞳が大きく揺らいだ。

2016-12-01 20:34:29
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 筋骨逞しい肌は剥き出しにされ鋼鉄のように冷たく青く光る。広い背中も、右腕も、痛々しい骨が肌を貫くように覗かせている。癖のあるざんばらの髪も今は袈裟で隠され見えない。 その右腕が持つ刀身が真っ直ぐであることに気がついた途端、体が衝動的に動く。

2016-12-01 21:21:50
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 「この…大馬鹿野郎!」 怒号と共に振り下ろした会心の一撃を、宿敵は刀で受け止める。斬撃が擦り、割れた袈裟から懐かしい橙の瞳が覗いた。 「くっ…」 東から昇る太陽のような橙の瞳。それに気を取られた時、痛みが走る。

2016-12-02 13:27:21
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 刀装の外れた剥き出しの身に、相手の蹴りがめり込んだ。そのまま窓際まで蹴り飛ばされ、その枠に当たる。 「し…新撰組……っ…」 小さな声、そして走り去る音。痛みに顔をしかめながら窓枠の向こうを見るが、ついにその声の正体は見ることができなかった。

2016-12-02 19:30:13
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 不意に背後からの風を感じて反射的に体をのけぞらせる。ついさっきまで長曾祢が背中を預けていた木枠に、真っ直ぐな刀身が深々と刺さっていた。 「俺も殺すつもりなのか、陸奥…」 仲間の面影を残した歴史修正主義者の打刀は、何も答えることはなかった。

2016-12-02 19:33:08
り°ん @unknown_fish123

@toukenBLTL 再度振り下ろされる斬撃を鞘で受け止めるが、力の加減を忘れたような強い力に押し倒されてしまう。 十字に交差する刃と鞘の向こう、見開かれた目が自分を見つめている。 「陸奥…」 無駄だとわかっていても、言わずにはいられなかった。 「何しているんだ、お前は。」

2016-12-03 08:34:02
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