FCMの具体的な説明に入る前に、切っても切り離せないコールターカウンターのお話から。いわゆる血算はその昔、血球計算盤という道具を使って、ヒトが顕微鏡で数をかぞえて調べていました。 pic.twitter.com/GYM8amaWKt
2016-12-09 21:57:16用手法の時代はメランジュールっていう血球希釈用のピペットで血液吸って希釈して、計算盤でカウントしてた pic.twitter.com/k7DmaATzyW
2016-12-09 22:04:49これを自動化するために、1948年Wallace Coulterが自宅の地下室で発明したと言われるのがコールターカウンター。微小なスリットを開けてある仕切りの両側に電圧をかけておき、細胞浮遊液を吸引してそこを通す。 pic.twitter.com/kHlr8ShkHJ
2016-12-09 22:07:04細胞がスリットを通過するときだけ、スリットの断面積がほんの少し減少して電気抵抗(インピーダンス)が増すのを記録し、その数で細胞数を数える、という原理(コールター原理)。この原理はいまでも血球数の測定に使われています。
2016-12-09 22:09:51コールターカウンターでは、電気を用いて微粒子の大きさと数をほぼ正確に測定することができました。では、電気以外のものを使ってもっといろいろ測れないか。光はどうか。という話になってきます。
2016-12-09 22:14:41流体と光で微粒子の測定をしようという発想そのものはCoulterより古く、1934年には顕微鏡のステージ上で毛細管の中に赤血球を通し、レンズ付きの光電管で計測するという装置が発表されています。ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17817054
2016-12-09 22:19:29光を使って、流体中を流れる微粒子の測定をしよう、というのがまさに flow cyto metry の言葉そのものですね。 pic.twitter.com/NWM5RzHDzN
2016-12-09 22:22:15さて、光で微粒子の測定をする。言うのは簡単ですが、なにせ数十マイクロメートルの大きさの細胞を1つ1つバラバラにしたので、これに狙って光を当てるのは簡単ではありません。狙わないでただ強い光を照射したのではそこらじゅうが光ってしまい測定どころではないからです。
2016-12-09 22:30:18微粒子めがけて測定に資する光を正確に照射するために、2つの技術のブレイクスルーが必要でした。ひとつは光の技術で、レーザーの実用化によって、指向性を持った強い光を狙いを定めて照射できるようになりました。 pic.twitter.com/xHtRhZMkfq
2016-12-09 22:36:17フローサイトメトリーの原理で何がわかりにくいって、光学・波長と流体力学が出てくるからなんだよな。物理苦手クラスタが一気に挫折しちゃう。
2016-12-09 22:39:54もうひとつは、照射される側の微粒子を揃える技術です。いくら正確にレーザーで狙っても、ある太さを持った流体の中でどこを細胞が通るかはバラバラで、これをレーザーの焦点に合わせなければなりません。これには流体力学の技術が必要でした。
2016-12-09 22:42:00ベルヌーイの法則に従ってあらかじめ層流となるように流体を流した(シースフロー)中に、別の流体を流します。それぞれの流体の速度、粘性などの条件を調整すると、断面積を小さくし位置て絞り込むことができます (hydrodynamic focusing) pic.twitter.com/WDkChKj9M1
2016-12-09 22:52:03細胞1つ分の断面積まで毛細管を細くできなくても、層流シースフロー(laminar sheath flow)を使って、レーザーの焦点にサンプル流を合わせることができます。絞り込みの実際を動画でどうぞ。youtube.com/watch?v=Q6VPMR…
2016-12-09 22:58:52さあ、ひとつひとつの細胞に「光を当てる」ことができるようになりました。で、細胞に光を当てると何が起こるでしょうか。コールターカウンターでは電気抵抗が変化しました。FCMでは、周囲の光が変化します。
2016-12-09 23:13:00溶媒と屈折率の異なる微粒子に光が当たると、光の散乱(scattering)が起こります。粒子によっては、中に含まれる物質が励起して、蛍光(fluorescence)が発生します。
2016-12-09 23:15:54散乱光のうち、レーザーの照射方向に進んだ光を前方散乱光(forward scatter, FSC)、大きく逸れた光を側方散乱光(side scatter, SSC)として、それぞれ別の検出器で記録します。検出器にはフォトダイオードが用いられます。 pic.twitter.com/dSZuwHs6aT
2016-12-09 23:24:58コールターカウンターでは、インピーダンスの変化が時間とともに山の形で記録されました。FCMでも、検出器で記録した光の強さは時間とともに山として記録され、山の大きさ=面積(検出した光の総和、時間積分)がその粒子の発した光の強さとして数値で残ります。 pic.twitter.com/YVY3bZrObb
2016-12-09 23:32:19粒子が大きいほどレーザーに当たっている時間が長くなり、FSCの山が大きくなります。「FSCが細胞の大きさを表す」とはこのことを言います。少し直感では分かりにくいかもしれませんが、あとで動画を見て感覚をつかんでください。
2016-12-09 23:38:19