【トラスト・ザ・オリガミ・オブ・ホープ】#2

ヤモト=サンのお話の続き。やっとあの子が出てきます。果たして無事、不正の証拠となるカセットは手に入るのか!?
0
赤い方の蟹 @kaori6113

【トラスト・ザ・オリガミ・オブ・ホープ】#2

2017-02-12 23:38:55
赤い方の蟹 @kaori6113

(これまでのあらすじ:オリガミ児童館の館長・マサヨシは父の汚名を雪ぐべく、オリガミ展覧会の不正を暴こうとして命を狙われた。彼のピンチを助けたフィルギアは、不正の証拠となるカセットの場所を知っているという。2人は殺されたキチジロ老人の作品保管庫へ向かった)

2017-02-12 23:39:16
赤い方の蟹 @kaori6113

キチジロの作品は、巨大な保管庫に保存されていた。追いすがる男と泣きながら飛び立つツル、従者を率いたモタロ、巨大な球体のオブジェ。様々な作品がガラスケースに納められて展示されている。そのどれかに、当時の審査会議の録音テープが入っているという。

2017-02-12 23:39:37
赤い方の蟹 @kaori6113

「全部壊すんじゃ、時間がかかりすぎるな」フィルギアはガラスケースの間を歩きながら言った。「モチーフから想像してみよう。作品にはそのときの心境が反映される」マサヨシもガラスケースを見ながら歩く。「キチジロ=サンが、父への詫びの気持ちで作ったのなら……」

2017-02-12 23:40:43
赤い方の蟹 @kaori6113

「彼の得意分野は昔話を題材にした作品だ。この一角だな。そして、このツルだけが泣いている」彼は飛び立つツルをガラスケースから取り出した。開くと、カセットテープが1本。「日折展審査会議。カノヤマ=サンへ」と書かれている。「さすがだ」フィルギアはカセットを摘み上げた。

2017-02-12 23:42:06
赤い方の蟹 @kaori6113

CABOON!そのとき、分厚い壁の一部が爆破された。「逃げるよ!」フィルギアはマサヨシの手首を掴んで走り出す。CRAAASH!爆煙のなかから、装甲ジープが猛烈なスピードで飛び出し、ガラスケースをなぎ倒しながら突進してきた。フィルギアはとっさにマサヨシを押し出す。

2017-02-12 23:43:32
赤い方の蟹 @kaori6113

「グワーッ!」ジープはフィルギアをはね、ブレーキをかけて止まった。フィルギアは飛ばされ、壁に激突する。カセットが空を飛んだ。「アイエエエ!」転んだマサヨシは身を起こし、悲鳴を上げた。

2017-02-12 23:45:14
赤い方の蟹 @kaori6113

「いいねぇ、よく飛んだ」ジープから満面の笑みを浮かべたジュー・ウエアの大男が降り、倒れたガラスケースを跨ぎながら歩いてくる。手に巨大な棍棒、口許にメンポ。何の作用によるものか、その肌は血のように赤い。「まずまずのヒットだ」

2017-02-12 23:47:02
赤い方の蟹 @kaori6113

「ドーモ、マスキュラーです」「アイエエエ……ニンジャナンデ」マサヨシは座り込んだままNRSを発症し、しめやかに失禁した。「ホント、ひどいや。フィルギアです」フィルギアが歩いてきた。「あーあ、逃げられなさそうだねぇ」腰に手を当て、マサヨシを見る。「ちょっとがんばるか」

2017-02-12 23:48:10
赤い方の蟹 @kaori6113

「大人しくカセットを渡してくれりゃ、楽に殺してやってもよかったんだが。まぁお手並み拝見といこうか」マスキュラーは立ち止まり、棍棒を地面に立てた。フィルギアはマサヨシを掴み、イポン背負いめいて毛布の山に投げる。「アイエーエエエ!」マサヨシは気を失う。

2017-02-12 23:49:24
赤い方の蟹 @kaori6113

「GRRRR!」フィルギアはコヨーテに変身し、飛び掛かる。マスキュラーは拳で無造作にその顔を殴りつける。「グワーッ!」弾き飛ばされたコヨーテは壁に激突する直前でフクロウに変わり、弧を描いて天井へ飛ぶ。「イヤーッ!!」卍型のスリケンがそれを追う。

2017-02-12 23:49:58
赤い方の蟹 @kaori6113

フクロウが急降下し、マスキュラーの延髄を狙う。マスキュラーは振り向きざま、フクロウを棍棒で叩き飛ばした。「グワーッ!!」フクロウが床にバウンドし、人間に戻る。「もう終わりか。つまんねぇな」

2017-02-12 23:50:23
赤い方の蟹 @kaori6113

「ゴホッ……凄いパワだ……」棍棒を片手に歩いてくるマスキュラーを見ながら、フィルギアは話を続ける。「動きも早いね。それ、サイバネ筋肉?だけど、攻撃のバリエーションは増やした方がいいと思うよ」「粘るじゃねぇか。だが、もう動けないようだな?」

2017-02-12 23:51:32
赤い方の蟹 @kaori6113

「この特殊サイバネ筋肉の威力はなかなかだろ?一撃目で動けなくしてからじっくり殺せばいい。こんな風にな」マスキュラーは両手で棍棒を掴んで頭上で振りかぶった。「その綺麗な顔をグチャグチャにしてやるぜ!」その時である!

2017-02-12 23:52:48
赤い方の蟹 @kaori6113

桜色の閃光が両者の間を掠めた。「ナニッ!?」その正体は……発光したツルのオリガミ!その首に、カセットから飛び出たテープがかけられている。ツルはマサヨシの顔にぶつかって落ちた。「アイエッ!」気絶していたマサヨシは意識を取り戻し、起き上がる。

2017-02-12 23:55:13
赤い方の蟹 @kaori6113

CABOON!「グワーッ!」桜色のオリガミが編隊を組んで次々とマスキュラーに突撃し、小爆発を起こす。閃光に目が眩んだマスキュラーは手当たり次第に棍棒を振り下ろした。CRAASH!CRAASH!フィルギアはヘビに身を変え、その間をすり抜けてマサヨシのもとへ這う。

2017-02-12 23:57:59
赤い方の蟹 @kaori6113

「小賢しいマネを!逃がさんぞ!お前らは包囲されてるんだからな!」マスキュラーは奥歯に仕込んだIRC端末を噛み締めた。飛んでくるオリガミに向かって棍棒を振る。CABOON!オリガミ・ミサイルが爆発する。

2017-02-12 23:59:28
赤い方の蟹 @kaori6113

棍棒に蝶のオリガミが群がり、桜色の光を移した。「イヤーッ!!」赤いジャージに桜色のマフラーメンポをたなびかせた女ニンジャが、そこへ斬りかかる。「イヤーッ!!」マスキュラーは棍棒を振り下ろす。

2017-02-13 00:00:59
赤い方の蟹 @kaori6113

ニンジャアドレナリンが分泌され、時間が泥めいて鈍化する。棍棒が女ニンジャの頭蓋に向かって落ちていく。しかし、命中する直前で横に逸れ、床を空しく叩く。彼は目を見開いた。棍棒の先に宿った桜色の光が、狙いをわずかに逸らしたのだ。

2017-02-13 00:02:34
赤い方の蟹 @kaori6113

女ニンジャは踏み込み、マスキュラーの手首を切り落とした。棍棒が手首ごと落ちる。切り口から血が噴き出す。女ニンジャは倒れこむマスキュラーに向かってハイジャンプし、その首を刎ねた。「サヨナラ!」爆発四散!

2017-02-13 00:04:01
赤い方の蟹 @kaori6113

「ザッケンナコラーッ!!」倉庫の入り口からクローンヤクザ隊が突入してきた。IRC通信で突入の指示を受けたのだ!「早く逃げて!」女ニンジャ……ヤモト・コキがフィルギアに向かって叫んだ。「助かる」フィルギアはオリガミを呆然と眺めるマサヨシを揺さぶった。「逃げるよ」

2017-02-13 00:05:35
赤い方の蟹 @kaori6113

「近道がある。先導に従って!」叫びながらヤモトはツルのオリガミを一つ飛ばした。オリガミは保管庫に置かれたガラスケースの隙間を縫って飛び、二人を誘導する。マサヨシは録音テープとオリガミを手に、必死で後を追った。フィルギアはそれをバックアップする。

2017-02-13 00:07:04
赤い方の蟹 @kaori6113

保管庫の出口に辿り着いたとき、マサヨシは後ろを振り向いた。桜色の光は益々輝きを増し、拡散と収れんを繰り返しながら敵に突撃していく。その光のなか、鋼鉄のロボ・ニンジャへ縦横無尽に斬撃を繰り出す少女の姿が垣間見えた。

2017-02-13 00:07:37
赤い方の蟹 @kaori6113

「速報ドスエ。長年に渡る不正贈賄の疑いで、日折展のヨコシマ審査委員長をはじめとするオリガミ協会の理事全員が退任。後任はまだ未定ドスエ。また、オリガミ作家故カノヤマ=サンの『甦るフェニックス』が奨励賞を受賞。オリガミ児童館の復旧工事完了後に永久展示されますドスエ」

2017-02-13 00:08:51