紅い瞳と白き巨神

第一部、完。 リクエストがあったら続きを書くかも。 なくても、忘れた頃に書くかも(^^) 続きを読む
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夢乃 @iamdreamers

にも関わらず、イーリャの動きをまったく目で追えていない。それほどに彼女の動きは、緩慢に見えて、しかし素早く滑らかだった。前に出した両腕を交差させ、両側からセクスリーに斬りつける。セクスリーもただ待ってはいない。初動こそ一瞬遅れたものの、すぐに右に跳ぶ。 #twnovels

2017-03-03 12:55:10
夢乃 @iamdreamers

空を切った両手の剣を掌で回転させつつ、軽やかに左へと体を回して相手の背後を取ろうとするイーリャ。左手の剣をしっかりと握り、斬りつける。 キンッ セクスリーは左手を背中に回して斬撃を受け止め、体を回転させて向き直りざまに右手の剣で攻撃する。 #twnovels

2017-03-03 12:55:37
夢乃 @iamdreamers

けれどすでにそこにはイーリャの姿はない。剣を受け止められた後も動きを止めずに、セクスリーの動きに合わせるかのようにその周りを舞う。手合い開始直後の動きこそ武闘と呼べるものだったが、その後は舞踏の舞だった。それに惹かれるように、セクスリーも舞う。 #twnovels

2017-03-03 12:56:00
夢乃 @iamdreamers

突然、視界からイーリャの姿が消えた。けれどその意図を読んでいたセクスリーは慌てることなく舞の動きを保ったまま、右手だけで振り下ろされる二本の剣を受けた。火花が飛び散る。右手をそのまま払い、その勢いで左手の剣を叩きつけるように繰り出す。 #twnovels

2017-03-03 12:56:27
夢乃 @iamdreamers

しかしイーリャは、受け止められた反動を使って空中で後方に回転、着地すると一歩距離をとり、すぐに横へと跳び退いた。再び舞踏の動き。今度はセクスリーが仕掛けた。タイミングを計って距離を詰め、左手の剣を繰り出す。イーリャは木の葉のようにこれを避ける。 #twnovels

2017-03-03 12:56:56
夢乃 @iamdreamers

避けられることは計算済みのセクスリーは、剣がイーリャに届くのを待たずに身を沈め、地を這うように跳躍して後ろを取り、振り向き様に回転の勢いを乗せて横薙ぎに払う。これを両手の剣を使って受け止める、いや、受け流すイーリャ。先より激しく火花が飛び散る。 #twnovels

2017-03-03 12:57:21
夢乃 @iamdreamers

横の動きでセクスリーから離れ、また剣を回す。いつの間にか、イーリャの剣が一振り消えている? 右手で回転させていた剣を、両手を交差させて左手に、そしてまた右手に。もう一本はどうした? 先の攻撃を受け止めた際に取り落としたか。考えている暇はない。 #twnovels

2017-03-03 12:57:48
夢乃 @iamdreamers

セクスリーは相手の舞に合わせ、イーリャの剣が右手に移る瞬間を見計らって間合いを一気に詰め、右手で攻撃を仕掛けた。しかし。 「はっ!!」 その斬撃はイーリャの裂帛の気合いとともに、彼女の“左手”から繰り出された剣によって防がれた。 #twnovels

2017-03-03 12:58:14
夢乃 @iamdreamers

のみならず、セクスリーの右手の剣を弾き飛ばす。踊場の端へ、剣が転がった。勢いのついていたセクスリーは左手からの攻撃に切り替える。が、これをイーリャは右手の剣で難なく受けると、返した左手の剣の切っ先をセクスリーの喉元に突きつけた。時が止まった。 #twnovels

2017-03-03 12:58:40
夢乃 @iamdreamers

「おぉ、本当に判りやすい形で決着が着いたね〜」 ぱちぱちと手を打ち合わせて、カナテが言った。 「参った」 セクスリーが言うとイーリャは剣を引き、左手に持ち替えて右手を差し出す。セクスリーも残った剣を納めると、姿勢を正して差し出された手を握った。 #twnovels

2017-03-03 12:59:01
夢乃 @iamdreamers

「また勝てなかったか」 そう言う彼の顔は悔しさを感じさせつつも、どこか満ち足りた風に見えた。 「でも、辛うじて勝てた、って感じ。もっと練習しないと、次は負けちゃうかな」 イーリャも今の勝負に満足がいったように微笑む。 #twnovels

2017-03-03 12:59:24
夢乃 @iamdreamers

「今度は瞬殺とはいかなかったね〜。流石は師範代」 カナテが二人に近付いてきた。 「負けてちゃ同じだよ。って言うより、お前は俺が瞬殺されることを期待してたのかよ」 呆れた返った様子のセクスリー。 #twnovels

2017-03-03 12:59:45
夢乃 @iamdreamers

「まぁね。さっき二年前の対戦を思い出させて貰ったから。あの再現と行かないかなぁ、と」 ニヤニヤ笑いを堪えきれないカナテ。 「・・・ったく。あっと、それよりイーリャ、さっきのはどうやったんだ? 途中から剣が一本無くなったように見えたんだが」 #twnovels

2017-03-03 13:00:06
夢乃 @iamdreamers

「気付かなかった? なら、成功かな。あれはねぇ、ここに隠してたんだよ」と、剣を持っていない右手を横に上げてひらひらさせる。 「ここって・・・どこだよ? 焦らさないで教えろよ」 「あれ? 判んない? カナテには見えてたでしょ?」 #twnovels

2017-03-03 13:00:38
夢乃 @iamdreamers

「まぁね」 まだニヤニヤしているカナテ。 「判らないのは俺だけかよ」 セクスリーは天井を仰ぎ見た。 「私だってイーリャと対峙してたら判ったかどうか、怪しいよ。横から見てたから判ったけど」 漸く笑いを引っ込めて、カナテは言った。 「そうなのか?」 #twnovels

2017-03-03 14:09:24
夢乃 @iamdreamers

「うん。イーリャはね、これを使ったのよ」 と言ってカナテは、イーリャのゆったりしたシャツの袖を引っ張った。 「袖? 袖の中に仕舞う暇はない筈だから・・・袖の後ろか」 「そそ。私やあんたじゃ思いつかないよね。私は乳当てだけだし、あんたは上半身裸だし」 #twnovels

2017-03-03 14:09:50
夢乃 @iamdreamers

「そうでもないよ。袖のないシャツだったら腕で隠したと思うし。ちょっとやってみようか?」 剣を一本カナテに渡すと、イーリャは右腕の袖をたくし上げ、左手で押さえた。剣を持った白い右手を横に伸ばす。「いくよ」と言って、剣を回転させる。 #twnovels

2017-03-03 14:10:17
夢乃 @iamdreamers

と、二人の見つめる視界から、剣が消えた。 「おお、凄い。本当に消えたように見える」 そう言いながら、カナテは後ろに回ってきた。 「なるほどねぇ。剣を逆手に持って腕の後ろに隠してるだけか」 「ずっとこのままでなくても、これくらいなら前からは見えないし」 #twnovels

2017-03-03 14:10:55
夢乃 @iamdreamers

少し後ろに角度をとってみせるイーリャ。 「あとは舞の動きに紛れ込ませてセクスリーとの角度とか考えながら、適当に誤魔化しただけ」 クルリと剣を回して腕を下ろす。袖が白い腕を隠した。 「はぁ。その“適当な動き”に騙されてたわけか」 肩を落としてみせるセクスリー。 #twnovels

2017-03-03 14:11:24
夢乃 @iamdreamers

けれど、それほど気落ちしているようには見えない。 「でも、そう簡単にできるもんじゃないよな。相手との位置関係とか距離とか、余程的確に捉えていないと。・・・ん? さっき『成功』とか言ってたよな。もしかして、これ使ったのよ初めてか?」 #twnovels

2017-03-03 14:11:46
夢乃 @iamdreamers

「うん。舞踏じゃ使い途ないし」 こともなげに言うイーリャ。 「って言うより、さっき舞いながら考えたんだけど。セクスリーの実力は知ってるつもりだから、勝つなら奇襲しかないなぁ、と思ってたから。最初の攻撃は上手く躱されちゃったし」 #twnovels

2017-03-03 14:12:10
夢乃 @iamdreamers

「闘いながら考えたのかよ。ますます敵わないな。俺もまだまだ精進が必要だな」 「その場であれを考えて、しかも実践しちゃうなんて、私じゃ考えられないなぁ。う〜〜、才能の差を感じるっ」 カナテも唸る。 「そんなことないって。今のはたまたま巧くいっただけ」 #twnovels

2017-03-03 14:12:39
夢乃 @iamdreamers

謙遜してみせるものの、二人から褒められて満更でもなさそうなイーリャ。 「ところでさ」セクスリーが落とされた剣を拾いながら話題を変えた。「お前、今日で十六だろう? 大長老様に呼ばれているんじゃないのか?」 「え? イーリャ今日お誕生日? おめでとうっ」 #twnovels

2017-03-03 14:13:04
夢乃 @iamdreamers

イーリャが返事をするより先に、カナテが今知った事実に反応した。 「うん、ありがとう。でもよく知ってるね、あたしの誕生日。街の皆も知ってたし。それにセクスリー、大長老様に呼ばれてることまで知ってるの?」 礼を言いつつも首を傾げるイーリャ。 #twnovels

2017-03-03 14:13:24
夢乃 @iamdreamers

「なんだ、お前知らないのか。・・・いや、十六になったのが今日なら知らなくても当然か」 「知らないって、何を?」 「ん? う〜ん、大長老様が話してくれるさ。直接聞いてこいよ」 「? うん。解った。そうする」 「ねぇ、イーリャの誕生日に何かあるの?」 #twnovels

2017-03-03 14:13:47
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