忘却の天井 第一部 ~塔を目指して~

《小説家になろう》に移転します。 移転先 https://ncode.syosetu.com/n2242gf/ 移転のお知らせ:https://togetter.com/li/1436897 続きを読む
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まとめ 忘却の天井 プロローグ ~残された地上にて~ 《小説家になろう》に移転します。 移転先 https://ncode.syosetu.com/n2242gf/ 移転のお知らせ:https://togetter.com/li/1436897 ---- 昔、地上はヒトで溢れていた。 1864 pv 14

 
 

出発

夢乃 @iamdreamers

ガラガラガラ・・・ 暗闇の中、ガレージのシャッターが上がってゆく。腰の辺りまで上がったところで一度止まると、それから一気にすべて開いた。中には、様子が微かに判る程度の小さな灯りが一つ。次の瞬間、四つの強烈な照明が外を照らした。 #twnovels

2016-04-29 13:03:49
夢乃 @iamdreamers

中からゆっくりと出てくる変わった形の自動車。ガレージから出ると、五メートルほどを進んで停止した。ガレージに隅に立っていたカイムは外に出ると、シャッターを閉じる。それから、用意しておいたプレートを入口の扉にかけた。 #twnovels

2016-04-29 13:05:07
夢乃 @iamdreamers

「修理工場は都合により閉鎖します。  電気製品の修理は街の反対側の  もう一つの修理工場へ」 #twnovels

2016-04-29 13:05:25
夢乃 @iamdreamers

それが済むと、アリューが顔を出している自動車まで歩き、空いている右側の座席に身体を納めた。グラスメタルのキャノピーが閉まる。 「さあ、出発ね。私が運転していい?」 アリューが隣の座席から聞いてきた。 「いや、最初は俺が運転するよ」 #twnovels

2016-04-29 13:05:50
夢乃 @iamdreamers

カイムは四点式のシートベルトを締めると、自分の席のハンドルを握った。 「そう? それじゃ、私がナビゲートするね」 アリューは左座席のハンドルを跳ね上げると、ホロパッドを手に取った。ダッシュボードから電源・通信用のケーブルを引き出して接続する。 #twnovels

2016-04-29 13:06:10
夢乃 @iamdreamers

ホロパッドにタッチすると、周辺の地形図が浮かび上がる。連動して、運転席中央のダッシュボード上にも同じホロ映像が浮かび、カイムからも確認できた。 「それじゃ、行くか。目的地は?」 「とりあえず、この間言った電力受電所ね」 #twnovels

2016-04-29 13:06:27
夢乃 @iamdreamers

カイムはハンドルを握る手に力を込めると、アクセルを慎重に踏み込んだ。自動車がゆっくりと走り出し、徐々に速度を上げてゆく。バックミラーに写る家々が小さくなってゆく。 (半年か。しばらくお別れだな) 遠くなる街を見ながら、カイムは思った。 #twnovels

2016-04-29 13:06:47
夢乃 @iamdreamers

「カイム」 バックミラーから前方へと視線を戻したカイムにアリューが声をかけてきた。 「ん?」 「お家の人たちには言ってきたの?」 「言ってない。言ったら反対されるのは判ってるから。手紙は置いてきたけど」 「それでいいの?」 #twnovels

2016-04-30 14:04:21
夢乃 @iamdreamers

心配するような目を向けるアリューを横目に見て、カイムは顔に笑みを浮かべた。 「俺が決めたことだ。アリューが気にすることじゃないよ」 「カイム・・・ごめん」 「何を謝ってるのさ。気にすることじゃないって言ったばかりだろ?」 #twnovels

2016-04-30 14:05:29
夢乃 @iamdreamers

「でも・・・いつ帰れるか判らないのよ?」 「うまくいけば半年なんだろ? だったら、二人でうまくやっちまえばいいじゃないか。アリューと俺がいれば、半年もかからないかもな」 「・・・そんなわけにはいかないのよ・・・」 アリューの声が小さくなった。 #twnovels

2016-04-30 14:05:57
夢乃 @iamdreamers

「だけど、半年もかかるかな? その電力受電所って、ここから200キロくらいなんだろ? 道の状況が悪くても、明日か明後日には着くんじゃないか? それからそこを動かすのに半年もかかるかな?」 「カイム、そうじゃないよ・・・」 #twnovels

2016-04-30 14:06:23
夢乃 @iamdreamers

「そうじゃないって、何が?」 「・・・なんで電力『受電所』って呼ばれてたのか、知ってる? 送電所でも発電所でもなくて」 「さあ・・・知らないな。って言うより、これまで考えたこともなかった」 #twnovels

2016-04-30 14:06:59
夢乃 @iamdreamers

「そうだよね・・・私だってお祖父ちゃんから聞いてなければ知らなかったし」 「それで、何で受電所って呼ばれてたんだ?」 「うん」 アリューは手にしたホロパッドに手を滑らせた。地形図が消えて別の画像が表れる。CG表示されたそれを、カイムも目の隅に捉えた。 #twnovels

2016-04-30 14:07:22
夢乃 @iamdreamers

「それは?」 「これから行く電力受電所。そしてこれが」 アリューの操作で画面がスライドする。遥か南へと。そして表れる巨大な建造物。そこから縮小していく画像。地球の全貌。先ほどの建造物はずっと上空まで続いている。そして突然表示されている地球を覆う壁。 #twnovels

2016-04-30 14:07:43
夢乃 @iamdreamers

「天井・・・か」 「うん」 角度が変わり、地球と、その遥か上空に巻かれるように浮かぶ天井を俯瞰する表示になる。 「頭では知っていたけど、こんなCGで見るのは初めてかもな。でも、それが受電所とどう関係するんだ?」 #twnovels

2016-04-30 14:08:04
夢乃 @iamdreamers

「受電所はね、天井で発電した電力を地上で受信するための設備なの。受電所には発電する機能なんてない。ただ、送られてくる電力を受信するだけ。だから発電所じゃなくて受電所」 「ちょっと待てよ」 カイムは思わず、ブレーキを踏んだ。 #twnovels

2016-04-30 14:08:23
夢乃 @iamdreamers

「それじゃ、電力受電所を復活させるって」 「うん。今は停まっている天井からの送電を再開させるっていうこと」 アリューがホロパッドの画面にタッチすると、天井から橙色の線が地上へと伸びる。何本も。何本も。そして地上にもその線は伸びてゆき、地上が明るく輝く。 #twnovels

2016-04-30 14:08:44
夢乃 @iamdreamers

「それじゃ、今、なんで受電所に向かう必要があるんだ? 天井じゃなく」 「天井から送電が再開されても、受電所が壊れていたら意味がないから。だから、天井に昇る前にきちんと受電できそうかどうか、確認しておこうと思って」 「そういうことか・・・」 #twnovels

2016-04-30 14:09:10
夢乃 @iamdreamers

「・・・今ならまだ、街に帰れるよ?」 カイムは動きを止めた。けれど、それは十数秒に過ぎなかった。 「いや、行くさ。受電所が動けば、今より暮らしが遥かに楽になるには違いないんだ。いや、今からいく受電所が動かなくたって、別のどこかの受電所が動けばそれでもいいんだ」 #twnovels

2016-04-30 14:09:35
夢乃 @iamdreamers

そう、自分に言い聞かせるように言うと、カイムはハンドルを握りなおしアクセルを踏み込んだ。停まっていた自動車は再び目的地に向けて進みだした。 「・・・ありがとう」 アリューが言った。 「気にするな、俺が決めたことだ」 カイムはアリューに笑みで答えた。 #twnovels

2016-04-30 14:09:54

夢乃 @iamdreamers

街を出て暫くは順調に進んでいたが、街から離れるに従って道路状態が悪くなってゆき、時には大きく迂回しなければならないような場所もあった。 「方角はだいたい、合っているよな?」 ヘッドライトに照らされる狭い範囲に目を凝らしながら、カイムは隣のアリューに聞いた。 #twnovels

2016-05-15 16:28:00
夢乃 @iamdreamers

「うん、多分。車のセンサーが狂ってなければ」 アリューも暗い外にも目を向けつつ、ホロパッドに表示した地図に引かれてゆくフリーハンドで描かれたような線を追いながら答えた。 「近くの街とかプルトニウム鉱山に行く道ならもうちょっと整備されてるんだけどね」 #twnovels

2016-05-15 16:28:24
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