ライフサイクル(異時点間最適化)と横断性条件 (KF氏との対話)

二つのキーワードから、財政学者の破綻ロジック、及びクルーグマンの議論前提を考える。
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望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 まず、少子高齢化(人口減少)で成長率が下がると、異時点間最適化の過程で均衡金利が低下する。 これは消費の限界効用逓減が前提にある。経済成長すると、その分消費が増えるので、限界的な(=追加の)消費の効用は相対的に小さくなる。 大ざっぱに言えば、未来の消費効用<現在の消費効用になる。

2017-04-03 07:22:56
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 経済成長率が高まると、その分だけ未来の消費効用は下がるので、人々は将来消費(=貯蓄)を減らして、現在消費を増やそうとする。(将来の昇給が明らかなら、気軽にローン購入をする、というのと似たような話と思ってほしい) その結果、十分に高い金利でないと貯蓄の魅力が出ないことになる。

2017-04-03 07:25:22
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 こうして、均衡金利は経済成長率に引っ張られることになる。(自然金利≒潜在成長率という理論上ないし分析上の仮定は、こうした論構造で得られる) ここまでの話は、裏を返せば、経済成長率が下がれば均衡金利が下がることを示唆する。(定年を意識すると、老後貯蓄に勤しむようになる、みたいな話)

2017-04-03 07:27:14
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 日本のような人口減少社会では、自然に(均衡)金利が低下するということになる。実際、国債等の金利は極めて低くなっている。 ところが、こうした異時点間最適化(ライフサイクル)の枠組みでは、横断性条件という、ある種底とも天井ともいえる条件が追加で課されている。

2017-04-03 07:29:23
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 横断性条件は、「債務の現在価値がゼロへ収束する」という条件だが、むしろ「経済主体は、余計な貯蓄を残さない」と理解した方が分かりやすい。 債務の裏は債権であり、債権が貯蓄手段である、というのが前提。 貯蓄の現在価値がゼロに収束しないなら、無限遠点で余計な貯蓄をするということになる。

2017-04-03 07:34:49
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 では貯蓄の現在価値はどう計算するか、ということになるのだが、これは金利で割り引く。というのは、金利は現在消費と将来消費のバランスを表しており、金利が高いということは、現在消費の価値を高く、将来消費の価値を低く見積もっている、ということになる。(金利が低い場合は、価値の差が小さい)

2017-04-03 07:37:12
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 仮に将来消費(=貯蓄)が5%増えたとしても、金利が5%なら、将来消費の割引価値に変化はないことになる。 逆に、金利が低いのに将来消費の伸びが高い場合は、余計に将来消費が伸びている、ということになる。横断性条件的には、これはあり得ない(ということにされている)わけだ。

2017-04-03 07:40:32
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 将来消費≡貯蓄=債務がこのままの増加率を保ち、かつ横断性条件が満たされるには、物価水準の上昇によって債務の実質価値が減少するという経路しかない。 これに対し、政府が実質購入の規模を維持しようと対応的に政府支出を増やそうとすると、相乗的にハイパーインフレになっていくことになる。

2017-04-03 07:55:48
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 まとめると 人口減少によって成長率が下がり、均衡金利が下がっている(異時点間最適化) →金利が下がっているのに、国債の伸びが大きすぎるので、このままだとひどいインフレになる(横断性条件) この意味で、ライフサイクルと横断性条件は完全に分離できる(分離していい)議論ではない。

2017-04-03 07:56:35
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 ちなみに、クルーグマンは、異時点間最適化を利用してインフレ調整論を説いたのだが、その概説もしておこう。 クルーグマンの議論前提は、人口減少等によって、将来の(平均)期待成長率が著しく低下しており、それに従って均衡金利がマイナスにまで下がっている、というものである。

2017-04-03 08:00:13
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 金利にゼロ下限があるのに、均衡金利がマイナスなら、経済はどうバランスするのか?というと、クルーグマンは「インフレが起こり、実質金利が低下することによってバランスする」と回答する。 そして完全に価格伸縮的な経済では、「将来にインフレを起こすために、現在にデフレが起こる」のである。

2017-04-03 08:02:37
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 もう少し順を追って表現すると 将来成長の低下→将来消費(≡貯蓄)の相対価値上昇、及び増加→金利低下はゼロで底を打つが、代償的にマネーへの需要が大きくなり、物価水準が下がる→「将来に向けて十分なインフレが起こる分」だけ、現在の物価水準が低下する→将来に向けては応分のインフレが起こる

2017-04-03 08:06:01
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 ただし、価格硬直経済になると、『「将来に向けて十分なインフレが起こる分」だけ、現在の物価水準が低下する』ということがスムーズには実現しない。 実際の経済で起こるのは、そうした物価低下圧力による不況(生産低下)ということになる。

2017-04-03 08:07:34
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 クルーグマンは、そうした不況を回避するために、中央政府が将来のマネーを十分に多く供給することを保証すれば良いと説いた。 そうすると、現在にデフレが起きなくても、将来に十分なインフレが起きることになり、経済は(完全雇用)バランスを取り戻すことになる。(そうしなければ均衡しない)

2017-04-03 08:09:31
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 思えば、クルーグマンと主流派の違いは、現在の消費と貯蓄のバランスが最適均衡であると仮定するか否かにあるかもしれない。 主流派は、現状が最適均衡であると仮定し、単純に債務伸び率と金利を比較するので、財政が破綻的状況である(ハイパーインフレが起きうる)と診断する。

2017-04-03 08:15:49
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 しかしクルーグマンは、最適均衡を逸脱しており、もっと経済主体は貯蓄を増やしたがっている(のにそれが出来ない)と診断する。 だから、仮に現在の債務伸び率が金利より異常に高いとは言っても、債務がそもそも最適水準(求められている貯蓄)より小さすぎるのだから、過剰であったりはしない。

2017-04-03 08:18:17
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 横断性条件で考慮すべきなのは、「最適水準からの」債務の伸び率なのであって、経済全体の貯蓄需要が消化不良であり、必要な債務が不足している(最適水準より債務が少なすぎる)限り、実測の伸び率がどんなに高くても、それがインフレによる(横断性条件的)収束を必要とするとは限らない。

2017-04-03 08:20:49
API @API0612

@motidukinoyoru 其の条件だと定年退職を75歳にしてもインフレになってしまいますね。 ライフサイクル仮説は、貨幣保有を残さない引退世代が現役世代より多くなければ意味を持たないですね。 望月さんも解ってると思いますが、FTPLは横断性条件の誤用例であって、非現実的です

2017-04-03 08:32:22
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 定年退職を75歳にすると、(潜在)成長率の低下がマイルドになるので、金利低下もマイルドになり、債務増加の許容度が多少上がる、ということは言えると思われる。

2017-04-03 08:39:00
API @API0612

@motidukinoyoru ライフサイクルがどうであれ、主流派の人達は国債が増加し続けると、実質債務水準を減少させるため民間部門がインフレを起こすと、FTPL的に考えてるという事で良いですかね。

2017-04-03 09:13:56
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 イメージとしては 経済成長率が下がると、最適貯蓄水準は上がるが、"最適水準下の"貯蓄増加率は減少する。 逆に経済成長率が上がると、最適貯蓄水準は下がるが、最適水準下の貯蓄増加率は増加する。 といった具合。

2017-04-03 22:31:25
API @API0612

@motidukinoyoru ふと思ったのだが、主流派は生産所得が低下すると消費性向が上昇し、貯蓄が減ると言ってるので、経済成長率が下がるとインフレになるという、かなり不思議な事言ってるなぁと思いました。

2017-04-04 10:46:29
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

@KF0612 成長率低下→金利低下→貯蓄増加率低下というのは、一応論理だけは妥当なのだが、この論理をプレーンに適応する場合は、「現状が最適均衡である」という前提が必須。 だから主流派経済学は、今がいかに非不況であるか、完全雇用であるかを強調したがるわけです。

2017-04-04 11:48:02
API @API0612

@motidukinoyoru 話を元に戻すと、ライフサイクル仮説は望月さんの説明に添う物になってるのは解りますが、FTPLはインフレになることを正当化するためだけに横断性条件を持ち出して、会計的に成立する事を論じてるだけで、産出を所与としたマクロ経済学の枠組は無いと思いますね。

2017-04-04 17:56:36
API @API0612

@motidukinoyoru 財政学者がFTPLではなく、ライフサイクル仮説を持ち出すのは、主流派マクロ経済学に添った話になってるからで、FTPLで仮定されてる横断性条件だけでインフレを論じるのは無理ではないでしょうか。

2017-04-04 18:00:03