4/25~4/27 反英雄レオンハルトとの邂逅戦

#GC異聞絶望 イベントにて、邂逅の紋章3つを使用した、皇帝邪紋レオンハルトとの邂逅戦
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万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 剣は砕けず、爪も欠けることはない。人間の膂力を超えた打ち合いで激しい火花が散った。 二つの黒刃が舞う。 何度か刃を重ね合わせ、不意にルゥインの眼前の男が消える。 脇腹に鋭く走る痛み。 斬られた――そう認識するより早く、背後でレオンハルトが剣を降り下ろさんとする。 →

2017-04-25 14:12:32
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 動きがあまりに速すぎる。 当たり前だ。『レオン』はあの重装鎧を纏ってあの速度だったのだ。今彼が纏うのは布と革で出来た軽装。 高速戦闘で彼に勝てる者は居ない。 「防いでみせろ!龍モドキ!」 頭上より龍を両断せしめん一閃が降り下ろされる――!

2017-04-25 14:15:55
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 爪が阻まれる――分かっていた。 押し返される――分かっていた。 以前見た金ではなく黒の剣。それを受ける度に腕と、体内の異物が反応する。痺れる。震える。弾ける。 出力を上げる。膨れ上がる異物の力を迸らせれば、左の肘の爪も黒く染まった。 「……っつ」 斬られた。否、それよりも。→

2017-04-25 14:33:53
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 視界から姿を見失って、しかしあまりに強大な混沌ゆえに感覚でなら少しは位置を捉えられる。 後ろだ。上だ。背後から青年の声――聞き取る前に左腕が後方へと半弧を描き、その勢いで翼の重さに引かれるように身体が回転した。黒の剣もレオンハルトの姿も、まだ見えていない。尾が大きく空気を薙ぐ。→

2017-04-25 14:38:22
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 黒の軌道のみに集中させる。 避けるにはその刃は迅すぎた。左の白爪、白鱗をその軌道の途中に間に合わせる――右の黒刃を、中段で薙ぎながら。 黒剣に撃たれた鱗が割られる。腕を抉る。この感覚を知っている。 「……まだだっ!」 赤の邪紋が光を放つと、衝撃に割られ続ける鱗が下から再生された。

2017-04-25 14:45:34
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 混沌が膨れ上がる気配がする。 知っている。この感覚はよく知っている。 知り過ぎるほどに。 ルゥインの邪紋が赤く光った。鱗が高速で再生する。無限に湧いて出るかのような混沌が強引に彼の肉体を癒していく。 「……!」 知っている。 この迸る黒い泥沼を知っている。 →

2017-04-25 21:31:50
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 知っているとも。何せ、これは――。 この、無限に湧き続けるような無尽蔵の力の源、魂すら穢すような黒い光、侵食する混沌は。 ・・・・・ 俺のものだ。 「……ふ、」 再生し続ける鱗は剣戟をついに押し留めた。レオンハルトの一撃は龍神を傷つけずに至らない。 素早く距離を取った。 →

2017-04-25 21:32:18
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 嗚呼。 ああ! 笑いを、堪え切れない。 「ふ、は、ぅ、あは、あっはははははははははは……!!!」 戦闘の最中にも関わらず、男は破願大笑する。紅蓮の炎がその横顔をほの赤く照らし、狂気の只中にあってもなお青年を浮き立たせた。 →

2017-04-25 21:32:54
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「そうか、そうか!お前の違和感の原因はこれか!」 歌うように青年が叫ぶ。 最初からおかしいと思っていた。 彼が変質した理由。水を司る龍が火を吐くようになった理由。純白の鱗が徐々に黒く染まり始めた理由。 何ということはない。 原因は自分だった。 →

2017-04-25 21:33:23
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 黒き剣を、己の混沌のみで形造られた凶器を突き付け、そう問う。  ・・・・・・ 「その速度なら『魔境』からじゃねぇな。俺から直接か……最初の戦闘の時だな?」 ふと、水に流されていった少女の静かな声が脳裏を過る。 『いつか貴方を理解してくれる人が現れるはず』 →

2017-04-25 21:34:27
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 嗚呼、慧眼だった。彼女の他の言葉は軒並み的外れも良いところだったが、この言葉だけはまるで予言のように事実となった。 まさか、まさか本当に現れるとは。 この忌まわしき混沌を共有する者が現れるなど!

2017-04-25 21:34:41
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 容赦なく、しかし少し弄んでいたような黒剣が、止まった。 「レオン……ハルト?」 修復を続けていた左腕に黒の靄が吸い込まれ、消える。警戒を止めることはなく邪紋はまだ光を帯び続けるが、青年の様子の豹変にを見て半竜の戦意は霧散し思考が硬直した。 →

2017-04-26 14:37:19
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 狂ったように笑う黒の青年を茫然と見ている。 一面炎に包まれた廃村の中に、狂気の炎が上がっている。 「そうか」 響く叫び声の中、半竜もまた正気でなどない――これまで薄らと予想していたとはいえ、改めて突き付けられた解答。 それを聞いてなお正常でいられる者が、どこに在ろうか。 →

2017-04-26 14:37:52
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 「やはり、あなたの混沌であったか」 忘れもしない、仕えていた王を殺され、その領を破壊され、ただ一方的に打ち負かされたあの日。 金の青年の頬に渦巻いていた混沌の図を。 それが現れた夜の衝戟はしばらく半竜の呼吸を止めた。 服に隠れた左胸の十字の傷の傍、おなじもの片鱗が現れている。 →

2017-04-26 14:42:21
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 剣が突き付けられる。炎を映す目を閉じる。 「どうやら、そのようだ」 私に流れる竜の血は、それに宿る竜神の欠片は、あの日までは間違いなく私の時間を止めていたというのに。 汚し、侵してゆくものの正体を認めてしまうことが怖かった。 →

2017-04-26 14:42:34
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 己が己でなくなる恐怖、耐えられなくなったときに何が起こるのか分かってしまう、恐怖。 「私の意思ではなく、あなたの意思でもなく――レオンハルト。あなたはこれに耐えてきたのだな」 己より年若い青年は、どれだけ長い時間だろう、それでも己を保ち続けているのだと。 →

2017-04-26 14:43:15
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 旅の途中、何度も「皇帝邪紋」の噂を聞いた。 青年が何故それに至ろうとしているのか、その目的が何であるのか。同じ虫を身中に宿した半竜には理解できてしまった。 「……似ている」 静かに呟き、突き付けられていた剣を左手の爪でそっと押しのける。

2017-04-26 14:44:01
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「――11年」 静かに青年が口を開く。 爪に押しのけられた剣が男の指先から滑り落ちた。からん、と固い音を立てて地面に混沌の塊が突き刺さる。 「11年だ。俺がその混沌を取り込み、邪紋使いになったのは7歳の時。それから11年――ずっと俺の魂はこの混沌と共にある」 →

2017-04-26 16:19:57
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 掴む物のなくなった腕を下ろす。 三年前、ルゥインが見た時よりも邪紋が拡がっていた。今や手の甲まで侵食した黒い渦が、彼の苛烈な運命を表していた。 「似ている、だと?」 くす、くす、くす。 喉の奥でレオンハルトが嗤う。凪いだ水面に波紋を落とすような静かな狂気を孕んだ声が嗤った。 →

2017-04-26 16:20:18
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 「この程度で俺を理解した気になるなよ、半端者」 ルゥインの視界が不意に暗くなった。顔面を男の掌が掴んでいる。骨が軋む音がする。獅子の豪腕が唸り、半龍を素手で投げ飛ばした。 燃え盛る家屋の壁に男が叩きつけられる。 →

2017-04-26 16:20:54
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 燃焼に強い土壁は辛うじて崩壊を防いだが……瞬く間に火が回り、ルゥインの服を焼き焦がした。破れかぶれになった衣服の隙間から龍を象った邪紋が覗く。 胸元の十字傷が覗く。 傷の僅か下に黒く、変じた渦の紋様。 侵食された証があった。 「お前に俺の何が分かる?」 耳元で囁く声がする。→

2017-04-26 16:21:34
万象の虹/レオンハルト@異聞反英雄邪紋 @Leon_granart

@gc_luyin 腹部に熱い痛みが走る。 甘く、声が囁く。その声色一つですら、息少しですら、レオンハルトは混沌の気配を纏っていることに気づくだろう。 「そんな小指の先ほどの混沌程度で、気が狂いそうになっているお前に……」 レオンハルトの右手が、ルゥインの腹を刺し貫いていた。

2017-04-26 16:23:05
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart 異物が青年の声に反応して暴れている。 笑い声が鱗を逆撫でする。 そうだ、私は半端者だ――人でもなく、竜でもなく、この青年の苦しみを識ることも、できやしない。 彼の言葉は正しい。一点の誤りもない。以前殺されかけたときも、三年の時が経った今でさえも。→

2017-04-26 17:03:00
ルゥイン(跡地) @gc_luyin

@Leon_granart だが、半端者には半端者なりの矜持がある。 望まぬ異物を内包した己には、己なりの葛藤がある。 「己だけと、甘えるなよ」 分からせるつもりもないくせになぁ。笑う声に静かに返せば、次の一瞬のこと。 →

2017-04-26 17:03:09