軍用自動車補助法の歴史解説

戦前の軍用自動車補助法が国産自動車メーカー(トヨタ、日産)に与えた影響は大きく。 戦後の自動車メーカの ・技術の日産 ・ジャストインタイムのトヨタ 続きを読む
11
Bunzo @Kominebunzo

九四式六輪自動貨車がどうして六輪なのか、との話に戻ると調べる人はすぐ軍用自動車補助法にたどり着けるのでこの改正に注目する訳だけれども、昭和5年から始まる改正の動きは結果に過ぎないので、その改正を方向づける陸軍整備局の方針転換を見ないと全体を見渡せない。ということで実は結構難しい。 pic.twitter.com/T0PitXkwYU

2017-05-08 06:00:27
拡大
Bunzo @Kominebunzo

軍用自動車補助法は徴用を前提とした自動車の製造購入維持に補助金を出す制度。海軍の優秀船建造への助成金に似たもので、この法律が指定する自動車が軍用保護自動車。これが六輪を奨励するようになるのだけれども、四輪を否定した訳ではなくて最後まで四輪は残る。外れたのは小型トラック類だった。

2017-05-08 06:05:04
Bunzo @Kominebunzo

軍用自動車補助法改正関係の文書をアジ歴で探してもそこに「なぜ?」に答える内容はなかなか見つからない。六輪は四輪とコストで差が無いとか、四輪は六輪に改造できるようにする、といったどちらかと言えば川下の話ばかりが引っ掛かる。話が六輪前提になっているところから始まってしまう。

2017-05-08 06:08:33
Bunzo @Kominebunzo

もう一つ、そもそも軍用自動車補助法による軍用保護自動車はいったい年度に何台指定されたのか、という話も見過ごしがちで、これはたったの200台。経営難にあえぐ国産自動車製造各社にとっては干天の慈雨だけれどもあまりにも少ない。しかもこれが段々と増えて・・と思ったら減っちゃうのだ。

2017-05-08 06:11:25
Bunzo @Kominebunzo

こうやって九四式六輪に至るプロセスをたどって行くと軍事史、兵器史からどんどん離れてしまうのだけれども、軍備の近代化は自動車と航空の二本柱なのは日本でも全く変わらないので避けて通れない。そんな話の一部を6日発売の歴群の特集記事でやっています。こんな話が載る商業誌なんて他には無いヨ。

2017-05-08 06:27:11
Bunzo @Kominebunzo

輸送船や空母による飛行機輸送の直接の促進要素は空輸要員の不足。開戦時、陸軍はこれで悩み、海軍もまた苦しみ始める。空輸中の消耗は問題だったけれども、この問題があるので空輸は最後まで続けられる。

2017-05-08 07:42:49
Bunzo @Kominebunzo

東京市内一律一円の料金で「円タク」の名で知られる統一料金タクシーは何となく戦前に一般的だったような印象があるけれども、大正末から昭和三年頃までの短期間に流行ったもの。その後はメーター利用で初乗り料金は半額程度で走り始めた。米国車だけでなくルノー、シトロエンも多数あった時代。

2017-05-08 16:29:04
Bunzo @Kominebunzo

なぜ円タクの話をしたかと言えば、昭和初期の小型車市場は価格、性能で国産車は輸入車に全く太刀打ち出来ず、日本の自動車工業は産声を上げたもののそのまま発育不良で死にかけていた、という話。国内に自動車市場は存在したけれども輸入車に喰われて国内メーカーは全く振るわなかった。

2017-05-08 16:37:43
Bunzo @Kominebunzo

タクシーなど民間の自動車需要は小型車だけれども軍用なら大きな方が良い。米国車との競合が緩いと考えられた分野で僅かな台数でも助成金を出せば国内メーカーも立ち上がるのではないか、との見通しで始まったのが軍用自動車補助法。国産自動車を搭載量の大きなものへと何とか誘導したかった。

2017-05-08 17:47:37
Bunzo @Kominebunzo

軍用自動車補助法が政策として小ぶりなものなので見過ごしがちだけれども、自動車工業の育成は航空工業の育成と両輪で、よく発達した自動車工業は戦時に民需を切ることで航空工業に転換出来るとの発想が最初からあるのが面白いところ。着火に失敗したバーベキューみたいな現実の裏にそれがある。

2017-05-08 19:06:23
Bunzo @Kominebunzo

ディーゼルエンジンの採用も、戦車ではどうした、こうした、との理由ではなく、国策としての資源政策があってのこと。船舶へのディーゼル導入と戦車のディーゼル転換は同じ政策の産物。総力戦構想下で石油需要の半分を輸入に頼らずに何とかすべく悩んだ末の結論だった。だから、空冷でも水冷でもいい。

2017-05-08 21:00:10
Bunzo @Kominebunzo

軍用自動車補助法は青息吐息の自動車工業を多少は助けたものの、目的の国産自動車工業育成には貢献出来なかった。自動車市場は小型車を無視出来るような状況ではなく、大型車への誘導も進まない。もっと暴力的な政策で保護しなければ国産自動車工業は成長の兆しさえ見せなかったのが現実。

2017-05-08 21:22:46
Bunzo @Kominebunzo

昭和11年の自動車製造事業法の成立は事実上、外資の完全排除を狙ったもの。ここまでやって初めて国産自動車は市場を獲得できた。日本からの外資撤退は14年までかかるけれども、もし、この法律が無かったら米自動車産業は日本市場を失わず日米開戦は避けられたかとさえ考えてしまう厳しい内容。

2017-05-08 21:44:02
Bunzo @Kominebunzo

フォード、GMを撤退に追い込んだ自動車製造事業法を日本の自動車工業界は棚ぼた的に喜んだかといえばそれ程単純ではなくて、このような法律が永久に続く訳が無く、やがて外資の再上陸があると予想される。許された余裕で何をするか?民需を取り込んだトヨタ、日産はそれを考えるようになる。

2017-05-08 21:52:28
Bunzo @Kominebunzo

フォード、GMの日本工場を閉鎖に追い込んで出現した市場に国産自動車がすぐに進出できた訳ではなくて、各社とも売れる市場があっても造る能力が無かった。月産千台という製造事業法の指定業者になるにはあのトヨタでさえ相当思い切った借入金による設備投資が必要になる。果してその借金を返せるか?

2017-05-09 04:02:26
Bunzo @Kominebunzo

撤退した外資の穴を埋める形でトヨタ、日産の2社による寡占化が進む中でトヨタの取った態度は「値上げ」。高価でも品質不良でも競合が無いので文句は来ないと豊田喜一郎自らが口にして日産にも値上げを誘う。ここで体力と技術を向上させないと「外資が戻って来たら」また負けるとの危機感がある。

2017-05-09 04:09:45
Bunzo @Kominebunzo

自動車製造事業法下での経営方針はトヨタと日産では対照的で、日産が関係部品の内製化を進めたのに対してトヨタは下請け工場の系列化、組織化を進める。大量需要に対応して柔軟な経営を行おうとする発想があったからこそ昭和13年という「その時期」に「ジャストインタイム!」と掛け声をかけられた。

2017-05-09 04:16:56
Bunzo @Kominebunzo

昭和13年の豊田喜一郎の「ジャストインタイム」は今とはどこか意味が違うのではないか、と何となく思ってしまうのは戦前の自動車工業が置かれた状況に目が届かないため。中京地区に広がる系列企業群の原型がこの時既に造られつつあり、今に繋がる合理的な生産方式が具体的に存在したからこその言葉。

2017-05-09 04:24:19
Bunzo @Kominebunzo

日産の内製化促進策も当時の日本では十分に理由のあるもので品質で「やがて帰ってくる外資」と対抗するなら最も近道かもしれなかった。その優劣が現れるのはずっと先だったにせよ、戦時の自動車市場はトヨタと日産で分割される。陸軍御用達の「いすゞ」は、言ってみればガンダムみたいなもの。

2017-05-09 04:41:41
Bunzo @Kominebunzo

「そこまで立派にやってたなら、何故戦時中の自動車生産はあんな数でこんな品質不良なの?」との疑問はもっともだ。 事業法が昭和11年、「ジャスト・・」が昭和13年、外資完全排除が昭和14年、トヨタ日産の「値上げ」が昭和15年、で、戦争が始まってしまう。ひと言で言えば、遅過ぎた。

2017-05-09 04:51:27
Bunzo @Kominebunzo

戦後高度成長期のコロナ対ブルーバード、カローラ対サニーの販売合戦の勝敗も、「かんばん方式」も「技術の日産」もその場で突如現れた物事ではなくて、その源流を辿れば戦前戦中の自動車工業再編に行き着いてしまう。けれども日本の自動車史はそこに踏み込みたがらない。何となく「暗い」からだろう。

2017-05-09 05:03:56
Bunzo @Kominebunzo

実はトヨタの話は三式戦に関係がある。戦時中にトヨタ本社工場に隣接して設けられた新工場は三式戦二型用のハ140の量産工場だから。川崎との合弁会社として東海飛行機を名乗ったのはライセンス問題から。これも「トヨタならやれる」との見通しがあってのこと。

2017-05-09 06:13:56
Bunzo @Kominebunzo

昔、「日本のシャドーインダストリー」として東海飛行機の事例を紹介したときに「それはギャグか」との感想を貰ったけれども無理もない話。自動車工業と航空工業の育成政策を辿らないまま実らなかった理想だけを聞いても多分、まともにはリアリティが持てない。

2017-05-09 06:20:01
Bunzo @Kominebunzo

自動車の運転については根本的な部分で視野狭窄に陥っていると感じる。 ちゃんと自動車長を置き、運転に責任を持てば良いのだ。 「前進21.ノット」「21.ノットぉぉぉ!」 「取り舵、巻き込み注意」「取ぉぉりぃ舵ぃぃ巻ぁぁき込みr注意ぃぃ」 「ブレーキ全力」「ブレーキぃぃ全力ぅぅぅ」

2017-05-09 21:15:04
Bunzo @Kominebunzo

自動車製造事業法下で下請け工場を系列化して大量生産体制を作り上げたのがトヨタなら、内製化を進めたのが日産。でも製造した「国産自動車」とは両社ともにシボレーのコピー車。製品のスペックには大した差がない。

2017-05-11 09:41:06