大事なのは「正解」のその向こう

学会誌の編集会議で、大学の先生方と話したのは「学生は先生が正解を知っていて、それを習い覚える」のがお勉強だと思っている、という話になった。でも、大切なのはその次のことなのだ。
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shinshinohara @ShinShinohara

今日は学会誌の編集会議で東京。そもそも、学生が読みたい内容になっているか?という指摘が。専門分化しすぎで、学生からしたら重箱の隅をつついた研究に見えて興味が持てないのでは、と。そうだろうなあ。そして私自身、4年生になって研究室に所属するまで、研究に興味はなかったなあ。

2017-07-01 20:57:46
shinshinohara @ShinShinohara

学生は大学3年生になってもなお、「先生は正解を知っている」と思い込んでいる。そしてその「正解」を一つでもたくさん憶えるのが勉強だと思ってる。しかし現実には先生は知らないことばかり。そして研究は、何がどうなるか誰も知らない未知に取り組む作業。正解がない世界。

2017-07-01 21:00:13
shinshinohara @ShinShinohara

ところが中高でも「実験」といっても結果の分かっていることばかり。スチールウールを燃やせば重くなりますよ、って、教科書に書いていることをやらされる。面白くない。だから私は実験が嫌いだった。教科書をなぞるだけなんて、何が面白いのか。

2017-07-01 21:01:48
shinshinohara @ShinShinohara

しかも研究は重箱の隅をつついたようなすごく細かいことを研究していることが多い。それが分かったからってそれがどうしたの?と、若い人が思っても仕方ない。私もそう思ってたから。しかし研究は、違うんだなこれが。ついつい寝食も忘れて、徹夜してもやっちゃうようになるんだな。なぜか?

2017-07-01 21:03:44
shinshinohara @ShinShinohara

未知を相手にするからだ。そして自分が手を動かさない限り、自分が実験を設計し、実行しない限り、誰も結果がどうなるか分からないからだ。自分だけが知りうる事実。世界で最初に結果がどうなるかを観察できるのが自分。その唯一感を味わえるのが研究の醍醐味。そんな経験は研究室所属まで皆無。

2017-07-01 21:06:36
shinshinohara @ShinShinohara

なるほど研究は重箱の隅をつつくような細かいものばかりだ。しかしその一隅を照らしたのは、世界で最初、自分だけ。この特別感、唯一感が、研究に魅了されるきっかけとなる。しかしそんな体験をしたことのない若者に、研究の醍醐味を伝えることは難しい。

2017-07-01 21:08:27
shinshinohara @ShinShinohara

お勉強が答えをたくさん覚える作業だとしたら、研究は分からないことに対して問いを立てる行為だ。「何これ?なんでこうなるの?」そう問いを立て、答えを見つけるために実験する。仮説通りだったら「俺の思った通り!」仮説と違ったら「えー?!なんで?もしかしてものすごい発見しちゃった?」

2017-07-01 21:11:27
shinshinohara @ShinShinohara

人生において問いを立てるという体験がなく、未知を既知に変えるという作業をしたことがない。少しずつとはいえ、知らないことが知ってることに変わっていく快感は、素晴らしいものがある。だって、まだ世界の誰もそのことに気がついていないんだから。その現象に関しては自分が一番詳しいのだから。

2017-07-01 21:13:12