【GC/if】黒騎士獅子譚

もしもラコート・マルタイユとレオンハルトが出会っていたら、のifのお話。 ラコートが反英雄側に来て、レオンハルトがオルタ化する。
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頭が平均みっつ程度ある〜! @inugirice

剣戟をするのは危険と判断した女が、退路を絶つ為に周囲を炎の壁で囲う。 「そもそも、全く同じ聖印なのですから同じ効果である可能性は高いですし、それならば同一人物だとしても不思議はありません」 「……どっちか投影体とか?あのクソ騎士野郎、歳取って無いし」

2017-07-14 21:27:28
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「ぶっぶー!」 「どちらも本物だ」 互いに一進一退の攻防を繰り返しながら、店主と騎士が答える。 「怖っ。一匹居たら何十匹居るアレかよ」 「まぁ全盛期は五千くらい居たな」 「まぁアクティブは百前後だったけど」 「悪夢かよ!!」

2017-07-14 22:00:26
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そんなくだらないやり取りをしてはいるが、多勢に無勢か騎士は次第に押され始め、顔には焦りが浮かぶ。 「おやおや、限界かな?……それじゃあ、君が寝返り損ねたら私が行こうかな」 烈風と共に、店主の刃が騎士の頭に迫る。 そして、砕けた音がして。 「…………ぐ……」

2017-07-14 22:17:49
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店主の胸には、斧槍の穂先が深々と突き刺さっていた。 体内から熱で焼かれ、不敵な笑みは崩さなかったが、明らかに死相へと色を変えていた。 「我ながら、厄介な能力だ。一番対策を講じなくてはならなかったからな」 そうして持ち上げられ、店主の身体は女に向かって投げ飛ばされる。

2017-07-14 22:23:54
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「邪魔です」 「あぐっ」 避けられた上に蹴り飛ばされ、店主は無様に地面に転がる。 女は躊躇わず白刃を振りかざしたが、再び動きが止まる。 「っ!」 「君への対処はどうとでもなる」 大剣は小回りの効く武器ではない。 故に、武器に当てずに攻撃を命中させる難度はあまりに高い。

2017-07-14 22:29:35
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「私同士の戦いが成立するのは……互いに武器や身体を当ててはならないからだ。だが、君の場合は私が接触すればそれで有利に傾く」 記憶を掻き乱す楔の効果はほんの一瞬に過ぎない。 現に、剣の軌跡に一切のブレは無かった。 だが、次の手への対処はその分遅れている。

2017-07-14 22:32:18
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「眠るがいい、狂信者」 頭蓋の、砕ける音。 脳漿が熱せられて蒸気を立て。 倒れ臥す身体。 「さて……残るは一人。いや、二人か。何にせよ易いな」 騎士は足を向けるが、男はとうに距離を取って店内の暗がりへと飛び込んでいた。 「はぁー⁉︎……逃げるに決まってんだろ⁉︎」

2017-07-14 22:38:23
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男の輪郭が溶けて影に沈む。 地形の縛りを無視する機動力。それを駆使すれば店を抜けて逃げ出せる可能性は高い。 「だろうな」 騎士は足を一歩引いて、飛び出す。 聖印の光を推進力の翼に変え、闇を白く塗り潰しながら店内に飛び込んだ。 「うっそだろテメー⁉︎」

2017-07-14 22:42:25
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聖印の輝きはあっという間にあらゆる影を引き剥がし、男を黒から引き摺り出す。 「奥の手は取っておくもの……と言いたいが、今回君へ対策する為に修得したものだ。良かったな」 「良かねぇよ!!!!」 一撃は避けた。 二回目で足が飛んだ。 三度目は。

2017-07-14 22:46:13
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「これだからピカピカギラギラしやがってんのは嫌いなんだよ!!」 死に物狂い、あるいはヤケクソに放たれた最後の獲物は騎士の頬を掠めて梁に突き刺さる。 「それは結構。嫌われ甲斐があるというものだ。……さぁ、終幕の時だ」 ――良い顔で死ね。 ごとりと、首が落ちる。

2017-07-14 22:50:16
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片手で持ち上げたその表情は、苦虫を踏み潰したような顔であり、強張った目元の筋肉からして、最後まで戦意を持って睨んでいたに違いなかった。 「……君は自らを大したことないと評している節があったが、頑固さで言えば相当だと思うぞ?」 そう言って手放し、地面へと再び墜えさせる。

2017-07-14 22:55:54
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騎士は後方を振り返ると、まだ炎の壁が展開されている事を確認する。 「妄執の炎とはまさにこの事か」 そう感心すると、半ば外れかかった扉を蹴破る。 「で、どうする?リュディカ・ノックス」 裏口へと向かっていた白衣の女の顔が青ざめた。 「命乞いでもしてみるか?」

2017-07-14 23:04:11
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白衣の女は答えなかった。縺れる手足を必死に動かし、扉へと向かう。 敢えて光の翼を展開するまでもなく、弾むような軽い足取りで騎士はその後を追い、震える手で扉に縋り付き鍵を回そうと足掻いている女の元へと近付く。

2017-07-14 23:08:30
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「あ……あぁ……あぁぁぁ……!」 歯を恐怖に鳴らし、目を見開き、女はへたり込む。 普段の陶酔と傲慢は其処には無く、ただただ死と痛みへの恐れと絶望だけがあった。 「実に素晴らしい反応だ。3年振りに『悪役』に返り咲いたという満足感がある。……ありがとう。とても嬉しい」

2017-07-14 23:11:46
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五回程の、重い音。 断続的な悲鳴。 それが啜り泣きか、あるいは末期の呼吸かに変わった辺りで、蹲っていたその身体を仰向けに蹴り転がす。 「本当はもう少し長く苦しんで欲しいから放置していきたいのだが……生憎君は治癒魔法師だからな。そうはいかないのが残念だ」

2017-07-14 23:21:47
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穂先を首の動脈に当て、そして引く。 「では、さようなら。今まで世話になったな」 白銀の足甲を赤く染め、どす黒い足跡をつけながら、騎士は再び店の前へと戻って来る。 そうして、数度瞬きをして。 息を吸い込んだ。 「おやおや」

2017-07-14 23:25:12
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赤い炎の壁は消えて周囲は闇の帳が降りていて。 店主の右腕が無くなっていて。 そして、黒髪の狂信者の姿が、何処にも見当たらなかった。

2017-07-14 23:27:04
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「此処まで動けるかのはさておき、まさか君まで生きているのは驚きだな。成る程、活動限界に対する認識を改めなくてはいけない」 騎士は店主の身体を踏み付けた。 「すまないが、私は私だからな。事実はさておき、話してくれないと思考が分からなくて不便だ。話して貰えるか?」

2017-07-14 23:30:58
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「無茶……言うね……」 その言葉が絞り出されている間に、騎士は記憶を閲覧し頷く。 「成る程。流石はアンデッド。治癒の印を受けたとはいえ、あれだけ頭部を損傷しておきながら、剣で右腕を切り落とした上で逃走するだけの力があるとは」

2017-07-14 23:34:41
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ふーっと足元から溢れた吐息には満足げな響きがあった。 「君に……勝たせっぱなしも…………癪だろう?」 騎士はそれに残念さ半分、楽しみ半分といった様子で答える。 「ふむ……折角だから全てすっぱり差し出すつもりだったのだが、仕方がない。彼女は追い追い殺すとしよう」

2017-07-14 23:39:07
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騎士はくるりと手首を返し、店主の首へと刃を添える。 「では、最後に残す言葉はあるか?」 思案と息を整えて、最後まで嘯いた軽やかな声音が紡がれる。 「ふふ……君は何を言わずともちゃんと楽しめるからね……だから…………」 「良き結末を……かなぁ…………いつものだね……」

2017-07-15 01:50:13
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騎士は刃をゆっくりと持ち上げた。 「まぁ、そうなるな。確かに君という個体は無くなるが……結局、私は終わらない。そう悔やむ事はあるまいな」 「……悔しいのも……それはそれで……一興だからね……」

2017-07-15 01:55:36
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. 真っ直ぐ、穂先は天を向いた。 さながら針が十二時を指すように。 「では、さらばだ。“魔王”と楽しく『悪役』活動に興じてくる」 「うん、いってらっしゃい」 .

2017-07-15 01:58:14
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―――――― ―――― ―― 「……実に楽しい時間だった」 一通り目ぼしいアーティファクトや物資を回収し終えると、死体をまとめて店舗に放り込んで火を放つ。

2017-07-15 02:00:33
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狂信者の妄執の炎とは異なる、橙に揺れる炎を眺めながら騎士は満足げに呟き、大きく伸びをする。 「裏切りは完遂した事だし、後は全てを差し出すか……となると、彼の話をしなくてはならないか」 袖と裾を直し、立ち昇る煙を眺めた。

2017-07-15 02:03:44