ゴールデンカモイ #7

なんでマグロが飛んでるんだろうなあ……。 6:https://togetter.com/li/1132856 8:https://togetter.com/li/1134232
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2017-07-25 20:31:14
劉度 @arther456

【ゴールデンカモイ】#7

2017-07-25 20:32:14
劉度 @arther456

幌筵泊地では、南の深海棲艦に対する出撃体勢が整いつつあった。「東郷くん、本当に北方水姫を釣り出して来るとはなぁ。どんな魔法を使ったんやろ?」戦況を眺めながら、城島は不思議そうに呟いた。あの深海棲艦は極めて慎重で、罠を仕掛けてもことごとく逃げられる曲者だったからだ。1

2017-07-25 20:33:07
劉度 @arther456

《なんか通信とかしてたらしい。偽の情報で誘い出したんじゃないのか?》城島の疑問に、国分と共に泊地水姫を追う山口大将が答えた。「ほほー。甘い顔して中々えげつないことしよるな、あの子。流石、元帥の秘蔵っ子や」そこに別の通信が入った。《リーダー、そろそろ出撃してもいいか?》2

2017-07-25 20:36:19
劉度 @arther456

「おう。北は頼むで、長瀬」長瀬と松岡は、北で深海棲艦と戦うロシア軍を援護するために出撃する。基地にはアヒル元帥と城島が残り、基地航空隊も含めた全軍の指揮を行う。幌筵泊地始まって以来の総力戦になる。北と南、2つしかない侵入口の両方を攻められたのは、今回が初めてだ。3

2017-07-25 20:39:03
劉度 @arther456

「ほな、航空隊の第三部隊は、離陸して防空を頼むで」《らじゃ》少し離れた航空隊の妖精さんも離陸準備を始めた。敵が泊地へ爆撃を仕掛けてきても、これで被害は抑えられる。防御準備は万全だ。「失礼します、大将!」部下の一人が指令所に入ってきた。入ってきたのは通信室長だ。4

2017-07-25 20:42:01
劉度 @arther456

「どうした?」「その、ちょっと妙なことが」「だからどうしたんや?」「先程、占守島の警備部隊が定時連絡を送ってきたのですが、すべて異常なし、と言ってきたんです」「異常なしなら別に……」言いかけて、城島は口をつぐんだ。「ほかに、連絡は?」「何もありません」「おかしいな、それ」5

2017-07-25 20:45:03
劉度 @arther456

すぐ目の前の海で、北方水姫との交戦が始まっている。占守島のレーダーでもそれを捉えているはずだ。なのに、どうすればいいかという質問すら聞いてこないのは不自然だった。「ちょっと、占守島と通信つないで」「了解」城島は占守島の警備隊に通信をつないだ。6

2017-07-25 20:48:00
劉度 @arther456

「もしもしー?」《こちら、占守島警備隊》「そっち大丈夫かー?」《異常、ありません》「ホンマか?」城島の確認に、返事は返ってこなかった。「ところで、昨日の夜は何食った?」《こちら、占守島警備隊》「……おい」《異常、ありません》城島は通信を切った。「大将、これは……」「アカン」7

2017-07-25 20:51:01
劉度 @arther456

その時、外で爆発音が轟いた。「なんや!?」窓から外を見ると、航空基地の辺りからもうもうと黒煙が上がっていた。唖然とする城島が見る前で、更に倉庫が、滑走路が、係留していた指揮艦が次々と爆発する。どこからかの砲撃だ。「おい、深海棲艦が突っ込んできたのか!?」8

2017-07-25 20:54:05
劉度 @arther456

「いえ、海上に敵影はありません!」オペレーターが叫ぶ。「……まさか!」城島は占守島の方を見た。海峡を挟んだ向こう側の沿岸で、オレンジ色の閃光が奔ったところだった。とっさに城島は窓から離れる。直後、爆風が司令室の窓を粉々に打ち砕いた。9

2017-07-25 20:57:05
劉度 @arther456

ネオホッカイドウ沿岸警備隊の阿東少佐は心底困っていた。横須賀の提督が、ロシア軍から離れて戻ってこいと言い始めたのだ。「勘弁してくれ……」名目上は独立部隊だが、事実上の指揮権はロシア軍が握っている。しかし、幌筵泊地が陥落したら、ここでの戦闘は無意味になる。11

2017-07-25 21:00:12
劉度 @arther456

そこで阿東はロシアの隊長に電話した。《ダメだ。陸に逃げた敵が見つかるまで、海上封鎖を維持せよ》やはり断られた。その旨を横須賀の提督に電話した。《なんでロシアに相談したの!?指揮権は独立してるんだから、勝手に戻ってくればいいでしょう!》やはり怒られた。12

2017-07-25 21:04:10
劉度 @arther456

「とは言ってもなあ……」勝手に戻れば当然ロシアが怒る。それも避けたい。阿東は作戦前にネオホッカイドウ大統領府に呼び出され、ロシアや日本に下手に楯突くなと言われていた。どちらかが機嫌を損ねれば、最悪、ネオホッカイドウで第二次日露戦争が起きかねない。13

2017-07-25 21:07:11
劉度 @arther456

阿東にはこうした政治の綱渡りの経験がない。ああでもない、こうでもないと頭を悩ませ、無駄な時間を過ごすしかできなかった。それを断ち切ったのは、オペレーターの叫び声だった。「隊長!」「んー!?あー、はい、なんだ!」「レーダーにいきなり飛行物体が現れました!数20!」14

2017-07-25 21:09:08
劉度 @arther456

「あぁ!?」阿東は船長席から飛び上がった。「クソッ、対空砲撃てっ!」すぐさま、砲撃が放たれる。「着弾!……飛行物体群、二手に分かれました!」レーダー上の編隊は、ロシア軍の地上陣地と輸送艦隊へ向かった。輸送艦隊は相手を撃ち落としたようだが、陣地でいくつかの爆炎が上がった。15

2017-07-25 21:12:03
劉度 @arther456

《こちら輸送艦イグルー!今のは何だ!?》ロシア艦から通信が入る。「奴らだ!気をつけろ、魚雷が来るぞ!」阿東にとっては見慣れた戦術だ。しかし、バルト海からやってきたロシア海軍にはそうではなかった。《魚雷?魔力レーダーは何も――》輸送艦の一隻から、水柱が吹き上がった。16

2017-07-25 21:15:03
劉度 @arther456

阿東の艦の周りでも、水柱が上がる。機関砲が仕事をした。「第二波来ます!」「択捉!国後!占守!迎撃しろ!」《了解!》次の攻勢は、艦橋の窓から見えるところまで来ていた。こちらに向けて突撃してくるのは、航空爆弾を抱えたマグロだった。17

2017-07-25 21:18:02
劉度 @arther456

潜水棲姫・ロングテイルは、海中から射出されるマグロを見上げながら、戦況の推移を見守っていた。北方水姫は敵に謀略を見抜かれ交戦中。一方、北端上陸姫は上手くやったようだ。港湾水姫の陸上爆撃機隊も、間もなく幌筵に到着するだろう。そして彼女は、ここで足止めを食らっている。19

2017-07-25 21:21:09
劉度 @arther456

そもそも彼女は幌筵泊地にマグロによる奇襲を仕掛ける予定だった。しかし、この島の付近になぜか敵が集結しており、哨戒網を抜ける見込みが立たなかった。そこで別働隊を先に倒すことにしたのだ。奇襲は上手くいった。敵の輸送艦は既に2隻が撃沈されている。20

2017-07-25 21:24:11
劉度 @arther456

「マグロヤブ部隊、東海岸から上陸して、敵の陸上陣地を攻撃しろ」「ゴボーッ!」機械の鎧を身に纏ったマグロたちが海岸へ侵攻する。だが、海岸に意識を向けたロングテイルは、そこに同胞とよく似た気配を見つけた。「……おい、ブリザード。応答しろ」《うぇっ? あっ、はい》21

2017-07-25 21:27:01
劉度 @arther456

水上にはブリザードが待機している。人間の分類で言えば戦艦ル級にあたる彼女は、北方水姫麾下の深海棲艦だ。潜水艦とマグロだけでは火力が足りないということで同行している。「灯台から少し北の辺りに、同胞の反応がある。わかるか?」《あ、はい!見えます!あ、ほっぽちゃんです!》22

2017-07-25 21:30:15