- gorryyyyyy
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昨日の酒場に居た看板娘だ。 真剣な眼差しで、キノコ納品クエストの依頼書に目を通している。 これにはファルトも、思わず目を丸くした。
2017-08-17 18:10:54目線が外れ、此方に気付きあっ、と声を漏らす娘。 手を振り、小さく跳ねるその目線の先にいるファルトに、男ハンター達の冷たい視線が突き刺さる。 ああ、もう勘弁してくれ。
2017-08-17 18:11:34「あ!ここにもアオキノコ!」 両手にアオキノコを取り、ポーチへしまう。 溜め息を吐くファルト。大した金も稼げない上に、この女は初心者とはいえ、余りにも周囲を警戒していない。
2017-08-17 18:14:03今日のメシは、さっき弓を教えるがてら仕留めたアプトノスの肉だけになりそうだ。 此方の気も知らず、草木を分けてどんどん奥へと進んでいくのを、ファルトは末恐ろしく思いながらついていく。
2017-08-17 18:14:42随分と遠回しな言い回しになってしまった、と僅かに反省した。 「何故ハンターになったか」と聞く事自体が、凡そ気持ちの良くない事態を招くからだ。 特に、こういう妙に明るい奴、ましてや女に関しては。
2017-08-17 18:15:52そこに集められた20個程のアオキノコ。 確かに初心者からすれば、体力もつく上地形も覚えられる良い訓練だとファルトは感心していた。
2017-08-17 18:25:52ポーチの中身を整理整頓した女は、火を起こすファルトを見てすっと立ち上がる。 「さて、大分遅くなっちゃったけど、ご飯にしましょ。私が料理するわ。」 その言葉の最後に、ファルトは眉をひそめる。 「……料理?」
2017-08-17 18:26:33腰に手を当て、ファルトを見下ろす。 「あら失礼ね。これでも酒場で結構な間働いてるのよ。任せて、素材は探索中に大体揃ったわ。それに、今日一日護衛してくれたお礼よ。」
2017-08-17 18:27:12そこからは、ファルトは目の前で起きている事に追いつけないまま、ただそれを見つめていた。 皮を剥かれた芋が茹でられ、アプトノスの肉と野菜が炒められ、水が足され、みるみるうちにスープになっていく。
2017-08-17 18:28:23「味付けは塩だけだけど、勘弁してよね。この調理器具とパンを持って来るので手一杯だったんだから。」 なんとパンまで持って来てるときた。
2017-08-17 18:29:39ファルトはただ黙っていてもいけないと思い、なんとか口を開く。 「この……調理器具はどうしたんだ?」 「ああ、酒場のマスターがくれたのよ。ハンターへの転職祝いだって。」 「……転職!?」
2017-08-17 18:30:25なんとか話を振ってみたが、だめだ、更に理解が追い付かない。 何故酒場の看板娘が、わざわざ危険なハンターに職を移すのか。そして何故昨日今日会ったばかりの俺と、仲良く飯を食おうとしてるのか。 何故、何故……。
2017-08-17 18:31:09出来上がったスープと、女を交互に見遣る。彼女は意地悪な笑みを浮かべていた。 「嫌いなモノでも入ってた?」 いや、と小さく情けない返事をし、スープをひと口啜る。
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