パッチで妄想【ジョニー編】

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えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・1】 「好きです」 何日も悩んだ挙句、ありったけの勇気を振り絞ったのに、私の想い人の返答は素っ気なかった。 「ありがとう…でもな、その気持ちには応えられん」 「どうしてですか?付き合っている人はいないって言ってましたよね…」 「…」 「好きな人…いるんですね?」

2014-05-10 23:06:25
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・2】 「…そうや」 「いつもカウンターで話している人ですか?それともこの間、街で一緒に歩いていた人?」 「違う」 「じゃあ、誰…なんですか?」 「君には関係ない…どちらにしても、僕が君の気持ちに応えることはできんのやから」 「どうしても、ですか?」 「…ごめん」

2014-05-10 23:06:38
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・3】 あれは…いつのことだっただろう。 その頃の私は、仕事でもプライベートでもいろいろな事が起きていて、身も心も疲れ切っていた。 そんな私を心配して、友人がほぼ強引に連れてきたのが、“クラブエイト” 音の海が溢れる店内のカウンターで、彼は静かに存在していた。

2014-05-10 23:06:47
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・4】 よく見ると、彼は肩から大きな布をぶら下げていて。 それが気になった私は、友人から離れて、彼のいるカウンターに近づいていた。 その布に包まれていたのは… 「赤ちゃん…貴方の子供ですか?」 思わずつぶやいていた。 その声に彼が反応し、顔を上げて私を見る。

2014-05-10 23:07:00
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・5】 「すみません…気になったもので、つい…」 無意識のつぶやきに反応されたことが恥ずかしくて、俯いた私の耳に、 「…僕の子とちゃうよ。預かってるだけや。こんな店に連れてきたらあかんの分かってるんやけど、誰も見てくれる人がおらんから…」 と低めの静かな声が届く。

2014-05-10 23:07:08
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【パッチで妄想・6】 ゆっくりと顔を上げると、彼はカウンターで、さっきと同じように、黙々と仕事をしていた。 「そう…ですか」 「ご注文は?」 「え?」 「注文しに来たんちゃうん?」 「あ…」 「ま、無理せんでもええけどな」 「あの…じゃあ、カルアミルクを」 「…かしこまりました」

2014-05-10 23:07:15
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【パッチで妄想・7】 そう言うと、目の前で作り始める。 その動きが綺麗で、ただぼんやりと見つめていた。 「お待たせしました」 と、差し出されたグラス。 「…あんま、飲み過ぎんように」 「ありがとうございます」 グラスを取り上げ、口を付ける。 なんとなく優しい味がした…

2014-05-10 23:07:20
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【パッチで妄想・8】 「ジョニー、ちょっとええか?」 奥から誰かが声を掛ける。 「…ジャッキー、ちょっとココ頼んでええ?」 「おん」 そして彼は、「…どうしたん?」と言いながら、奥に行ってしまった。 もう少し…見ていたかったな… ジョニーって言うんだ…あの人。 源氏名、だよね?

2014-05-10 23:07:28
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・9】 「…おい…おいって!」 「え?」 「え、じゃあらへん。さっきから話しかけてんのに、無視かいな」 「あ、すみません」 「あんた、何も食べんでええんか? 空きっ腹に飲んだら、悪酔いすんで」 「あ、そうですね…そしたら、何かコレに合うものを…」 「よっしゃ‼︎」

2014-05-10 23:07:34
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【パッチで妄想・10】 そう言った彼は、どことなく嬉しそうに何かを作り出した。 そうして出てきた料理は、驚くくらいお酒にも合っていた。 「美味しい…」 「そうやろ?俺が作ったんやから!」 自信たっぷりに言う姿に、思わず笑ってしまった。 この店…意外といいかも…

2014-05-10 23:07:40
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【パッチで妄想・11】 その日は、結局帰るまでジョニーさんが戻って来ることはなかった。 最後に、もう一度顔が見たかったな、と思いながら、私は店を後にした。 それから私は、マメにその店に通うようになり、少しずつジョニーさんとも話をするようになった。 そして、私は、恋に落ちた…

2014-05-10 23:07:46
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【パッチで妄想・12】 同時に気になることもあった。 お店で働いてる人たちは、みんな、どことなく陰があった。 笑顔で話しているその裏に、踏み込んではいけない何かを隠している、そんな気がするのは考えすぎ? もしかすると…ただの店員…じゃないのかな…

2014-05-10 23:07:51
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【パッチで妄想・13】 何の用事だったかは忘れたけど、休日の昼下がり、私は街を歩いていた。 ふと、視界の端にジョニーさんがいた気がして、そちらを見てみると、見慣れない黒のスーツに身を包んだ彼がいた。そして、隣に派手ではないけれど高そうなワンピースを来た女性がいることに気付く。

2014-06-05 12:47:19
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【パッチで妄想・14】 綺麗な女の人… 今の自分をショーウィンドウに写してみる。 良くも悪くも普通。 可もなく不可もなく、全てが平均的。 もう一度、視線を移すと、並んで歩く二人がとてもお似合いで、ますます自分の姿が哀しくなってくる。 あの人…彼女なのかな…

2014-06-05 12:47:43
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【パッチで妄想・15】 店に通うようになって、少しずつ話をするようになって… だけど、自分が彼のことを実はよく知らなかったことに、今さらながら気付く。 私が知っているのは、あの騒がしい店の中で、ただ静かに立っている姿。 周りの喧騒をモノともせず、自分のすべきことを黙々とこなす姿。

2014-06-05 12:48:03
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【パッチで妄想・16】 饒舌ではないけれど、カウンターの客と会話を交わし、カクテルを作り、そして時々、奥から呼ばれて行ってしまう。 その時の彼の顔は、少し強張っていて、私にはよく分からなかったけど、難しい仕事を頼まれているのかな…なんて、勝手に想像していた。

2014-06-05 12:48:27
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【パッチで妄想・17】 そう言えば、今の彼の表情は、その時と似ているかもしれない。 それだけ、緊張する相手、なのかな。 楽しそうに話しているわけではないけれど、自然な仕草で彼女をエスコートしていた。 私には、それが羨ましかった。 私も、あんな風にされたら…そんな想いが浮かぶ。

2014-06-05 12:48:48
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【パッチで妄想・18】 いつの間にか私の心の中に住み着いた人。 何処にいても、何をしていても、彼のことが頭から離れなかった。 でも、その想いを告げようとは思っていなかった、今の今までは。 自分の知らない人といる彼を見た時に、私の中で何かが弾けた。 私、彼の隣に居たい…

2014-06-05 12:49:08
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【パッチで妄想・19】 数日後、店を訪れた私は、思い切って尋ねた。 「ジョニーさんって、付き合ってる人、いるんですか?」 「…いきなり、やな」 「あ…いえ、ジョニーさん、カッコいいから彼女とかいるのかな、ってずっと気になってて…」 「…」 「気を悪くしたんだったら、すみません」

2014-06-05 12:49:27
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【パッチで妄想・20】 「…おらへんよ」 「え?」 「彼女はおらん。付き合ってる人も…」 「あ…そうなんですか…」 「そっちはどうなん?」 「…今は、いません。好きな人はいるんですけど、なかなか踏み出せなくて…」 貴方に恋してるんです… その一言は、声にならなかった。

2014-06-05 12:49:48
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【パッチで妄想・21】 「そっか…まあ、好きなだけじゃどうしようもないこともあるからな…」 そう呟いた彼は、どこか寂しそうだった。 だけど、私はそれに気付かなかった。 付き合ってる人はいない。 あの人は彼女じゃない。 じゃあ、あの人は誰? ずっと、そんな事を考えていたから…

2014-06-05 12:50:09
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・22】 眠れない夜が続いた。 彼女じゃないって分かっていても、あの日の光景が私を襲う。 今は彼女じゃなくても、明日は分からない。 あの人じゃなくても、誰かがその座を勝ち取るのかもしれない。 毎日、そんな事ばかり繰り返し考えていた。 そしてあの日、彼を呼び出した…

2014-06-05 12:50:27
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・23】 「どうしたん、急に…」 「あの…あのですね…」 いざとなると、やっぱり言いたいことが言葉にならない。 「…?」 「あの…好きです」 自分の中のありったけの勇気を振り絞って、やっとそれだけを声にした。 彼は、少し驚いて、少し目を丸くして…

2014-06-05 12:50:42
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・24】 だけどすぐに真顔に戻って、 「ありがとう…でもな、その気持ちには応えられん」 そう、私には告げた。 「どうして?」という想いと、「やっぱり…」という想いが複雑に絡み合う。 付き合ってる人はいないと聞いたけど、もしかして…あの人に片想いしてるの?

2014-06-05 12:50:57
えいと@ぱられるわあるど @BRPOBYG_eighter

【パッチで妄想・25】 「好きな人…いるんですね?」 「…そうや」 「この間、街で一緒に歩いていた人?」 「え?」 「たまたま見かけたんです…綺麗な女の人と歩いていたところを」 彼は、記憶を辿るように少し考えて、 「違う」 と、はっきり答えた。 「じゃあ、誰…なんですか⁈」

2014-06-05 12:51:21
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