編集部イチオシ

「ブラック企業と戦う方法」を鵜呑みにする前に

ブラック企業が根絶されるべきとは思いますし、働く人が対抗策を身につけるのは重要だと思うんですよ。 ただ方法論に問題があったり、付け焼き刃で対抗しようとすると、傷口を広げるだけになる可能性もある、ということで注意喚起を。
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都幾川 沙月 @SatsukiFox

なんか「ブラック企業と戦う方法(@kigyo_black )」というアカウントのRTをちらほら見かけるのですが、いまいち中身の正確性に疑問がありまして、モヤモヤする今日この頃。 趣旨は賛同したいんですけどね、中途半端に概念ばかりで、実務面の視線が欠けてる感があって、大丈夫かなと。

2017-09-28 00:09:12
都幾川 沙月 @SatsukiFox

@SatsukiFox 実際のところ「で、ブラック企業から抜け出して、金取り返すのにどうしたらいいのよ」って話が抜け落ちてて。 普通の弁護士にいきなり頼める行動力があれば、そもそも問題ないでしょうけど、辞めた後の公的支援(雇用保険など)の話の方が重要じゃないですかねぇ?とか。

2017-09-28 00:12:31

総じて、上記の問題に尽きるのですが。

  • ブラック企業に訴訟をするにも、当然弁護士費用は必要になる
    但し法テラス等の支援を頼ることも場合によっては可能です。
    法テラスは無料相談の回数に制限があるので、できれば「何が問題だったか」「何を証拠にできるか」等、資料を纏めてから1回目の相談に望む方が無駄が少ないです。

  • 形式上は自己都合退職でも、会社による不当な行為があった場合は、雇用保険の受給時に申請できる
    雇用保険(一般にいう失業保険)は自己都合退職の場合と、会社都合(あるいは倒産等)の場合で、受給できるまでの期間等に差があります。
    これに関しても「会社がブラックだった」ことを示せれば、会社都合退職扱いに変更できることがあるので「そういうことができる」という知識は持っておいて損はないです。
    (尚、その場合「職業安定所にその旨申請しないといけない」ので、これも具体的な証拠等が必要になります)


たとえば。

ブラック企業と戦う方法 @kigyo_black

【退職は2週間前の申し出でOK】 退職したい場合は民法により2週間前に申し出すればOKとなっています。 しかし、ブラック企業の入社時の書面には「退職は半年前に申し出る事」と記載されているケースも存在します。 こういった一方的な条件は全て無効となりますので無視でOKです。

2017-09-26 14:00:05
都幾川 沙月 @SatsukiFox

鵜呑みにすると危険ですよ、これ。 例に出ているような「半年前」はまず無効でしょうが、「1ヶ月前に申し出ること」ぐらいであれば有効とされる可能性もあります(専門的な言い方をするなら、民法627条が強行規定かについては判例も割れてます) twitter.com/kigyo_black/st…

2017-09-26 20:43:22

まずこの話、前提は雇用期間の定めのない場合なので、当然のごとく契約社員等、期間ごとに契約を更新する形式だと、別の話になってきます。

また、割と多くの会社で「退職は1ヶ月前に申し出る」等の規則があったりしますが、これは有効とされる可能性は十分にあります。
大室木工所事件(昭和37年4月23日)等、(公序良俗等に反する・退職を著しく制限するような規則でない限り)就業規則が優先される、という判例はあります。


その2

ブラック企業と戦う方法 @kigyo_black

【録音するのって問題ないの?】 パワハラや不当解雇、残業未払い等の証拠を集める為に録音が推奨されていますが、「勝手に録音していいのか?」と悩む人がいます。 結論から言えば問題なし。 それどころか裁判で争う際は、録音した音声は「とても有力な証拠」として扱われます。

2017-09-27 23:00:13
都幾川 沙月 @SatsukiFox

いやー、これ「結論から言えば」という程に簡単な問題じゃなくて、就業規則その他のルールによっては足下すくわれますよ 労働問題という観点だけなら兎も角、それでパワハラの証拠にできても、別口で情報持ちだしとして追及を受ける可能性はあります twitter.com/kigyo_black/st…

2017-09-28 00:00:45

これに関しても、パワハラ等の証拠とする分には(たとえ就業規則に反してたとしても)録音は証拠になるのですが、それ以外の部分について視点が抜け落ちています。
労働形態にもよりますが、雇用者とは別の場所で勤務していた場合、そちらに対して機密保持の宣誓書等を出すことは一般的に行われていますし、それが破られたことに対して、録音した人が責任を問われる可能性は否定できません。

ですので、この手の話に関しては、できれば事前に弁護士等、きちんとした法律家に相談をした上で、録音しての証拠保全の是非を判断すべきです。


その3

ブラック企業と戦う方法 @kigyo_black

【実は試用期間でも解雇は難しい】 一般的に会社は簡単に社員を辞めさせることができないというのは知られているかと思います。 実は、試用期間であっても例外ではなく、能力が低い等の理由だけでは辞めさせることができません。 試用期間だからと諦める必要はないので覚えておきましょう pic.twitter.com/FMFkL66l1v

2017-09-27 20:00:23
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都幾川 沙月 @SatsukiFox

これも試用期間のうち「雇用してから14日経ってたかどうか」で話が若干、変わってくるので、安易に断言すべきではないです。 まあ14日以内だとしても無制限に解雇できるわけではないですが。 twitter.com/kigyo_black/st…

2017-09-28 00:04:41

もちろん試用期間中であっても解雇の制限がまったくないわけではなく、相応の理由は必要とされます。
ですが、労働基準法21条の規定から、「試用期間中、かつ雇用して14日を超えていない」場合、解雇予告等を不要とする等、制限が緩くなりますので、その点については注意が必要です。


2017年9月30日・追記
「パワハラの証拠としての録音」に潜む罠の話

都幾川 沙月 @SatsukiFox

「ブラック企業と戦う方法」を鵜呑みにする前に togetter.com/li/1155637 この纏めに関して、少し補足を。連ツイになります。 主に「ブラック企業であることの証拠として、社内での録音等が許されるか」の話です。

2017-09-30 22:51:57
都幾川 沙月 @SatsukiFox

まず、ブラック企業云々で、個人vs会社での訴訟となる場合、いわゆる「民事事件」になります。 ですので、刑事事件に比べれば、証拠を揃えるためのプロセスが問題になることはないです。 ですので「会社の規則に違反して録音していた」場合でも「証拠として」問題ないというのは正しいです。

2017-09-30 22:55:03
都幾川 沙月 @SatsukiFox

また、雇用元の会社で、同僚・上司が不当な指示・行為をしていたのであれば、そこから身を守るための行為として、録音等が「その社内であれば」、たとえ就業規則等で禁止されていたとしても、*最終的には*その行為について責任を負わされる可能性は低いと考えられます。

2017-09-30 22:56:57
都幾川 沙月 @SatsukiFox

ただし前述のように、それは「最終的には」という前提がつくわけで。 ブラック企業が「金さえ貰えば何でもやる」タイプの弁護士なんかと連んでいた場合、会社に対して訴訟をしたことへのある種の報復として、就業規則違反に対する損害賠償請求をされる、等が発生する可能性はあります。

2017-09-30 22:58:11
都幾川 沙月 @SatsukiFox

まあ「最終的には」勝てるでしょうけど、それでも訴訟で争う必要が出てくるかもしれないわけです。 文面上というか、形式的には就業規則違反となる行為をしているのも事実なわけですので、ブラック企業側が起こした訴訟が、門前払いレベルで不発になるかというと、流石にちょっと楽観が過ぎるわけで。

2017-09-30 22:59:46
都幾川 沙月 @SatsukiFox

つまり何が言いたいかというと、面倒見てくれる弁護士さんとか、そういう仲間を用意せずに、いきなり録音して証拠に~なんてことをしたとき、どうなるか。 最悪のシナリオは「ブラック企業を退職して法廷闘争していたら、別口の訴訟を起こされた」です。そうなったときに弁護士費用払えますか?

2017-09-30 23:01:58
都幾川 沙月 @SatsukiFox

また、もう1点。これは労働形態によっては無視できる要素ですが。 「雇用主がブラック企業だけど、働いている現場は(ブラック企業から派遣されている等で)第三者の管理する場所だった」場合です。 これはガチで注意が必要というか、「最終的に勝てる」とかいう話ですらなくなる可能性があります。

2017-09-30 23:03:32
都幾川 沙月 @SatsukiFox

というのも、派遣されて働く際に、「そこの規則に従います」的な宣誓書や、その類のものを提出することは少なくありません。 そこに録音禁止の条項があった場合、果たしてどうなるか。 ブラック企業への対抗策だと言いたいですが、派遣先がブラックでない場合、その言い訳が通用するかは微妙です。

2017-09-30 23:04:51
都幾川 沙月 @SatsukiFox

ぶっちゃけこれに関しては(私が知る限り)まだ判例がないので、何とも言えませんが。 最悪「ブラック企業を退職した後に、派遣されていた会社から訴えられる」というリスクがあるわけです。しかも前述のように、派遣先は第三者的なポジションなので、やや分が悪くなる可能性も考慮すべきです。

2017-09-30 23:06:20