亜里沙のことが大好きな雪穂 短編(8)「一年」

■あらすじ  全国大会終了後、この先の自分たちのあり方について悩む雪穂は、絵里との話し合いを受けて、決意に至る。 ■主な登場人物 雪穂、亜里沙、絵里
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亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

「ありがとうございます。寂しいのは、寂しいと思いますけど……連絡はいくらでも取れますし」 「まあ、本当に寂しいときはいつでも私に会いに来て甘えてくれていいのよ。亜里沙の代わり、なんて感じでもいいから♡」 「……」 「……なにその微妙な顔」 「姉妹だなあって……思いました」

2017-09-26 19:34:05
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

「それじゃ、この先も応援してるから――亜里沙をよろしくね」 「はい! 絶対に幸せにします!」 「そこまでの意味を込めたつもりはなかったわ」 絵里さんは軽く苦笑い。なお私は普通に本気で言ってしまった。 「雪穂ちゃんも、ずいぶんと亜里沙に似てきたわね」

2017-09-28 19:34:57
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

「あー、自覚は正直あります」 「私が穂乃果の影響を受けたのと同じね。私たちみたいな、真面目に考えすぎちゃって動けなくなるタイプは、とにかく行動してみてうまくいっちゃう、あんな子が輝いて見えるのよね」 「そう、ですね」 そして、いつの間にか引っ張られていくのだ。行動も、思考も。

2017-09-28 19:35:09
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

「それにしても、μ'sのみんなが、お姉ちゃんについて同じような評価しますね。私は、お姉ちゃんが失敗してばかりなのをずっと見てきたから、あの性格自体に憧れることはなかったんですけど」 「なるほどね、わかる気がするわ。――今も、そう? 妹から見て、穂乃果の評価は変わらない?」

2017-09-28 19:35:18
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

少し迷ってから、まあ……と、小さめの声で、答える。 「今は、もちろん尊敬してます。自慢の姉です」 「……ふふっ、そうでしょうね」 なんだか嬉しそうに笑って、絵里さんは立ち上がった。 「いい話ができてよかったわ。そろそろ穂乃果の相手してあげないと」 「はい、相手してあげてください」

2017-09-28 19:35:42
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

廊下に出て、隣の部屋のドアをノック。 「お姉ちゃんー、絵里さん返すよー」 「やったー!」 叫び声とともにお姉ちゃんが出てきた。絵里さんは、私たちを交互に眺めて、ふーむと真剣な顔で呟いた。 「そういえば雪穂ちゃん、そろそろ私のこともお姉ちゃんって呼んでくれていいのよ?」 「は!?」

2017-09-28 19:36:27
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

「ほら、きっとそのうち――だし。さあ!」 「え、いや、いや」 「えー! 雪穂のお姉ちゃんは私だもん――うん? 絵里ちゃん、雪穂のお姉ちゃんってことは、私のお姉ちゃんにもなる? やった! 絵里お姉ちゃん!」 「穂乃果♡」 「この受け入れの早さ」 まだ私はこの領域には達せなさそう。

2017-09-28 19:36:55
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

そのあと、お姉ちゃんたちを送る日の前日まで練習を重ねる間、私は亜里沙といっしょに、これからの私たちについて、たくさん話をした。 ラブライブ本戦で見たもの。感じたもの。 花陽さんが教えてくれたもの。その言葉。 絵里さんにもうひと押ししてもらったこと。

2017-09-29 20:26:04
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

私の中でまだはっきりと形を持っていなかった気持ちを伝えた。亜里沙はいつも、要領を得ない私の話もしっかりと聞いて応えてくれた。 亜里沙がどこまでもついてきてくれるから、私はもう迷わなくていい。まだ続けられる。まだ先にすすめる。だから進もう。あと一歩。

2017-09-29 20:26:16
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

そして――やっと形になった言葉を、亜里沙に告げることができたのは、見送りライブの前日の夜の、帰り道だった。 「――って、思うんだけど、亜里沙はどうかな?」 亜里沙は、ん、とうっすらと微笑みながら私の手を握る。 「思い出すね。あのときみたい。一年前の」

2017-09-29 20:26:27
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

一年前。私が亜里沙に、μ'sとは別のスクールアイドルをやろうと提案した日。あの日は亜里沙はとても寂しそうな顔をした。今、私が伝えた言葉も、あの日ととてもよく似ている。だけど、亜里沙はもう泣きそうな顔は見せなかった。 「あの日雪穂を信じて、今の私がある。今の私は、幸せだよ」

2017-09-29 20:26:39
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

亜里沙は私に真正面から向き合って、両手を広げた。私は迷わず、亜里沙の体を抱きしめた。 「ありがとう、雪穂。大好きだよ」 「私も、大好きだよ」 もう、こんな言葉もためらうことはない。あれから一年経ったんだ。 「きっとね、いまさらだよ。私たちは私たちにしかなれないから」

2017-09-29 20:26:49
亜里沙のことが大好きな雪穂 @yukiho_0_arisa

亜里沙は言った。そうだね、と私は笑った。 「ほんと、いまさらだったね」 「先輩たちにもそう言われるかも」 「そのときはいっしょに笑おう!」 明日、私たちの決意を伝えて。思い切り笑われて、思い切り笑おう。 明日を、私たちの新しい記念日にしよう。

2017-09-29 20:27:02
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