「マンガの読み方」シンポジウム~漫画研究の黎明期を振り返る
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【追記】「マンガの読み方」の後、私は「IKKI」で1年間『追跡者〜幻のマンガ家・韮沢早を追え!」という企画を連載した。手塚治虫より早くデビューし、そこで手塚マンガの先取りをしたが、手塚の方が圧倒的に人気を博したことで、歴史の影に埋もれた作家のフェイク・ドキュメンタリーである。
2017-11-27 20:10:47韮沢早(すぐる)は手塚の『新宝島』より一週間早く『海賊島』を描き、手塚のよりも出来がいいと自負していたが、人気が出たのは手塚で、その悔しさをバネにマンガ史上の実験を誰よりも早く行う。たとえば「劇画」を最初にやったのは辰巳ヨシヒロではなく韮沢で、
2017-11-27 20:14:28萩尾望都や竹宮恵子よりも早く美少年同性愛ものを描き、70年代初頭にメビウスが日本で紹介された直後にメビウスタッチの漫画を描いている。しかもそれをアニメ化しようとしていた。
2017-11-27 20:16:06こうした「嘘ドキュメンタリー」でもっともらしく綴った連載記事だった。このアイデアは1983年に公開されたウッディ・アレンの「カメレオンマン」から来ている。カメレオンマンと呼ばれた「自分のない男」を主人公にアメリカの現代史を追ったフェイク・ドキュメンタリーで、もの凄く面白かった。
2017-11-27 20:19:32カメレオンマンことゼリックは、少年時代から不安神経症で、周囲に溶け込もうとするあまり、黒人の集団の中では黒人に、ナチスの中ではナチス党員になってしまう。これを、20年代〜30年代の記録映画にたくみに合成した「嘘フィルム」を交えて映画化していた。これが『韮沢早』の元アイデアで、
2017-11-27 20:22:50私は韮沢という『早すぎた漫画家』を通して、間違った戦後漫画史を描こうと思った。いろいろな漫画家さんに「韮沢漫画」を描いてもらった。初期の赤本時代の絵は田中圭一さんに初期手塚絵でお願いし、幕末の日本人がイギリスに渡ってマルクスと出会い、帰国して共産主義革命を起こそうとする話とか。
2017-11-27 20:29:09韮沢がメビウスにかぶれた時の絵は、浦沢直樹氏にお願いした。ほかにも山本直樹さんや相原コージ君など、作風が全く違うマンガ家に「匿名」で参加していただいたが、よくぞ協力してくださったと思う。連載の最後に読者にむけて「全部ウソでした」とばらし、協力いただいた作家名を全員出した。
2017-11-27 20:32:36「IKKI」の編集長は「サルまん」の初代担当者で、私は「これは『サルまん』の最終形態だ」と企画を説明したが、もちろん、夏目さんとやった『マンガの読み方』の経験がたっぷり入っている。『マンガの読み方」以降、私はこの経験を実作で生かそうとしていて、その最初の試みが『韮沢早』だった。
2017-11-27 20:35:49『韮沢早を追え!」はいろいろあって単行本になっていない。現在、加筆訂正を加えようと考えており、おそらく来年には「電脳マヴォ」で公開できると思う。韮沢早はまだ死んでいない。現在、おそらくネットで電子出版をしているはずだ。
2017-11-27 20:38:26noteに「マンガ批評/研究の転換期 『マンガの読み方』の成立過程とその時代」について雑感を書いてみました。 note.mu/iwa_jose/n/n25…
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