Erotic Love ～ side T ～ 透・中学二年／後半

夢乃 @iamdreamers

「帰ったわよ。与志水先生も」 「え、先生もいたんですか。全然気付かなかった」 家庭科を受け持っている与志水先生は、手芸部と調理部の顧問をしている。三年生の学級担任もしていて、あまり部活には顔を見せないけれど。 #twnovels

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「活発に議論しているところを邪魔しては悪いから、って、様子だけ見て職員室に戻ったわよ」と小夜子さん。笑顔が眩しい。 「それで、文化祭に何をやるかは決まったの？」 興味深そうに白河さんが聞く。 「いえ、今日はみんなの案を集めただけで。明後日決める予定です」 #twnovels

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「それじゃ、今日はもうおしまい？」 「はい。あ、でも、紗奈森さんと花華さんが残るから、僕も残っていないと」 部室として使う教室の鍵の管理は、特段の事情がない限り、部長か副部長が行うよう決められている。半ば形骸化しているルールではあるけど、可能なら守らないと。 #twnovels

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「部長は大変ね」 「白河先輩が指名したんじゃないですか」 「あ、そっか」 あはは、と笑う白河先輩。 「じゃ、私は帰るから。あと宜しく」 「はい」 「司さんは？」 「えーと、私は・・・」 小夜子さんが少し言い淀んだ。 「はいはい、解りました。じゃ、明日ね」 #twnovels

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またも含み笑いで、白河先輩は家庭科室のドアに向かった。 「並平君」 「はい？」 振り返ると仲原さん。 「並平君もいいのよ。鍵は私が預かるから」 「え、でも、悪いし」 「私も刺繍やっておきたいから、気にしないで、ね？」 意味ありげに僕と小夜子さんに笑みを向ける。 #twnovels

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手芸部のみんなには小夜子さんと付き合っていること、付き合い始めたことを言っていけど、もしかして気付いているのかな。小夜子さんを好きなことがバレているのは、今年のバレンタインの時に知ったけど。そう言えば、さっき白河先輩が小夜子さんに向けた視線も意味深だった。 #twnovels

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まあ、仲原さんは副部長だからルールにも沿ってるし、ここはお言葉に甘えておこう。 「ありがとう。それじゃ、あとお願いします」 ホワイトボードを手早く片付けると、僕は鞄を持った。 「さよ・・・司先輩はどうします？」 僕を待っていることは解っていたけど。 #twnovels

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「うん、私もそろそろ帰るね」 「はい。それじゃ、また」 残る四人─澤井さんも残ることにしたみたい─に別れを告げて、僕と小夜子さんは家庭科室を後にした。・・・これだから付き合っていることを知られてても無理はないな。隠していないんだから。 #twnovels

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他の子たちは、さっきまでのやりとりの間にもう帰っている。僕は小夜子さんと一旦別れると校舎から出て駐輪場へと行き、自転車を押して西門に急いだ。まだ明るい校庭では運動部が活動していて静けさからは程遠い。彼らの邪魔をしないように、僕は校庭の隅を進んだ。 #twnovels

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校舎裏を通ればいいんだけど、そうすると結構遠回りになるし、校庭を使っている人たちの邪魔にならなければ構わないはず。禁止もされてないし。 西門の傍に小夜子さんが立っている。僕は駆け足で自転車を転がした。 「お待たせ」 「そんな待ってないよ。行こうか」 「うん」 #twnovels

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今日は一緒に帰ることを小夜子さんと約束したわけじゃない。でも、部活で小夜子さんの顔を見たとき、一緒に帰りたいな、と思い、小夜子さんも同じように思っていると感じた。 #twnovels

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家庭科室を出てから『西門で待ってて』と言ったときに疑問の表情を浮かべることなく頷いてくれたから、僕がそう感じたのは間違いではないと思う。この前二人きりになったのは、夏休みの終わり頃だっけ。やっぱり僕が小夜子さんの家に行って、当然のようにオーラスセックスした。 #twnovels

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その後は、妹たちの宿題を手伝わされて忙しかったし、新学期が始まってからも二人の都合がつかなかったから、今日は久しぶりの二人きり。この前小夜子さんの家に行ってから十日ほどしか経っていないのだけれど、随分久しぶりに感じる。 #twnovels

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残暑が厳しかったので、途中のコンビニでアイスを買って舐めながら、建ち並ぶ家々の屋根に隠れようとしている太陽を横に、ゆっくりと歩いた。 「あ、そういえば、この前会った時聞き忘れたけど、模試の結果はどうだったの？」 #twnovels

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小夜子さんはにっこり微笑んだ。か、可愛い。 「ばっちり。フェアリスＡ判定出てたよ」 「やったね。このまま行けば、ばっちりだね」 「冬休みはあまりゆっくりしていられないけれど。三年生はみんな同じだと思うけれど、フェアリスの受験、いつも年明けすぐだから」 #twnovels

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それからちょっと肩をすくめて。 「冬休みのことを今から考えても仕方ないよね。夏休みが終わったばかりなのに」 「そんなことないよ。受験が迫っているんだから、先のことが気になるのは当たり前。僕も協力するから。力不足かもしれないけど」 #twnovels

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「そんなことないよ。これまでだって透君にはとってもお世話になっているし。これからもよろしくお願いします」 歩きながら器用に頭を下げる小夜子さん。 「どういたしまして。来年は僕もお願いします」 僕も頭を下げた。自転車を押しているから、ぎこちなくなったけど。 #twnovels

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「あ、そう言えば、この間電話で透君に薦めてもらった小説、本屋さんで見かけたから買ってきちゃった」 「あ、あれ、まだ置いてたんだ。でも、文庫で良ければ貸したのに」 「それがね、ハードカバーが売ってたから、つい、衝動的に買っちゃった」 えへ、と微笑む小夜子さん。 #twnovels

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「どう？　面白かった？」 「まだ読んでいる途中だけど、面白いよ。あと三分の一くらいかな。この後の展開が楽しみで」 小夜子さんの家に着くまでの間、いろいろなことを語り合った。いつものように。恋人との短いけど甘く楽しいひと時。いつまでも一緒にいたい。 #twnovels

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九月も半ばを過ぎて水泳大会も終わり、生徒たたの関心は次の行事の運動会へ向けて気持ちが移行しつつある。そんな中、手芸部は文化祭へ向けて早めに舵を切り出した。やることは、僕の提案した“ぬいぐるみ動物園”に一、二年生の全員一致で決まった。 #twnovels

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動物園としての体裁を整え、さらには販売用の動物たちも用意しないといけないから、それなりの数のぬいぐるみを作る必要がある。おまけに、今年の手芸部の活動ではぬいぐるみを作ったことはないので、一年生にとっては初めての挑戦。 #twnovels

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僕を含む二年生三人も、ぬいぐるみは去年の活動で一度作ったきりだから、僕自身上手く作れるか自信がない。早くから始めるのはそのための練習期間も考えているから。一年の奈良月さんの提案で、あみぐるみも作ることにした。彼女は編み物が得意みたい。 #twnovels

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他に、葦川さんの強い希望もあって、調理部のテーブルにもぬいぐるみを置いてもらう予定。調理部はまだ文化祭の準備に入ってないから具体的な話はまだだけど、先日、向こうの部長に話したら前向きに考えてくれそうな手応え。 #twnovels

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僕に部長なんて務まるのかな？と思っていたけど、割と順調な滑り出し。ぬいぐるみは初めてという一年生たちに教えたり、何種類かの動物の型紙を作ったり。三年生は基本的にはもう参加しないけど、時々様子を見に来てくれるし、その時はアドバイスもしてくれる。 #twnovels