ピコラとパンクに感じる来訪者性と孤独

たちいりハルコ先生の「パンク・ポンク」電子書籍版発刊に伴い、読み返しながら感じたピコラとパンクの孤独について。
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銅折葉 @domioriha

不幸な偶然や誤解でピコラがひどい目に遭う回があるのだが、出来事そのものに彼本人の種族や出自が無関係であるはずなのに、そこに彼が異物だから理不尽に迫害されている、無理解で排斥されているように見える瞬間があって、そこが胸を締め付けるのだ。

2017-12-17 21:53:18
銅折葉 @domioriha

同じように人語を話しラジオを聞いたり料理をしたりデートに出かけてアイスクリームを食べたりするペットはピコラにも多数登場するのだが、それでもなお「あの日空を飛んでいてコミイと出会う以前の記憶が無い」というピコラの出自が、最後の最後まで彼を異邦人たらしめていた。

2017-12-17 21:54:46
銅折葉 @domioriha

作中に何度も不意打ちのように顔を覗かせるピコラと他者との差異を埋めるように、彼の羽毛はふわふわと暖かく柔らかい。パンクもそうなのだが、他者であるはずなのに距離が近く安心感をもたらす姿が、単純に親近感を抱いていて良いのかという不安も同時に与えているのかもしれない。

2017-12-17 21:56:41
銅折葉 @domioriha

そんな柔らかな外観をしている彼らの毛皮や羽毛も、わりとあっさり些細なギャグでズタボロにされる。だいたいピコラ自身が汚くしているのが原因で、ブラッシングの時に「綺麗にしてあげるから」と羽についたガムを引っぺがす、といった好意と行為で取り返しもつかない姿にされる。

2017-12-17 21:58:24
銅折葉 @domioriha

調子に乗って火遊びをして黒焦げになる、といったギャグの描写とは違う、「キレイになりたい」という動機ではじめた背伸びが、他者からのダメ出しによって台無しにされるような展開が(原因はあくまでピコラにあるわけだが)、なんでこんな理不尽なことをするんだというようにも見えるのかもしれない。

2017-12-17 21:59:50
銅折葉 @domioriha

ピコラ自身が「こうありたい」「こうしたい」「大切にしたい」と思う気持ちが、すれ違いや無理解や誤解によってかなりあっさりと台無しにされてしまう展開がちょくちょくあって、そこら辺にピコラは悪くないだろ! という反発を生み彼への共感となっているのかもしれないな。

2017-12-17 22:01:29
銅折葉 @domioriha

パンクは意図的にいたずらをするキャラであり、特に理由が無くてもパパやママやボニーちゃんの大事なものを壊したり破いたりダメにしたりするのが日常だった。意図的に悪さをしているようにみえるバランスで悪戯が枝枯れている。

2017-12-17 22:03:17
銅折葉 @domioriha

他方、ピコラはコミイのものを壊してしまうパターンでも、「良かれと思って●●しようとしたのにうまくいかなかった」「ちょっと面白そうだと気になっていじってみたらとんでもないことになった」という経緯が描写されることが多く、意図的な悪さとは言いがたい場合がままみられる。

2017-12-17 22:04:58
銅折葉 @domioriha

むろん、ピコラも意図して悪戯や悪さをするのだが、だいたい「ムカついたから」「あいつにひどいことされたから」の仕返しとしての経緯が明瞭で、ようするに良い子であろうと頑張ってるし、我慢の限界でやり返してるのににそこを理解してもらえず理不尽にお仕置きされるケースが多いのかもしれない。

2017-12-17 22:06:43
銅折葉 @domioriha

このへんの、ピコラの気持ちを分かってやらない周囲の人々という環境がたまに浮き彫りになるのが、中高生の感じる孤独感や虚無感に繋がって見えるというのはあるのだろうか。なによりピコラはその出自からして本当に孤独なのだ。

2017-12-17 22:07:52
銅折葉 @domioriha

そうした周囲の理不尽な仕打ちに対して、ピコラは結構な割合でその不遇を我慢させられることも多い。ゾーさんのエピソードしかり、ロージィとの恋しかり、ホゲやポケとの関係しかり。これもピコラが異邦人であるために人間社会にいる代償のように見えてしまう節がある。

2017-12-17 22:09:59
銅折葉 @domioriha

端的なのはコミちゃんを訪ねて三千里とか、あと番外編の位置づけではあるけどサバイバルライフの回。自分の身体の肉を切ってコミイに食べさせようとする描写、ギャグにはしてあるもののあそこはピコラの異質な存在を際立たせるものだった。

2017-12-17 22:11:20
銅折葉 @domioriha

サバイバル回はあくまでピコラの想像という展開で話が進むが、最後に生まれ変わった北半球でアダムとイブになったピコラとコミイが新人類ピコミイのアダムとイブになるというストーリーが語られており、もしかするとあれこそがピコラが世界に受容され、異邦の存在ではなくなる結末ではないか。

2017-12-17 22:13:26
銅折葉 @domioriha

そう考えてみるとピコラは実に思春期以上の層へ向けられた漫画なのだなあと言うことが実感できる。

2017-12-17 22:14:46
銅折葉 @domioriha

ピコラとパンクの話がまったく誰にも通じていないので大変にもどかしい。尊い…いいよね……みたいな話がしたい。

2017-12-17 22:22:30
銅折葉 @domioriha

ピコラとパンクに感じる来訪者性と孤独 - Togetter togetter.com/li/1180387 @togetter_jpさんから 定期的に語りたくなるのだけどピコラ・ピコラを呼んでもらう術がなくてこのピコラに関する異邦人的疎外感と孤独にかんするエモーショナルをを共有してもらえない。たのむ誰か。

2018-10-28 22:40:38
銅折葉 @domioriha

ピコラ・ピコラ (1)・たちいり ハルコ|コミックパークで立ち読み! comicpark.net/cm/comc/detail… #漫画 #comic あ、この試し読みで1巻初期の「数の数え方」と「タマゴを温める」エピソードが読めるな。

2018-10-28 22:42:25
銅折葉 @domioriha

ピコラはある日突然にコミイの元に現れた正体不明の巨大なインコで、連載の最後まで彼がどこから現れてどんな出自を持つのかは示されなかった。いくつかそれらしいエピソードがあるが、だいたいは夢オチや勘違いで示されている。

2018-10-28 22:44:05
銅折葉 @domioriha

連載初期のピコラは、人間の言葉をうまく話せず(作中でピコラ以外の犬やインコ、オウムなども普通に人間と話し、お洒落をし、テレビを見てお箸やフォークでご飯を食べ買い物をする世界観である)、コミュニケーションがうまくいかないことが良くある。

2018-10-28 22:46:01
銅折葉 @domioriha

初期のピコラはこのへんの世界観が固まってなかったようだが、逆にそのせいもあってどこから来たのかわからないお化けインコであるため、その立ち位置がとても脆い。人間たちの文化に馴染まずに笑われたり四苦八苦して順応しようとする様がギャグの一環で描かれるんだけど、そこがすごく心を掴まれる。

2018-10-28 22:48:14
銅折葉 @domioriha

第1話からして、唯一のアイデンティティの「ピコラ」という名前を呼んで欲しいのに、外見がでかいデブインコだからイメージに合わないと「シロナガス」「ジャンボ」「インコゲドン」などと名前を付けられそうになり、ピコラと呼べと叫ぶその様が、闇の中で自己を掴もうと必死なように見えるのだ。

2018-10-28 22:51:21
銅折葉 @domioriha

2話目のピコラの好物についても、なにを食べるのか→なんでも食べるというところからして、得体の知れないクリーチャーへの恐怖が描かれ、誤解をギャグにしているけど、意思疎通もままならないピコラにとってみれば、自分の食べたいものを食べてるだけで恐れられるという異邦性がくっきり描かれる。

2018-10-28 22:53:48
銅折葉 @domioriha

3話目、ピコラのトイレについても、まだペットが人間と同じように暮らしているという世界観が見えないため、サイズの違いこそあれインコがインコとして暮らしているのに意地悪なコミイに不自由な人間社会に適応しろと無理矢理迫られている窮屈さを覚え、そこに一矢報いるピコラへの感情移入が強い。

2018-10-28 22:56:02
銅折葉 @domioriha

4話目、ピコラの数の数え方。これが特に心を掴まれる話で、やはり「インコなのに」人間と同じように算数ができないといけないと迫られている中で、不器用なインコが精一杯人間に与えられた理屈を逆手にとって見せる様、窮屈な社会に自己を確立し合法的に反発を見せるその第一段階に見えるんだなあ。

2018-10-28 22:58:03
銅折葉 @domioriha

ちょうど試し読みの最後の6話目のピコラの赤ちゃんの回。ゆでタマゴを勘違いして自分の子供が生まれると思い込んで温めるピコラが、自分の仲間・家族を求めているいること、人間社会で孤独なことが際立つ一方で、その意志がコミイには理解されずただの食い意地と無情にあしらわれる様が本当に辛い。

2018-10-28 23:01:29