烏賀陽(@hirougaya)さんの「原子力安全委員会の実態…公開されなかった議論」

ジャーナリストの烏賀陽弘道さんが3月31日の朝日新聞の記事に驚き、原子力安全委員会の実態、報道、民主主義などについて論じています。 ひとつめの「量じゃい」は「了解」のミスタイプです。
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烏賀陽 弘道 @hirougaya

3/31朝日朝刊3面 原子力安全研究協会の松浦洋次郎理事長(元原子力安全委員長)は「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいといった暗黙の量じゃいがあった」 わああ!仰天した!これじゃあ「最悪の事態を想定していた」ことにならない。「想定外」じゃなくて「不想定」だったのか

2011-03-31 15:52:26
烏賀陽 弘道 @hirougaya

冷却水循環の電源がすべてダウンしてしまうような、考えたくない事態は「起こるわけない」と思考の外に出してしまったということだ。思考の外に出してしまえば、いかに鋭敏な知性、いかに博学な学徒が集まっても無駄だ。

2011-03-31 15:54:05
烏賀陽 弘道 @hirougaya

つまり、彼らは日本の最優秀のベスト&ブライテストだったのに、思考の前提そのものが間違っていて、誰も気づかない、異議を唱えないというベトナム戦争の時のアメリカみたいな誤謬を犯したということだ。

2011-03-31 15:55:12
烏賀陽 弘道 @hirougaya

考えたくない最悪の事態を「ないことにする」ような危険な思考を英語でhappy assumption(おめでたい仮定)という。原発事故の原因はまさに多数がよってたかってハッピー・ アサンプションを繰り返していたということだ。

2011-03-31 15:56:59
烏賀陽 弘道 @hirougaya

これを防ぐのは、情報の共有しかない。つまり彼らの議論を全部公開して、誰でも見ることができるようにする。多数が検証可能な状態にしておく。「あれ?なんで全電源喪失は想定されてないの?」と誰かが気づけるようにしておく。

2011-03-31 15:58:43
烏賀陽 弘道 @hirougaya

「読み落としたかな?」と問い合わできるようにしておく。「すみません、議事録を見ると、原子力安全委員会では全電源がダウンする事態が検討されてないようなんですが」「あ、それはですね、いわゆる、まあ、そこまでは考えなくてもいいということで了解いただいております」「えっ!?」

2011-03-31 16:00:00
烏賀陽 弘道 @hirougaya

こういう誰かが気づいて騒ぐ、というプロセスが大事です。

2011-03-31 16:00:15
烏賀陽 弘道 @hirougaya

それには議事録の公開(インターネット、PDFなど)がかかせません。記者が取材して報道してもいいのですが「全電源喪失が検討されてないじゃないか」と疑問を発せる記者は少数でしょう。また全文公開でないと意味がない。

2011-03-31 16:01:37
烏賀陽 弘道 @hirougaya

また、「公式の委員会議論」以外に「公開されないウラ議論」みたいなものは一切認めないことにしなくてはなりません。つまり「公開の義務づけ」です。

2011-03-31 16:02:29
烏賀陽 弘道 @hirougaya

こういった「集合知の検討の場を設けること」こそが「情報公開」の真髄に他なりません。「委員会をマスコミに見せているからいいんだ」という形式で逃げては困る。

2011-03-31 16:03:28
烏賀陽 弘道 @hirougaya

こうした公開の議論はことごとくセレモニー化して、官僚がセットし、台本みたいな言葉をやりとりし、実質議論は非公開のウラでやるというのがこれまでの「〜審議会」「〜検討委員会」などの「反情報公開」の手法でした。

2011-03-31 16:05:49
烏賀陽 弘道 @hirougaya

報道も「紙面は限られているから」という方便でこうした反「情報公開」に間接的に加担しています。インターネットを使えば紙面は無限にあるのですが「取材する記者が足りないから」「時間が」「予算が」という「人的資源の有限性」を方便に逃げてきました。

2011-03-31 16:07:00
烏賀陽 弘道 @hirougaya

記者クラブという情報公開へのアクセスを独占している人たちが、こうした消極的な情報非公開への加担をするので、そこで「集合知の検討の場」は閉ざされてしまいます。

2011-03-31 16:07:48
烏賀陽 弘道 @hirougaya

民主主義とは、完成した理想や努力目標ではなく、プロセス、過程、手続きなのです。こうした「途中経過において集合知が参加する」ということこそが、民主主義に他なりません。「政治家や役人が決めて。結果だけ知らせて」という発想は非民主主義的です。

2011-03-31 16:09:18
烏賀陽 弘道 @hirougaya

すなわち、民主主義は面倒くさく、手間がかかり、非効率的です。それを誤解している人が多い。

2011-03-31 16:09:59
烏賀陽 弘道 @hirougaya

日本人の好きな「効率優先」「面倒くさいのはいや」主義は、実は民主主義とは逆のベクトルを持っています。

2011-03-31 16:13:44
烏賀陽 弘道 @hirougaya

これに「すべての労働には経済的対価がなければならない」という発想が加わると、実は民主主義には危険です。そうした「政策決定過程」に参加する市民の大半には対価が支払われないからです。

2011-03-31 16:15:33
烏賀陽 弘道 @hirougaya

面倒くさいこと、不便なこと、ただ働きを排除しようという原理を持つ「無痛文明」(森岡正博氏)は、民主主義と逆のベクトルを内包しています。

2011-03-31 16:17:07
烏賀陽 弘道 @hirougaya

http://www.nsc.go.jp/ 原子力安全委員会って独立行政委員会のはずなのに、URLがgo.jp(政府機関)ってあたりですでにずっこけてますなあ。笑

2011-03-31 16:19:04
烏賀陽 弘道 @hirougaya

日本人が苦手な発想に「議論参加者が既知としている前提を疑う」という所作があります。「全員が間違っているんじゃないの?」という問いかけを発することです。

2011-03-31 16:23:58
烏賀陽 弘道 @hirougaya

原子力安全委員長なんて最高の知性、最高の権力者がそれに陥ったわけですから、どこでも「議論の参加者全員が間違っている」ことが頻発している。ところが「全員間違っているんじゃないの」と問いかけると、「場が読めない」「空気が読めない」「場が凍る」などと非難されます。

2011-03-31 16:26:43
烏賀陽 弘道 @hirougaya

素朴な多数決信仰というのは「多数が信じていることは正しい」という発想です。が、実際には100万人が信じていたこと(全電源喪失、巨大津波は来ない、など)が誤りで、1人が正しかったということがありえる。

2011-03-31 16:28:01
烏賀陽 弘道 @hirougaya

つまり「信じている主体の数」は説の真実性を表示しない。「数が多いことは真実とは関係ない」のです。背後にあるもうひとつの誤解は「目で見る客観的指標としての数字」への盲目的信仰です。

2011-03-31 16:29:12
烏賀陽 弘道 @hirougaya

つまり「数ではなく中身」=「数から質へ」に転換しなくてはいなない。裏返せば"quality before quantity"(数より質)実に素朴な原則が忘られていた、という結論に帰結するのです。我々は実に愚かでした。

2011-03-31 16:30:50