【後輩くん】

りえこ @eighter_rieko83

【後輩くん】 1 深夜０時、親友からのLINEはありがたいことに毎年欠かさず来る。 “お誕生日おめでとう” ありがとう、うれしいって返して眠りにつく。 そして朝、今日もきっといつも通りの１日になる。

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2 アラフォーともなると、別にお祝いしてもらわなくても、特に悲しい寂しいこともなくて…逆にそれが悲しいのか…。 いつものように出勤。 今日はまた特別寒い。 そういえば天気予報雪マークついてたし…。 お母さんが言ってたな、あたしが生まれた時も雪が降ってたよって。

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3 「先輩、おはようございます。」 『あ…安田くん、おはよう。』 会社が見える頃追いついてきた後輩くんは、マフラーして、両手をポッケに突っ込んで寒そうに顔をしかめてる。 「めっちゃ寒くないですか？」 『寒いねー、ホントに！』 でもアナタのおかげで今体温が上がりましたよ？

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4 なーんて絶対に言えないけど。 ステキな片思いってやつですよ！(古) どーこーなろうって思ってないけど、こうやって普通に話せるのが小さな楽しみってゆーか。 それくらいはいいじゃん！ 「昨日俺また怒られたん、聞いてましたぁ？」 『あんなの気にしない！気にしない！完全言いがかりだし！』

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5 「ですよねー？自分が言うたくせに…都合悪いことすーぐ忘れるんやから…。」 『ふふ、頑張ってんの、みんな分かってるよ、あの人以外は！ねっ？』 がんばれ、安田くん！ なーんてね(笑) 「あっ先輩、この前頼んだ資料なんすけど…、」 『わっ！ごめん！今日やるから！』

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6 「あっ、いやっ！先輩も忙しいでしょ？もしアレやったら俺自分で…」 『大丈夫！今日時間あるから！』 せっかく頼んでくれたんだから、やるよ～ぅ♡ 「ホンマですかぁ？無理せんと…」 『ホントに大丈夫！！だいじょーぶっ♪』

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7 「…ほんなら…お願いします…あっでも、今日じゃなくても全然大丈夫ですから！来週…真ん中くらい迄にできれば…助かります！」 『うん、わかった～！』 今日絶対仕上げるよ！ 安田くんの為ならがんばれる！って、これ声に出したら完全に引かれるな(笑) よし、今日は特別がんばろう！(笑)

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8 安田くんの笑顔見てー、定時で帰ってー、ビール飲んでー、好きなアイドルのDVDでも見て寝よ(笑) 「先輩、ホンマに今日やなくていいですからね？残業とかホンマせんでくださいね？」 『だーいじょーぶだってば！(笑)』 笑いながら何気に肩を叩く。 よっしゃ、お触りゲット(笑)

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9 機嫌よ～く朝のお掃除をこなし、自分のデスクに着くと、社長が歩み寄ってくる…イヤな予感…。 「これ急ぎで！よろしく！」 さ、い、あ、くー！！(泣) って、泣いてても仕方がない！ 『わかりました！』 愛想笑いをお見舞いしてあげたら、ふと社長の奥に見えた安田くんと目が合った。

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10 うんうん、それそれ、って身振り手振り…これ先にしろってことね…。 わかってるよーう！(泣) もーう！ コレもアレもやってやるよ！！ と、今日に限っては、お昼ご飯も適当に済ませて、お昼寝も諦めて、いつになく仕事を頑張って………できた！！ って、定時30分前じゃねーか！(泣)

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11 うっ…でも約束したもん。 安田くんと約束したもん！ よし、がんばれあたし！ 気合いを入れて安田くんのメモ入り書類を見る…なんだよ、字もかわいーな！← 「先輩？」 『へっ？！』 横でした声の主を見上げる。 安田くんが心配そうに見てる。 うわ♪ そのお顔も…って、癒されてる場合か！

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12 「朝も言いましたけど…ホンマに今日やなくていいんすからね？」 『あっ、はは、分かってるって！』 いや、もう、絶対仕上げるつもりだけど。 「ホンマっすか？」 疑いの眼差し…。 『ほんまほんま！時間まで！』 あと30分あるから～って…時計を指差した。 「…先輩今日の予定は？」

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13 『えーっと…、』 書類仕上げて、ビールとおつまみ買って帰って、アイドルのDVDを見ます♡ 『定時で真っ直ぐ帰りまーす♪』 どちらにせよ、あたしってホントに色気ない…(悲) 「もぉ…残業とか…ホンマ怒りますからね？」 安田くんになら怒られても…、 『大丈夫でーす！残業しませーん！』

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14 疑いの眼差しは…なんかあまり変わったように感じなかったけど、安田くんは自分の席へ戻って行った。 そして、その時間がくる…。 「せんぱーい…。」 『こっ、ここまで！ほら、今キリが悪いとこ！ねっ？いーから、安田くんは帰りなさい！』 帰り支度を整えた安田くんを軽く押しのける。

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15 本日２度目のお触り～♪← 「おっ！安田今日はデートか？帰り支度早いじゃん。」 同期の井原…もぉ、邪魔するなよ～！ 「ちっ、ちゃいますよ！普通に帰ります！」 って、なんか照れてる感…やっぱ彼女いんのかぁ…がっかり…。 井原！余計なことを！ 安田くんにわからないようにキッと睨む。

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16 「よし、帰れ帰れ～！コイツは俺が見張るから！」 って、なんでおまえだよっ、と心でツッコミつつ…。 『ホントに！お疲れっ！』 「………お疲れさまです…。」 渋々帰っていく安田くん…。 あーちがう…あたしはアナタの笑顔を見てから帰りたかった…。 泣きそうになりつつ見送る。

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17 「健気だねぇ～っ…！」 井原は腕を組んでうんうんと頷く。 『何がよ…！』 「いやいや…俺もねー、付き合ってあげたいのは山々なんだけどー、今日はちょっとしたアニバーサリーでしてねぇ…ほら、ウチでかわいーい嫁子供が待ってるわけよ。」 『帰れ。今すぐ帰れ。』

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18 「いやホント。申し訳ない！」 『思ってないでしょ。』 こんな同期だけど、これはこれでいい関係だと思っている。 「じゃっ、そんなわけで！」 『あーはいはい、帰れ帰れ。』 「おっしゃ、お疲れっ！」 残業常連の井原が帰るとなると…このフロアあたし１人かぁ…。 「程々にしろよー！」

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19 捨て台詞を吐いて、ドアが閉められた。 まぁアイツなりのエールなのは分かってる。 よし！ 早く仕上げて帰ろう！ 安田くんの為にっ！ 彼女いるけど(泣) まぁしょうがないかー…あれだけのイケメンだもんねー…。 てか、コレ意外と時間かかるかなぁ…？ あ、ラジオのこの曲懐かし～！

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20 そういえばこの前成人式だった子、このアーティスト知らないって言ってたなー…あたしオバサンだなー。 あー、今日またひとつオバサンになったのかー(悲) バンッ！！ 勢いよく開いたドアの音でビクッと動きを止めた。 恐る恐るドアの方を向くと…。 『…安田くん…。』

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21 少し息を弾ませてる…走った…？ 「…おったぁ………。」 『？？』 はぁ～っと大きく一息吐いて、その場で息を整える様子。 黙って見てると、ちょっとコッチを睨んで近付いてくる…。 う…怒ってる…。 完全に横まで来た彼は、自分の書類とあたしが作ってる資料を見比べて言った。

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22 「“キリがいいとこまで”やなかったんすか…。」 『そ…そーだよ…？まだちょっと…キリが悪い…かなぁ～…？』 冗談めかして言ってみる…。 「もぉ～………、」 なんだか肩を落とす安田くん。 『…？？』

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23 「しばらく待っても出てこんしぃ…、いつも最後の井原さんも帰ってくしぃ…見逃したかー思いましたよぉ…。」 『見逃した…？？』 「すれ違ったかて…。」 『すれ違った…？？』 「やからー！待ってたのに、俺が見てへん隙に帰ってもーたかって思ったのー！」 『はぁ…待ってた……？？』

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24 ちょおっと言ってる意味が…。 「残業せーへん、真っ直ぐ帰るー言うたから！待っとったんですー！メシ誘お思てー！！」 はぁっ？！ 『ちょ、ちょ、ちょ…待ってたって…あたしを…っ？！』 「他におらんでしょーよ！」 『いや、だって、いや、待ってっ、』 おーう、パニーック…！！

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25 「今日！！お誕生日でしょ？！」 『えっ………！』 なんで知って…、 「えっ！！違いましたっ？！えっっっ！？」 『あっ、いやっ、そ、そうだけど…、なんで…知ってん…の…？』 「それはっ………結構前…みんなで占いの話になってー…星座…誕生日の話になって……そん時に…。」