フォビドゥンフォレスト6話「フォビドゥンフレイム」#5「リリア・リース」

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「調達の手段は分かりませんが、対策だはクレーバーン博士に依頼済みです。昨夜の戦いで新たなパラサイトのサンプルを入手できたので、数日中には用意が出来るだろう、とのことです」 「博士には苦労を掛けちまうな。しかしサンプルか……春坊のやつだけじゃ足りなかったのか?」 46

2018-02-07 02:10:41
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衛守と雷牙の会話に紹子が補足を入れる。 「それについては、パラサイトは寄生している妖怪が死ぬとすぐに溶けてしまうそうです。片桐くんの対応は素早かったですが、妖怪が既に死に始めていたので、ウチの研究所についた時点でパラサイトがほぼ瀕死だったようですね」 47

2018-02-07 02:14:25
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「私たちの時は、仲間に氷使いが妖怪ごと凍らせたら、後からパラサイト?……が見つかったみたいですね」 「その氷使いさんに感謝だな。お陰でこっちの敵の正体が分かった訳だ。お礼を言っといてくれ」 「ウチのハルの奴の手柄も忘れんなよ」 「分かってるよ」 桐葉の言葉に雷牙は苦笑する。 48

2018-02-07 02:19:50
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昨夜の時点では、パラサイトの出自こそ不明だったものの、宿主と共に死ぬ習性は分かっていた。姑獲蝶事件の際は緊急ゆえに間に合わなかったが、今回は交戦中に数体の敵の凍結や麻酔を試みた結果、複数の生きたパラサイトが手に入った。これにより研究はたった一日で大きく前進したのだ。 49

2018-02-07 02:22:51
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「対策が進んでるってことは……」 「ええ」 ここで会議中は口を挟まずにいた篠森が立ち上がり、リリアに替わって前に出た。 「それが済み次第、直ちに森の奥の敵を捕獲・殲滅します。皆さんは警戒態勢を一段上げた状態で待機して貰いますが、基本的には通常シフトでの対応となります」 50

2018-02-07 02:27:02
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「ですので完全オフの方は、休むようにして下さい。悪意ある余所者ごときに我々の日常を崩される訳にはいきません」 篠森の言葉に隊長たちは、少し笑いながらも真剣な表情で頷いた。 「それで、子どもたちはどうする?」 51

2018-02-07 02:30:20
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今の風科の戦力の精鋭は若者が中心だ。S級を含む強敵に対し、一人も出撃させない訳にはいかない。しかも敵が森の奥にいる以上、瘴気耐性も重要となる訳だが、子供たちはその耐性も高い。かといって人を殺す可能性のある戦場に出したくはないのも本当だ。 「私たちは……私と涼平は参加します」 52

2018-02-07 20:35:23
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佐祐里が宣言する。隣にいる涼平も頷く。彼は風科最強のSランク魔術師である。敵にSランクが二人いる以上、彼を出さない手はない。 「出来れば、他の皆は出したくないところなんですが……」 佐祐里はそう願いつつも、それが不可能に近いことは分かっていた。 53

2018-02-07 20:48:33
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敵幹部の能力は厄介なものが多い。対抗手段として最低数人分の若手の能力は必須だろう。若手を守るために大人に無理をさせて、死傷者を出しては元も子もない。 「そうだな。出来るだけ最小の動員で済むように作戦を練らねぇとな」 雷牙が重々しく言うと、周囲の者たちも頷いた。 54

2018-02-07 20:56:34
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「今回は風見市同盟の方々にも動員を掛けられますが……」 衛守はそこで言葉を切った。ウォーロックの相手なら、むしろ風科周囲の村井地区や高月地区のほうが妖怪担当の風科よりも手慣れてはいる。しかし彼らの状況も風科と似たようなものである。つまり能力持ちは若手ばかりなのだ。 55

2018-02-07 21:02:37
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身内の子供たちを戦いから遠ざけようとして、他所の子供を危険に晒しては意味がない。とはいえ周辺の組織とは一蓮托生である。敵の最終的な意図は分からないが、もし風科僚勇会が壊滅でもすればその役目は周辺の組織が替わることになる。禁忌の森は誰かが見張り続けねばならないのだから。 56

2018-02-07 21:10:49
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「ともかく、風科とか村井とか考えずに平等にメンバーを選抜するしかねぇよな。特に子供らは出来るだけ最少人数でな」 「あのぅ」 結論がまとまりかけたところで、椅子に座っていたリリアが手を挙げた。 「私出ましょうか?」 「それは……」 雷牙を始め、一同は篠森と衛守を見た。 57

2018-02-07 21:19:51
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確かに今回の敵と交戦経験のある彼女がいれば、大いに助かる。皆考えなかったわけではない。しかし自らハンターをやっているとはいえ、僚勇会にとっては彼女もまた「他所の子供」である。対価は払うにしても命を懸けさせるのはやはり気が引けた。だからこそ彼らから依頼はしなかったのだ。 58

2018-02-07 21:33:14
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……もっとも今回、「殴り込み」の過程で既に何人も殺害済みなのだが、僚勇会が依頼したのはあくまで調査であり、そこは彼らの責の及ぶところではないだろう。 「一応、ついでに観光するつもり水曜まで空けてますけど、どうしますか?」 篠森は少し考えてから衛守と顔を見合わせ、口を開いた。 59

2018-02-07 21:41:22
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「リリアさん」 「はい」 「貴方は彼らと戦いたいと思っていますか?」 「いえ?どちらでも」 「では、特別に再戦や決着は望んでいないのですね?」 「決着?いえ、特に興味はないです」 リリアがあっさりとそう言ったことを桐葉は意外に思った。彼女は戦闘を楽しむタイプに見えたからだ。 60

2018-02-07 22:01:54
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実際、先程半年前の戦いについて語った時も、強敵との戦いの話の時は楽しげだった。不思議に思い、手を挙げて聞いてみた。 「なあ。あんた、てっきりそういうの執着するタイプかと思ったけど、違うのか?」 「あらどうも、お姉さま」 リリアは嬉しそうに微笑んだ。 61

2018-02-07 22:12:32
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「でも純粋に強かった相手はもう倒しましたから、残りの人たちには興味はないですね」 一転して表情を曇らせた。先程も今残っているメンツに関しては『殺しにくくて面倒なのが残った』とうんざりしてはいた。弱いのに倒しにくい相手が面倒、というのは桐葉にも理解は出来た。 62

2018-02-07 22:17:21
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「そういうことであれば、今回は我々だけで戦います」 「あら、別に大丈夫ですよ?費用は少しオマケしてもいいですし」 「お気遣いありがとうございます。ですが、出来る限りは我々自身の手で戦いたいのです。例え、我々の子供を戦わせることになったとしても」 63

2018-02-07 22:21:48
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「そうですか。一応こちらでご用意頂いた宿にいますので、必要になったら教えて下さい。あまり遠出しないように観光でもしていきますから」 「ふむ。どこかお目当ての場所は?」 衛守が訪ねた。 「考え中ですね、成田からここまで興味のあるところは調査の合間に回って来ましたので」 64

2018-02-07 22:27:46
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「でしたら、交代で誰か案内にお付けしますので我々の風科を観ていかれてはどうでしょうか?冬場で見るところは雪景色くらいでしょうが」 「むぅ」 「それにお暇があれば我々の訓練施設もご案内できますよ」 「それ、私も使っていいですか!?」 「ええ、勿論です」 「では、そうさせて下さい…!」 65

2018-02-07 22:34:35
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23時50分。会議は終わり、リリアも雷牙に伴われ彼の宿屋へと向かった。他の者も帰り始めている。そんな中、前の椅子に座った篠森と衛守は小声で話していた。 「衛守くん、さっきのは…」 「彼女を前線には出さないのは我々の選択としては順当でしょう。ですが敵はそんなことは知りません」 66

2018-02-07 22:41:55
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「悪どくないかい?」 篠森は呆れ気味に溜息を吐いた。 「でも『拘束料』はお支払していますよ」 「『囮代』か『用心棒代』を別に払うべきじゃないかね?」 森の奥に篭もるケイローンの弓も、風科を偵察くらいはするだろう。そこで彼らを追い込んだリリアを見つけたらどう思うか。 67

2018-02-07 22:47:47
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普通は自分たちを追ってきたか、僚勇会が呼んだと思うだろう。そして当然最大限に警戒する。恐らくは守りを固めて森に篭もるか、先手必勝とばかりに彼女を狙うかのどちらかになる。まさか実際は『偶然事前に依頼していて、討伐作戦には参加しない』などと想像するほうがどうかしている。 68

2018-02-07 22:50:46
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いずれにせよ、リリアに滞在していて貰うだけで他の者、特に一般人への危険を減らせる上に、博士の『対策』が出来るまでの時間を稼げる公算も高い。 「そこはそれ、宿代はウチ持ちですし、観光費用も融通するということで……」 「悪いよ、悪い人だよ君はぁ……」 69

2018-02-07 22:53:57