部族化シリーズ 2話~宇宙から来たシーメールはかわいくて強いという話~

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帽子男 @alkali_acid

「子供を連れて森に帰れ」 スンシンが吠える。氏の長は振り返る。 「お前を殺してからだ」 「穏便に済まそう。ここで血を流す意味はない。僕等には居住区。君等には森がある。スンシンの言う通り、お別れしよう」 「だめだ。この裏切者よりまず先に貴様を始末する」 親方は苦笑する。

2018-02-14 01:16:38
帽子男 @alkali_acid

「まるで旧人じゃないか。部族らしくないぞ」 「そうかもしれん」 氏の長は認めた。 「だとすればユミのせいだろう。だがその部分が告げる。お前は生かしておいてはならんとな。抵抗せねば巣の残りは生かしておいてやる」 「やめよう。本当に無意味だ。僕は君等を傷つけるつもりはないし」

2018-02-14 01:18:24
帽子男 @alkali_acid

部族の槍が親方に向かって放たれる。 ロボビームがそれを一瞬で蒸発させる。 はじめて氏の長の無表情にかすかな驚きの色が浮かぶ。 狙撃点とおぼしき場所を一瞥する。 「…はあ…」 ヒゲ男は溜息。

2018-02-14 01:19:51
帽子男 @alkali_acid

「何人送った?」 「何?」 「狙撃点を抑えにいった別動隊だよ。三人?君は自信過剰だからそのくらいだろうな。マオパンダは容赦を知らない…それに」 離れたところでスンシンが嘲るように笑った。 「部族の肉を食うぞ」 氏の長は怒りの色を浮かべる。 「貴様は自力では何もできぬ弱虫だ。旧人」

2018-02-14 01:22:23
帽子男 @alkali_acid

「部族の裏切者や、大陸の毛むくじゃらに守ってもらって、勝ったつもりか」 「勝ち負けじゃない。そもそも新人と旧人じゃ魚と海藻みたいなものだ。競う意味がない」 氏の長がねめつける。 「ユミが選んだののは俺だ…俺達の氏だ」 「知ってる」 親方は肩を竦める。 「子供等を無事連れ帰りなよ」

2018-02-14 01:24:57
帽子男 @alkali_acid

不承不承、退却の合図をする氏の長。ただし捨て台詞つき。 「忘れるな。部族がその気になれば、旧人の巣を滅ぼすのはたやすい」 ヒゲ男はわりとどうでもよさそう。 「あっそう…」 みたいな顔。スンシンはしかしおさまらないようす。似たもの同士か。 「親方がその気になれば森を焼くのも容易い」

2018-02-14 01:26:50
帽子男 @alkali_acid

やめろっちゅーに、という表情のヒゲ男だが、氏の長はまたきっとなる。 「裏切りものの虚勢か」 「お前は親方が海のむこうで何をしてきたか知らないだろう。お前は何も知らない!森で獣と戯れていただけだ…親方は」 「どうどう。おしゃべりは終了だ。僕等旧人みたいなまねは十分だろ」

2018-02-14 01:28:46
帽子男 @alkali_acid

部族が森へ去ると、親方はほっと息をついた。 「ただでさえ残り少ない寿命がまた縮んだよ」 「皆殺しにすればよかった」 「子供が見てるだろ。やめなさい」 「あいつらは親方をなめた!」 「いいんだよ別に…それより…ライライはほんとに食ったのかな」 「腕の一本二本ぐらいは」

2018-02-14 01:30:28
帽子男 @alkali_acid

ふーっとヒゲ男は肩を落とす。 「ま、しょうがないか…マオパンダだしな」 「革命に犠牲はつきもの、とか」 「はは」 高台から投光器の光。親方には見えないが助手は優れた視力で読み取ったようだ。

2018-02-14 01:32:01
帽子男 @alkali_acid

ロボの操縦席に戻って帰り支度。 「あ、隊長さん。お助け料はちゃーんと払って下さいよ。こっちは貧乏所帯でね」 「がらくたや!この!あつかましいやつめ!ええい!何でももってけどろぼうめ!」 「どろぼうはひどいな」 カイとシメが走って来る。 「親方!すげえ!」 「シメちゃんお腹減ったー」

2018-02-14 01:34:05
帽子男 @alkali_acid

短髪の子供は長髪の連れの首を抱きながらうめく。 「あー迷っちゃうな!あの双子もかっこよかったし!俺やっぱ部族に…でも親方やスンシンみたいな船乗りもいいなあ…」 「シメちゃんお腹へったー!」 親方は操縦席から身を乗り出す。 「二回目の昼飯といこう。防衛団のおごりでね!」

2018-02-14 01:36:25
帽子男 @alkali_acid

しばらくして、部族の集落。 お腹のぼってりした刺青の共有妻が、いつにもまして猛り狂った夫(の一人)にさんざん後ろの方とかをいたされて、堪忍してって感じになる。 「お前が、女に狩りなど、させるかだぞ…」 「ごめんなさ…ぁっ…ひっ…ぁぉっ♪」

2018-02-14 01:38:43
帽子男 @alkali_acid

ぐったりしていると、氏に加わったばかりの少年達が身を清めに来るが、しどけない妊婦の姿に興奮してかまたしばらくあれそれする。 やっと終わって、まあ一応きれいになったところへ双子の娘が来る。どっちも荒淫のあと。 「母上」 「母上ごめんなさい」 「二人ともほかの氏に…お仕置きされた?」

2018-02-14 01:40:43
帽子男 @alkali_acid

少女等がそろってうなずく。ちょっとだけうれしそうに。 妊婦は微笑む。 「そう…何か狩りで面白いものは見た?」 「不思議な力を使う…旧人のようで、旧人でないものを」 「獣をひるませる、私達にない術を操った」 共有妻の瞳がきらりと輝く。 「そう。詳しく、聴かせて」

2018-02-14 01:42:50
帽子男 @alkali_acid

かくして空から落ちてきた男の娘、じゃなくてシーメールことシメちゃんの存在は部族知るところとなるのだが。 シーメールって部族化するの?どう?する?新たなる謎がなんか持ち上がってきた感じであったという。

2018-02-14 01:44:25
男爵平野@書籍発売中 @baronhirano

死にかけのモトキくんに新婚旅行って言って心へし折るのはさすがに酷いと思った。

2018-02-14 20:51:30
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