「日本・ポーランド暗号協力に関する一考察」解説

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数学史研究者 @redqueenbee1

当地参謀本部の将校と仲良くなるだけで、いくらでも情報は得られたのである。ポーランドに赴く前、筆者はラトヴィアのリガに半年ばかりいたことがあるが、このラトヴィアをはじめエストニア、リトワニア、フィンランドといった国々は、等しくソ連を仮想敵としていた。…

2018-02-18 03:39:08
数学史研究者 @redqueenbee1

ポーランドにおいても同様で、ひとたび事あらば極東における日本軍は、大いなる牽制力をもつ力強い存在であったのである。それゆえ、へたな裏工作は無用であった。ポーランドにおける補佐官の仕事は何かと問われて、『その国の参謀将校と酒を飲むことと日本人旅行者の道案内である』…

2018-02-18 03:40:00
数学史研究者 @redqueenbee1

とよく冗談を言っていたが、あながち的はずれな返答ではなかった。とにかくポーランドという国は対ソ情報獲得の基地であり、したがってポーランド駐在武官は忙しかった」 このように、ポーランド陸軍武官室は対ソ情報活動を最優先し、ドイツ陸軍武官室も特に対ポーランド情報活動をしていない。

2018-02-18 03:40:41
数学史研究者 @redqueenbee1

、日本陸軍にとってポーランド情勢研究がはるか下位の扱いであったことが伺える。人員・予算の都合上、この優先順位は正当なものであったが、防諜の技巧に卓越したポーランド陸軍が、不都合な情報を日本陸軍側に隠蔽することを容易にした。結果、日本陸軍の暗号関係者は、

2018-02-18 03:41:32
数学史研究者 @redqueenbee1

ポーランド陸軍が意図的に提供しなかった暗号学的知見を独力で獲得することを余儀なくされた 日本陸軍は、1937年に無限乱数暗号の採用に踏み切ったが、同暗号は乱数表が再現できない限り解読不能なものである。しかるに、同暗号をドイツとソ連は1920年代に採用しており、…

2018-02-18 03:42:24
数学史研究者 @redqueenbee1

ポーランドが同暗号について十分な知見を持っていたとしても不可解ではないが、その知識が日本に伝来したという証言・記録は現時点で確認されていない。ポーランドはKowalewski来日以降、日本の暗号強化には事実上ノータッチであった。ポーランド陸軍は、20世紀暗号学に於ける近代数学の有効性に

2018-02-18 03:43:33
数学史研究者 @redqueenbee1

世界で最初に注目し、ポズナン大学数学科に暗号学講座を設置するなど世界に先駆けて数学者を動員して運用し、1932年頃にドイツのエニグマ暗号を解読することで先見性を見事に立証してみせた。事実上、ポーランド陸軍の暗号水準は世界のトップクラスであった。この事実も一切日本に伝わっていない。

2018-02-18 03:44:09
数学史研究者 @redqueenbee1

日本陸海軍が暗号学に数学者を実質的に動員したのはポーランドに遅れること20年後である。また、暗号解読における計算器械の有効性をも示したが、日本陸海軍が同様の見解に達するのは12年後のことになる。ポーランド陸軍が日本への暗号技術移転を制限した理由は容易に説明がつく。

2018-02-18 03:45:12
数学史研究者 @redqueenbee1

日本陸軍が暗号を強化した場合、触発されたソ連赤軍が暗号を強化する契機となり得る。これはポーランドの国益に合致しない。また、当時の対ソ暗号解読作業には高等数学や計算器械が必須ではなかったことから、ポーランドは日本にこの情報を提供する必然性がない(必然性があった仏にすらも隠蔽していた

2018-02-18 03:46:22
数学史研究者 @redqueenbee1

同時に、長期間に渡って日本側の暗号将校を受け入れ、予備役将校ミリッツェルを関東軍に残留させたポーランドの選択は、隠蔽情報の漏洩リスクを飛躍的に増大させる行為であった。日独接近が顕著となっていく1930年代に於いて、日本・ポーランド暗号協力の継続はポーランドにとって得るものは少なく、

2018-02-18 03:48:18
数学史研究者 @redqueenbee1

情報漏洩のリスクは大きい。それにも関わらず情報秘匿に対する負担をポーランドに甘受せしめた理由は、終局的にはポーランドの親日性という情緒的感情的側面に求めるのが妥当なのであろうか 結論 日本・ポーランド暗号協力は、日本陸軍のソ連暗号解読者にとって益するところの大きいものであった。

2018-02-18 03:48:59
数学史研究者 @redqueenbee1

ポーランドは日本側に対して重要な暗号技術を秘匿したが、日本側がその事実に気付いたという証拠は存在しない。この事実は、数学史的には「ある種の数学的知識の技術移転が日本に対して行なわれていなかった」というに過ぎないが、これが世界史に与えた影響は小さくなかった。 引用文献は論文参照の事

2018-02-18 03:49:37
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