「日本・ポーランド暗号協力に関する一考察」解説

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数学史研究者 @redqueenbee1

(電文から承知した)であると分かった。あちこち探して、ハルピン特務機関から借用した本が役立って解読に成功した。しかし台本は次々変更された。その都度、次の台本は何年版の何々と電文から判明したが、現物入手に苦労した。確か、『レーニン主義の諸問題』、『…における左翼小児病』というように

2018-02-18 02:53:22
数学史研究者 @redqueenbee1

変わった。『ザ・カフカズにおけるボルシェヴィキ組織の歴史に関する問題に寄せて』(Lavrentii Beriya著・1936年版)は入手できたが、版違いで役立たない。次は台本書名不明で一部解読できたものから文章を求めて、何ページの何行にこういう文章が載っていることはわかった。文意から電気に関する本と.

2018-02-18 02:54:26
数学史研究者 @redqueenbee1

判明したが、傍受電文の多数が解読不能であった。1941年11月、関東軍特種情報部から台本入手の任務を受けた私は、クーリエとしてクイブイシェフの日本大使館に出張し、1942年正月にクイブイシェフの書店でBeriyaの著書を購入した」 萩野証言終り

2018-02-18 02:55:07
数学史研究者 @redqueenbee1

参謀本部第二部ロシア班長・林三郎の証言要旨 「日独伊三国同盟が締結されたことを受け、当時ロンドンにあったポーランド参謀本部の引揚命令によって、暗号解読専門家以外のポーランド人将校三名は、在日ポーランド陸軍武官とともに中東方面に引揚げたが、暗号将校に対しては、…

2018-02-18 02:58:31
数学史研究者 @redqueenbee1

『貴官は現役将校ではないから、強いて引揚げる必要はなく、日本参謀本部と従来の情誼上、個人的意思に基づいて残留するというなら残留して差し支えない』と指示があり、残留することになった」 林証言終り 林は戦後は外務省嘱託となった

2018-02-18 02:59:32
数学史研究者 @redqueenbee1

樺太で対ソ暗号解読に従事した北部軍特種情報部長・太田軍蔵の証言要旨 「1941年2月17日、陸軍は、ソ連の国境警備隊暗号解読のための研究演習を行った。研究演習には、関東軍特種情報部員の大部分、参謀本部第二部第十八班、航空兵団特種情報部、北部軍特種情報部の主任者が参加した。

2018-02-18 03:00:23
数学史研究者 @redqueenbee1

この国境警備隊暗号は、コードに書籍を乱数台本とする長乱数を使用した5数字暗号で、相当強度があったが、フィンランドのミッチェルの協力で解読に至った。演習期間が比較的短く、完全に実用に供しえるまでにはならなかったが、かなりの情報をあげるまでに拡張できた」

2018-02-18 03:00:48
数学史研究者 @redqueenbee1

フィンランド国在勤帝国公使館付武官輔佐官・広瀬栄一の証言要旨 「1941年5月末、ヨーロッパに設置する傍受機関の状況を視察する第十八班長の林太平と第十八班付の私は、日本におけるソ連戦略暗号の研究成果と入手済みの英米両国の外交暗号を持ってドイツに向かった。…

2018-02-18 03:04:42
数学史研究者 @redqueenbee1

当時、関東軍の建物に亡命ポーランド陸軍の暗号将校数名を缶詰にして、関東軍特種情報部のエキスパートと、ソ連軍用5数字暗号を解読していた。00000から99999まで十万語の単語があるが、日本は100語程度解いていた」 広瀬証言終り 広瀬は自衛隊情報部門の責任者となり、宮永陸将補の上司になった

2018-02-18 03:05:57
数学史研究者 @redqueenbee1

ドイツ国在勤帝国大使館付陸軍武官輔佐官・西久の証言要旨 「1941年6月、ドイツに到着した林太平と駐ドイツ陸軍武官輔佐官の私は、ドイツ秘密情報機関の暗号解読課長と対ソ暗号研究を行った。日本が解読したソ連の5数字暗号を、ドイツが解読したものと比較したが…

2018-02-18 03:06:43
数学史研究者 @redqueenbee1

こんなに解けたか、とドイツ側に驚かれた。これにより、林はドイツで国賓扱いの待遇を受け、勲章を贈られた」 西証言終り 参謀本部第二部第十八班ドイツ班・赤羽龍夫の証言要旨 「私は、第十八班ソ連班の手伝いに回され、ロシア語の『共産党小史』を1頁ずつ分解し、手分けしてA=2、B=5、C=9という…

2018-02-18 03:07:50
数学史研究者 @redqueenbee1

ように全力をあげて数字に換えた。後に、アメリカがアラスカのコジャック基地から送る援ソ飛行機を、ソ連が1000機近く極東方面に配置していることを暗号解読から把握し、参謀総長から感状を受けた」 赤羽は戦後読売新聞記者となった

2018-02-18 03:08:31
数学史研究者 @redqueenbee1

スウェーデン国在勤帝国公使館付武官・小野寺信の証言要旨 「ポーランドが日本に宣戦布告した際、関東軍のポーランド暗号将校は、『日本とポーランドは戦争状態になったが、にも関わらず我々はこうしていいものであるかどうか決めてくれ』という電報を、駐スウェーデン陸軍武官の私を通じて…

2018-02-18 03:10:37
数学史研究者 @redqueenbee1

元ポーランド軍参謀将校Michal Rybikowskiに打電した。私は、Rybikowskiにロンドンの亡命ポーランド政府に電報を打たせた。折り返し、『差し支えないからそのままお使いください。日本とポーランドの関係は現在だけではなく、永久に続くであろうから。地理と歴史が続く限り、

2018-02-18 03:11:09
数学史研究者 @redqueenbee1

こういう対ソ協力は続くものというのが我々の見解である。どうぞ、今までの通りお使いください』と、ポーランド軍参謀総長から返電された。これを東京に知らせたら感激し、参謀本部の梅津美治郎は『ご好意を謝す』と返信してきた」

2018-02-18 03:11:24
数学史研究者 @redqueenbee1

関東軍特種情報部員・萩野健雄の証言要旨 「1945年8月、ソ連軍が満州に侵入し、新京にあった関東軍司令部は通化に移動することになった。ここでミリッツェル予備役大尉は、勧めを辞して新京に残り、その後は消息を絶った」

2018-02-18 03:12:09
数学史研究者 @redqueenbee1

私の考察はここからである ポーランドは、国益に合致する対ソ軍事交流では、日本に惜しみない協力をしていた。しかし、暗号技術面についてはKowalewski来日当時から、重要な情報を日本側に隠蔽したことが明らかになっている。

2018-02-18 03:16:30
数学史研究者 @redqueenbee1

1918年に独立を果したポーランド政府は、同年陸軍に『情報と防諜課』を設置した上、元技術者のプルコヴィニク・ジャン・コヴァレゥスキー(27歳)を責任者に任命した。1920年代には、参謀本部第二部に暗号解読課も設置されたが、コヴァレゥスキーは、著名なポーランド人数学者W・シェルピンスキーと…

2018-02-18 03:21:33
数学史研究者 @redqueenbee1

S・マズリキェヴィッツを採用するよう進言している。1931年には、ポーランド暗号解読課が改組され、ソ連暗号を暗号局三課が、ドイツ暗号を暗号局四課が担当することになった。1932年頃、BS4の数学者マリアン・レイェフスキらが、ドイツの初期型エニグマ暗号の解読に成功した。…

2018-02-18 03:22:07
数学史研究者 @redqueenbee1

エニグマ暗号解読には、ボンバなる計算器械の力が大きかった……というのが、昨今の戦史に描かれるポーランドの暗号技術水準である。実は、こんな話は日本側証言からは全く出てこない。どう敷衍しても、この情報は得られないのである。

2018-02-18 03:26:18
数学史研究者 @redqueenbee1

尚、ポーランド陸軍参謀本部情報部は、1926年にフランス陸軍情報部と独ソ情報について協力と成果を交換する秘密議定書を締結したが、ポーランドは1939年7月に至るまで上述の情報を提供していない。ポーランドは同盟国に対して意図的に上記の情報を隠蔽したことが分かる。

2018-02-18 03:28:10
数学史研究者 @redqueenbee1

この情報を諜報行動によって得られた可能性がある駐在武官は、あくまでソ連の軍事情報を収集するのが主任務であり、ポーランド軍自体の軍事情報は事実上全くの盲点であった。

2018-02-18 03:28:42
数学史研究者 @redqueenbee1

ドイツ国在勤帝国大使館付陸軍武官輔佐官・石井正美の証言要旨 「1933年の武官室の仕事といえば何か間諜的な仕事をやっているように考えるが、当時のドイツはヴェルサィユ条約でしばられた十万軍隊の時代であるから、軍備といっても問題にならず、また日本がドイツと戦うなどとは夢にも考えられない

2018-02-18 03:30:54
数学史研究者 @redqueenbee1

ことなどで軍事諜報など全く不必要なことだつたのである。なおソヴェットの軍事諜報は主としてポーランドに居る武官室の担任だつたからベルリン武官室としては、気持の上では至極安易なもので、武官の関心は主としてヨーロッパの一般情勢の観察に注がれていたのである」 石井証言終り

2018-02-18 03:31:08
数学史研究者 @redqueenbee1

ポーランド国在勤帝国公使館付武官輔佐官・松村知勝の証言 「ポーランドにおいては、裏工作などは遠慮していた。また独自の工作などしないほうが、むしろ確度の高い情報を得ることができた。ポーランド軍は山脇武官以来日本に対して絶対の信頼と親近感を抱いており、…」

2018-02-18 03:38:12