昔、ポーランドが日本陸軍に暗号解読技術を供与した顛末を論文にしたことがある。 ポーランドはドイツのエニグマ暗号を解読した事実を日本には伝えていない。当然と言えば当然だが、そこをスルーして「ポーランドは親日」だとか安易に語りたがる論者の粗雑さが我慢ならなかったのだ
2018-02-11 01:42:06ポーランドから関東軍に派遣されてソ連の満州侵攻まで居残ったポーランド陸軍予備役少尉ミリッチェルという人物は、ソ連暗号の乱数剥離技術のエキスパートで、もっと注目されてよい人物である。 だと言うのに、我々は彼のフルネームすら把握できていない・ 悲しいことだが。
2018-02-11 01:45:29このミリッチェル予備役少尉、ポーランド参謀本部が送り出した優秀なソ連暗号の専門家だったのだが、エニグマ暗号解読の事実を知っていて、尚且つ関東軍の同僚には内緒にしていたとすれば、それはドラマだと思う。 タイトルは沈黙だろうか。こういう小説があったら読みたいと思う
2018-02-11 01:48:21私の論文「日本・ポーランド暗号協力に関する一考察」だが、数年前に黒宮教授が読んでいた他に目立った反響がない。 そんなものかも知れない。
2018-02-11 01:53:41@taiaraky @ama2k46 日本の技術水準を敢えて低く誘導したポーランドの高度な判断は、親日という次元では語れません。そういう情緒とは別次元の冷徹な判断は、世界史的に意味ある結果を産みました。 こういった背景を顧みずに議論することが10年前にはよくあった訳です
2018-02-13 01:04:15@taiaraky @ama2k46 同時に過去のポーランド国民が比較的親日傾向にあったことは、私の閲覧した範囲の文献で確認しています。私が論文及び親ツイートで主張したのは、当時のポーランド参謀本部は、親日どころか日本を利用して対ソ戦略を有利にする打算的側面があるというものでした
2018-02-13 08:19:3311年前の論文「日本・ポーランド暗号協力に関する一考察」の解説をしてみる 目的:日本陸軍とポーランド陸軍の1920年代から1945年までの暗号協力関係の実態に関して、日本側の当事者証言を通じて概観する事を目的とする。
2018-02-18 02:11:43暗号学後進国であった日本では、ロシア・ドイツ・アメリカによって外交暗号が解読される被害が発生し、その報告は政府高官にも届いていた。しかし、欧米のような暗号学の蓄積がない日本では、この分野に高度な知識を持つ人材が当然存在せず、また海外から輸入することもなく…
2018-02-18 02:12:44大正末期まで暗号解読を行う政府機関が日本に設立されたことはなかった。 日本・ポーランド暗号協力に関しては、関東軍特種情報部長として対ソ暗号解読を指揮した大久保俊次郎の証言記録が第一級史料として挙げられる。大久保の証言要旨は以下の通り。 「1919年3月、陸軍将校の山脇正隆が駐在員として
2018-02-18 02:13:53ポーランドに赴任した。駐在中、ポーランドの暗号解読について種々ポーランド側から具体的に見聞した山脇は、“ソ連赤軍第一線高等司令部で暗号によって命令を下すと、それが聯隊を経て大隊の末端に伝わる頃には、ポーランド側は既に解読していたほどで、蘇波戦争時の北方戦線では有利に…
2018-02-18 02:14:46利用されていた”ことを知った。ポーランドの暗号解読主任者はJan Kowalewski陸軍歩兵大尉である。この件については後任の岡部直三郎大尉に申し送り、両人で協議した上で、Kowalewskiを日本に招聘することを計画し、Kowalewski本人にも意向を聞いた上で内定した。1922年に帰国した山脇は、…
2018-02-18 02:15:54Kowalewski招聘を参謀本部第二部長の伊丹松雄少将に具申したところ、伊丹は『第一等国の陸軍が、第三流国の軍から教えを受けるというのはどうであろうか、等と言って相当渋ったが、とにかく之を承諾』した。1923年1月22日から3月末まで、Kowalewski大尉は参謀本部構内で通信研究会なる講習を行い…
2018-02-18 02:17:57ソ連暗号・ドイツ暗号、各種の諜者用暗号について教授した。これまでコード暗号しか手掛けなかった陸軍は、乱数暗号にただただ驚くばかりであったという。この講習は、日本の暗号水準を一挙に高める役割を果たした。通信研究会以降、日本とポーランドは、対ソ暗号交流を開始した。
2018-02-18 02:18:50参謀本部は1925年に百武晴吉・工藤勝彦(後に戦死)、1929年に酒井直次(後に戦死)・大久保俊次郎、1935年に深井英一・桜井信太なる将校をポーランドに派遣し、対ソ無線諜報の実施要領を見学しソ連暗号解読の技能を錬磨させた」。 大久保証言終り 大久保は戦後、極東通信社勤務
2018-02-18 02:19:46日本陸軍の暗号学は、Kowalewski前とKowalewski後という歴史区分が可能なほどの一大飛躍を遂げ、当時のヨーロッパ列強の暗号学に近い水準に到達した。この頃、日本暗号の解読に従事していたアメリカ陸軍情報部第八課のHerbert Osborn Yardleyは以下のような回想を残している
2018-02-18 02:20:31「我々は日本がポーランド人の暗号専門家を雇って、日本の暗号組織を改正したことを知った。このポーランド人が編み出した新暗号を解読するために、我々は持てる全能力を傾注しなければならなかった。おかげで今の私たちは、日本の暗号解読に関しては、…
2018-02-18 02:21:10どのようなものでも読むことができる技術を身につけることができた。理論的には、日本の暗号は今や一層科学的に組み立てられるようになったが、実際上は最初の暗号よりもかえって解読が容易になった。もっとも、新暗号中のあるものは二万五千からのおびただしい『仮名』や、綴りや、…
2018-02-18 02:21:44単語を含むものであったりして、我々を悩ました例外もあるにはあった。日本が雇ったポーランド人技師は、陸軍暗号の専門家であったらしい。というのは日本大使館付陸軍武官の暗号が、突然、日本政府の他のどの部門の暗号よりも一番難解なものになったからであった」 Yardleyの証言終り
2018-02-18 02:22:28日本陸軍は、対ソ暗号解読面に於ける交流を契機に、ポーランドとのソ連軍事情報交換をも開始した。1930年代後半に参謀本部からポーランド駐在員として派遣された陸軍将校藤塚止戈夫の当時の記述を紹介する
2018-02-18 02:23:30「波蘭(ポーランド)の大黒柱『ピルツスキー』元帥は、日露戦争時代日本に来られ、此の期を利用して波蘭の独立を図られた方で、特に日本に対する理解が深い。されば此のピ元帥に率いられる波蘭陸軍が帝国に対し有する好感は非常なもので、恐らく世界中少なくも欧州に於て日本軍に好意を有するものは、…
2018-02-18 02:23:57波蘭陸軍の上に出づるものはないと云うても過言であるまい。我等は日波親善の必要こそ痛感すれ、波蘭と争う何等の原因を持たぬのであるから、将来益々両国陸軍延いては両国の親善を益々向上することを願望して止まぬ。又波蘭は国土も相当に広く、重要資源も豊富であって、…
2018-02-18 02:24:24近世国家として発達進歩するの資格を充分に備えて居るのみならず、現在に於ても厳然たる有力なる独立国であるから、我国民は世界に英米独仏『ソ』伊等の他に此の波蘭の存在することを忘れてはならぬのである」
2018-02-18 02:25:22藤塚中将のコメントは、日本のソ連軍事専門家・ソ連暗号専門家の共通認識でもあった。以下に関係者の証言を列挙する。 1925年5月にポーランド在勤帝国公使館付武官となった樋口季一郎の証言要旨 「ポーランドで、某国参謀本部第二部には特種の暗号課が存在し、…
2018-02-18 02:26:39ロシア無線その他の暗号を大変な努力で解読しつつあることを知った。この課には無線諜報班があり、ロシア無線電報を傍受して解読班に回すほか、自ら無線方向探知機を駆使してロシア陸海軍の移動まで探知していた。前任者がこの事を東京に報告したところ、参謀本部は興味を覚え、…
2018-02-18 02:31:41