【百合ゾン二次創作】ジャスト・キープ・オン・ウォーキング

はんちょ〜さんのフォロワー女体化百合小説の二次創作です
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Φ @ahiruchan_phi

◆◇◆◇◆日曜まよなか劇場◇◆◇◆◇

2018-04-01 01:36:14
Φ @ahiruchan_phi

【百合ゾン二次創作/アヒルチャンSSお礼】 (書きながら投稿するので時間がかかるかもしれない) (設定の齟齬などがあるかもしれない) (この日だから許してほしい) (タグは『#yurizon_phi』を使ってくれると嬉しい)

2018-04-01 01:38:47
Φ @ahiruchan_phi

【ジャスト・キープ・オン・ウォーキング】

2018-04-01 01:39:47
Φ @ahiruchan_phi

百合ゾン島。奇妙な住人たちが思い思いの生活を送るこの場所で、ひと際奇妙な存在が一人。それは黄色の肌を持ち、顔面に陥没痕めいた傷を持つ女性だ。「えーと、次は右だっけ、左だっけ」彼女は周囲をきょろきょろと見渡しながら、おぼつかない足取りで朝の通りを歩いていた。

2018-04-01 01:41:58
Φ @ahiruchan_phi

彼女の名はΦという。彼女がこの島に来た経緯は、彼女自身よく覚えていない。気づいた時には既に、この島の森の中で『暴走』状態にあった、らしい。もともと記憶力がいい性質ではないが、この件については特に記憶が曖昧だ。彼女は暴走を鎮められて以降、この島に居を構えることになった。

2018-04-01 01:46:39
Φ @ahiruchan_phi

「ああ、道、合ってた。よかった」彼女の正面に見えてきたのが、この島の住人となって以来彼女が毎日のように通っている喫茶店だ。屋号を『東風屋』。島の変人奇人に耳より情報、あとそこそこの量のクソリプが集まる胡乱の港だ。「こっちも忘れてない」ポケットの中の感触を確かめ、店の戸を叩いた。

2018-04-01 01:50:48
Φ @ahiruchan_phi

「いらっしゃいませー!」入店したΦを出迎えたのは紫の髪と羊めいた角が特徴的な店員だった。「あれ、Φさん」「おはようございます、うーるさん」Φはその店員・うーるに軽く会釈する。「やけに早いな。また冷奴?」店の奥から店主の声も聞こえる。「それも食べるんですけど、えーと……」

2018-04-01 01:55:33
Φ @ahiruchan_phi

Φは店内を眺めまわす。「チベスナさんやクロカゲさんは?」「居ますよ」「ここ」店の隅のテーブルで朝食を取っていたらしき二人の店員。黒髪のクロカゲと狐耳のチベスナ。彼女らもΦが日頃世話になっている馴染みの顔だ。「どうしました?」「今、皆さんちょっと時間ありますか」Φは店内の全員に問う。

2018-04-01 01:58:44
Φ @ahiruchan_phi

「時間ですか?」うーるが首をかしげる。他の店員たちも似た表情だ。「じゃん」そこでΦは手品の種明かしめいて勿体つけつつ、ポケットから小さな四角い物体を取り出した。「それって」「トイカメラっていうんでしたっけ?荷物整理してたら出てきて、折角なので皆で写真撮れたらなあって思いまして」

2018-04-01 02:02:39
Φ @ahiruchan_phi

「それでこんな朝早くに来たってわけ……ふぁあ」チベスナが輪をかけて眠そうな目をこする。「記憶はちゃんと記録しておかないと、何かの拍子で消えちゃいそうですし」Φはカメラを眼前に構えて見せる。「それに、この島に来てから、記念写真って撮ったことないんです。付き合ってもらえませんか?」

2018-04-01 02:06:16
Φ @ahiruchan_phi

「いいんじゃないのか?仕込みはアタシがやっておくし」店主のとーふやが豆腐パフェ用の豆腐アイスの仕込みをしながら声をかけた。「え?店主は?」クロカゲが問う。「アタシは……いい。写真写りとか、よくないし」とーふやは不自然に身体を捻って首元を隠すようにしながら返す。

2018-04-01 02:10:21
Φ @ahiruchan_phi

「あー、昨日激しくヤっちゃったから、痕残っちゃいましたァ?」「そうだよお前のせいで腫れてるから写真に残したくない……ってええええ」「チャオ」厨房に立つとーふやの横に、いつの間にか百足めいた特徴を備えた女性が現れていた。「お前どこから」「二階で、残り香で」「もういい、それ以上は」

2018-04-01 02:14:43
Φ @ahiruchan_phi

「いいじゃないですか。写っちゃいましょうよ、全部記録に残しちゃいましょうよォ」「ばっばか引っ張るなぁ!」百足美女は顔の真っ赤な店主の腰に絡んで厨房から引きずり出す。「またやってる」「もう公然の秘密でしょ、あの二人の関係」「あはは……」店員たちはその様子を微笑ましく見つめていた。

2018-04-01 02:18:48
Φ @ahiruchan_phi

「……?あの二人がどうしたんです?」この場ではΦだけが良くわからないといった表情をしていた。「あ、Φさんは夜にこっちの方、来ないですものね」「夜……?」すかさず百足女性のはんちょ~が「後で話します」と口をはさみ、即座に「話さなくていい!」と店主にはたかれた。

2018-04-01 02:23:09
Φ @ahiruchan_phi

とにかくとして。写真に写るのははんちょ~を含めたこの場にいる全員、総勢六人となった。Φは店のテーブルにカメラを置き、タイマーを準備する。他の五人は店の壁際に二列に並ぶ。「じゃ、タイマー10秒、レディ!スタートアップ!」Φがタイマーを作動させ、思い思いにポーズをとる五人のもとへ……

2018-04-01 02:26:04
Φ @ahiruchan_phi

「あっ」駆け寄ろうとしていたΦがよろけた。椅子の足に自分の足を引っかけたのだ。「あぶない!」前のめりに倒れそうになるΦが伸ばした手を、一番近くにいたうーるが咄嗟に掴んだ。Φは辛うじて転倒を免れる。その瞬間、カメラからの無慈悲な『はい、チーズ』音声が発され、撮影が行われた。

2018-04-01 02:28:54
Φ @ahiruchan_phi

「あ、ありがとうございます……」うーるに感謝を告げて、姿勢を正す。「大丈夫、ですか?」心配そうな目で見つめるうーるに、笑って返す。「コケるの、よくあることです。ダイジョブ」そしてカメラを見やる。「もう一回、いいですか……?」「今度は私が押します、シャッター」クロカゲが申し出た。

2018-04-01 02:31:30
Φ @ahiruchan_phi

こうして、些細なトラブルやイレギュラーこそあったが、東風屋の面々とΦの記念撮影会は無事、にぎやかに幕を閉じた。この後Φは客として、冷奴を山盛りのおろし生姜とともに食べて朝ごはんとし、写真の現像のために一旦店を去った。

2018-04-01 02:34:52
Φ @ahiruchan_phi

午後に再びΦは来店し、自分が転びかけている間抜けな写真と、撮りなおした分の写真、二種類を各人に配った。首元を隠そうとする店主、それを阻止しようとする百足女性。常時半目の狐耳少女に、失敗したΦと異なり問題なくポーズまで決めた黒髪の少女。その隣で笑う紫の毒の少女と、アヒルめいた黄色。

2018-04-01 02:37:27
Φ @ahiruchan_phi

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

2018-04-01 02:38:00
Φ @ahiruchan_phi

「……こんな色んな友達ができたよ、アヒルチャン」真夜中。ようやく帰宅したΦは、自室で独り言ちる。手元には自分用ではない写真が一組。それは、遠いどこかにいる友人への贈り物だ。アヒル柄のマグカップとともに写真を包み、リボンで縛る。「……さて、島の外への宅配って、誰に頼むんだったっけ」

2018-04-01 02:40:40
Φ @ahiruchan_phi

【ジャスト・キープ・オン・ウォーキング】終わり

2018-04-01 02:41:07