鋼の鎧、鋼の拳、鋼の意志

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次の駄提督回です。 今回は駄提督の失踪? そこから始まる事件の顛末を、どうぞ最後までお楽しみ下さい。 ご感想などは、竹村京さんor#落ちぬいタグへ。 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

ならば弱点を一撃必殺で仕留めるのが仕留めるのが最良の戦術だ。 「シィッ!」 鋭く息を吐き、ダッシュで距離を詰める。握り締めた鋼の拳を、矢の様に一直線に繰り出す。紛れもない一撃必殺の拳だ。命中すればコンクリートすら砕くだろう。#落ちぬい二次

2018-04-03 13:52:22
竹村京 @kyou_takemura

だが、その拳をBAX-4は最小限のステップで軽く躱してのけた。 「何だこいつ、速ぇえじゃねーか!」 『当たり前です、私が作ったBAX-4を兵頭が着ているのですよ』 「自慢してんじゃねっつの!」 勢いのまま距離を取ろうとする長瀬に、BAX-4が襲い掛かる。#落ちぬい二次

2018-04-03 13:54:46
竹村京 @kyou_takemura

「あぶねっ」 咄嗟に義腕を盾にする。 金属音と共に肩から背中まで重い衝撃が突き抜ける。それでも義腕が付いているのは、後ろに跳んで衝撃を逃がせた事以上に、この攻撃が小手調べに過ぎなかったからだろう。#落ちぬい二次

2018-04-03 13:56:54
竹村京 @kyou_takemura

「いってぇ……!」 『今ので兵頭は長瀬の実力を見極めたはずです。次はないと思ってください』 「言われなくても!」 充分に距離を取ってファイティングポーズを取った時には、既にBAX-4が身を屈めて突進して来ていた。#落ちぬい二次

2018-04-03 13:59:30
竹村京 @kyou_takemura

長瀬は敢えてBAX-4に密着し、巧みなステップワークとダッキングで紙一重で躱す。BAX-4は人の基準からすると相当な大柄であるため、懐に入り込んだ長瀬に有効打を与える事が出来ない。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:02:39
竹村京 @kyou_takemura

対する長瀬も回避が精一杯で、攻撃の方はほとんど打てない。何しろBAX-4の攻撃は一発でもまともに喰らえばそれでお終いなのだ。何発か軽いジャブ程度は打ててはいたが、あまりに軽すぎて装甲の前には無力だった。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:05:26
竹村京 @kyou_takemura

やはり弱点の腹に全力の一撃を叩き込まねばならないが、それを打たせる隙はBAX-4にはなかった。 「くっそ、硬すぎんだよ!」 ボクサーであった長瀬からすれば、喧嘩殺法の兵頭の攻撃は読みやすい。しかし、それだけだった。装甲とパワーは多少の技術の差など無意味にしてしまう。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:07:31
竹村京 @kyou_takemura

BAX-4の上体に集中して攻撃を躱す長瀬の視界の端で、あり得ない物があり得ない動きをした。足である。BAX-4の右足が高く上がったのだ。 ―――野郎、蹴りもアリかよ!#落ちぬい二次

2018-04-03 14:09:32
竹村京 @kyou_takemura

喧嘩殺法、つまり何でもありが兵頭の流儀だ。今まで拳だけで戦っていたからといって、足を使わない理由はない。 「やっべ!」#落ちぬい二次

2018-04-03 14:16:09
竹村京 @kyou_takemura

咄嗟にバックステップで蹴りの間合いから出る。しかし、BAX-4が浮かせた足は蹴りを放たずそのまま地面を踏みしめた。見上げると、BAX-4は左腕を大きく振りかぶっていた。 蹴りはフェイントで、本命は左ストレートだったのだ。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:22:53
竹村京 @kyou_takemura

「あ」 防御は間に合わない。回避も一歩足りない。どう動こうとBAX-4の攻撃が長瀬に命中する。胸に食らえば肋骨の粉砕と肺の破裂。腹ならいくつかの臓器が潰れ、頭なら脳が飛びだすだろう。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:28:54
竹村京 @kyou_takemura

奇妙に引き延ばされた時間の中で、長瀬は一秒後に自分の命を奪う鋼鉄の拳を凝視する。 ダチに殴り殺されるなんてみっともねえなあ――#落ちぬい二次

2018-04-03 14:31:24
竹村京 @kyou_takemura

その時、BAX-4が火花を上げて大きくよろめく。黒い拳は長瀬に命中することなく通り過ぎ、少し遅れて官舎の方から銃声が聞こえた。 「あ?」 長瀬は一瞬戸惑ったが、すぐに義手の攻撃を二発叩き込んで距離を取る。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:35:08
竹村京 @kyou_takemura

『どうしたモグリ。鈍ったか』 耳に嵌めたままのインカムから低い女の声が聞こえた。 「マドンナ?」 『まったく、司令もお前たちも、いつも自分だけで抱え込もうとする。それで死んだら元も子もないだろう』 「言ってくれる」#落ちぬい二次

2018-04-03 14:37:23
竹村京 @kyou_takemura

『どうやら間に合ったようだね、モグリ』 今度は藤郷の声だ。 「ああ、お前の差し金か」 『まさか。マドンナが自分で調べを付けたんですよ』 『北上が気を使って教えてくれてな。気を抜くなよ、馬鹿が来るぞ』 「アイアイ。サポート頼むぜ」#落ちぬい二次

2018-04-03 14:39:31
竹村京 @kyou_takemura

BAX-4が体勢を立て直し、長瀬に近付く。長瀬はそれに先んじて自らステップを刻んで接近し、軽くパンチを繰り出す。BAX-4が腕を振りかぶると、長瀬は素早く距離を取る。拳を繰り出す寸前、BAX-4が衝撃音とともに仰け反る。そこに義腕のパンチを叩き込む。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:41:47
竹村京 @kyou_takemura

『こちらは和光宿舎の屋上だ。射線を確保してくれ』 生身の腕は攻撃にも防御にも使えないので手数は通常のボクシングの半分以下に落ちるが、その分は長門の狙撃が補ってくれる。狙撃で牽制し、的確に暗色のマーキングで囲まれた各所のセンサー部を叩く。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:45:21
竹村京 @kyou_takemura

『ところでモグリよ』 「ん?」 『一応確認だが、弾は貫通してないな?』 「や、ヘコみとかあるけど貫通はしてねー、よっと!」 BAX-4の攻撃を躱しながら、長瀬が答える。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:49:50
竹村京 @kyou_takemura

『そうか。いや、人間を中に入れて銃弾をぶち込む試験はしていないそうなのでな、万一貫通したら目も当てられん』 『一応、64式での防弾試験はしたのですが、同じ弾とはいえ高初速のM24では試験していませんでしたので。計算上は貫通しないはずでしたが、大丈夫そうですね』#落ちぬい二次

2018-04-03 14:51:57
竹村京 @kyou_takemura

「…………」 長瀬は絶句する。もし貫通してしまえば、装甲の中で跳ね返った銃弾で中身の兵頭は即死していただろう。 『そら、一気に仕留めろ』 「アイアイ!」#落ちぬい二次

2018-04-03 14:54:51
竹村京 @kyou_takemura

気を取り直して攻勢に出る。片腕しか使えないボクサーを狙撃手が援護するという、有り得ない即製のコンビネーションであったが、奇跡的に噛み合っていた。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:57:01
竹村京 @kyou_takemura

陸軍で射撃の腕を鍛え、さらに艦娘になるに当たり数千メートルを超える大遠距離での砲撃を前提に改造を受けた長門にとって、千メートル以下の狙撃など赤子の手を捻るくらい簡単な物だった。#落ちぬい二次

2018-04-03 14:58:57
竹村京 @kyou_takemura

同様に世界レベルの技術を持ち、戦闘用義腕を装着した長瀬にとって、慣れてしまえばBAX-4など図体が大きくて硬いだけの兵頭に過ぎない。#落ちぬい二次

2018-04-03 15:01:20
竹村京 @kyou_takemura

それぞれ単独では決め手に欠けるが、この二人が組めばパワードスーツなど敵ではなかった。 『調子よく攻めているところ悪いけどね、モグリ。いくら外部センサーを叩いたところで致命打にはなりませんよ』#落ちぬい二次

2018-04-03 15:04:44
竹村京 @kyou_takemura

「わあってるっての。ジャブで削ってストレートでKOすんのがボクシングってもんよ!」 『それもそうだがな、こちらの弾にも限りがあるぞ。そろそろ決めろ』 「オッケーマドンナ、次でぶちのめす!」#落ちぬい二次

2018-04-03 15:06:48
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