燭へしが旅行するお話

Twitterで朝凪さん( @hamu2march )とリレー形式で行っているSSのまとめです。
6
前へ 1 2 ・・ 8 次へ
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx (宿……悩みすぎて、どこでもいいと返してしまったな……) そういえば、光忠はホテルと旅館の候補をそれぞれ挙げてくれたが、ホテルになった場合ベッドはどうするんだ?ツイン?まさか……ダブル? 色々と想像してしまって、枕に顔を押し付けて声なき声で叫んだ。眠気はしばらく訪れてくれなかった。→

2018-03-05 21:30:51
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 午前五時、僕は重い体を起こす。目尻の後ろの方がじくりと疼く。 昨日は嬉しさのあまり調子に乗ってしまった。 「んん……、」 その場で伸びをするとベッドのサイドテーブルに置いたスマホが目に入る。 (……あれから返信はあっただろうか) スマホへと手を伸ばしてメール受信の通知を確認する。

2018-03-06 21:58:16
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 恋人の名を通知欄から見つけると僕はベッドから飛び起きるようにして立ち上がった。向かうはリビング。昨晩床に置きっ放しであった鞄を拾い上げ、添付のExcelファイルを開くべくノートパソコンを立ち上げる。 「さて、長谷部くんの返事は、と」 しっかりと希望と案の書き込まれた資料に目を通す。

2018-03-06 21:59:15
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 僕の出した案に“こっちの方が良い”だとか一つひとつ丁寧に書き込まれた其れに一人頷きつつスクロールしていく。 (僕は此処まではタクシーを使ってしまおうと思ってたんだけど、長谷部くんはバスを使いたいんだねえ) 己の考えていたことと意見の違う箇所を眺めては旅行が楽しみだなと思う。 何にせよ

2018-03-06 21:59:51
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march これでお互いの譲れないところは出揃った訳だ。後は細かい所の擦り合わせをしたら良いだろう。僕は長谷部くんの作成したExcelをデスクトップへと保存し、空いた片手でメールを返信する。 『沢山考えてくれてありがとう。もし良かったら予約出来るところは今日予約してしまいたいんだけど、今夜の予定は

2018-03-06 22:00:26
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march どうかな?』 ──昨日の今日で早急だろうか。いや、駄目なら駄目だと長谷部くんなら言ってくれるだろう。折角長谷部くんが此処まで考えてくれたのだ、早く、会いたいと思ってしまう。 その他のメールを確認し、一通り返し終えた所で時計を見ると五時半を廻ったところだった。

2018-03-06 22:01:00
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march そろそろ支度をしなければ。 「……それにしても、送信時間が二時って、無茶し過ぎだよ、長谷部くん……」 長谷部くんからのメールの受信時間を見て僕は苦笑いを零した。→

2018-03-06 22:01:26
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 午前六時四十五分。枕から顔を上げないままスマホのアラームを止め、うぅぅ、と声を漏らす。潰されたみたいな声。 結局昨夜はあまり眠れなかった。のそのそと布団から這い出て、 恨めしげにスマホ画面の時計を睨む。すると、メッセージの受信通知に気がついた。 (光忠からの返信……っは、五時!?)

2018-03-08 22:32:25
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 早起きとは聞いていたが、こんなに早くから何をするんだ?朝活ってやつか?いやそれより、昨夜俺はあんな時間に返事をしてしまって迷惑だったのでは? 不安と、光忠のことを把握しきれていないことへの若干の悔しさを覚えつつ、手早く朝の支度を整える。家を出て、移動しながらメッセージを開いた。

2018-03-08 22:34:34
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx (早速今夜、相談と予約を?ふっ、せっかちめ) 俺も人のことは言えないが。ふあ、と小さく欠伸をして、まだあまり働いていない頭のまま了承の返信を打った。 「長谷部くん、お疲れ様!」 「ああ、お疲れ」 退勤後の打ち合わせ場所は、気楽なファストフード店を俺が選んだ。ここなら荷物も広げやすい。

2018-03-08 22:39:42
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 俺は席に着くなり、駅の本屋で買ったガイドブックを光忠に差し出した。光忠が目を見張る。 「すごい!用意周到だね!」 「まあな」 お前に負けたくないからとは言わなかった。早速、折り目をつけてあったページを開く。 「昨夜送った資料の通り、お前はこういう店が好きだと思ったんだが」 「いいね」

2018-03-08 22:41:54
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 光忠が記事をじっくり読み始める。よし、掴んだ。調子づいた俺は自分のプランを事細かに説明した。光忠が頷く。 「たくさん調べてくれたんだね。ありがとう。ところで、ひとつ心配なことがあるのだけど、いいかな?」 「なんだ?」 「このプランだと、旅行というより任務って感じじゃない?」 「は」

2018-03-08 22:49:55
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 「結構詰め込んでるから、日程をこなすことに気をとられちゃうかなって」 ……ああ……失敗だ。完璧なプランだと思ったのに。光忠を喜ばせられると。だめだった。 「……そうか……そうだな……」 「うん、だからさ」 光忠がくしゃりと笑う。 「疲れを癒すために、ちょっといい所に泊まらない?」→

2018-03-08 23:51:03
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 「疲れを癒す……」 「うん。長谷部くんが気に入ってくれると良いんだけど。……少し待っててくれるかな」 ポケットからスマホを取り出す。長谷部くんに画面を見せるようにしてブックマーク欄をスクロールし、旅行用のフォルダを開く。

2018-03-11 15:26:07
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 其処から二つ、候補のページを開いて画面を長谷部くんの方へと向ける。 一つは駅から近い、ブライダル施設も併設されている様なラグジュアリーなもの。紹介ページに添付された写真に写っているベッドはダブルベッドで、其処に泊まることを想像したのだろう、長谷部くんの頰はほんのりと赤い。

2018-03-11 15:27:03
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 「もう一つはこっち」 もう一つは、湖を一望できる和室のホテル。勿論、洋室もあるのだが、僕は和室を推したいと思う。長谷部くんが挙げてくれたルートからもとても近いからね、と選んだ理由も付け加えておく。 「……取り敢えず、僕からは此の二つを提案したいんだけど、どうかな?

2018-03-11 15:27:52
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 他に提案があれば聞くよ」 一番下まで下げたスクロールバーを上まで戻し、再び長谷部くんへと己のスマホを手渡す。 「借りても……?」 「どうぞ?」 僕からスマホを受け取るとファストフード店の固いソファに深く腰を掛け直す。先程提示したホームページを開き、二つを見比べる長谷部くんを

2018-03-11 15:28:16
壱子 @1co_xxxx

@hamu2march 眺めながら、僕は入店時に頼んだ少し冷めてしまった珈琲を啜った。→

2018-03-11 15:28:33
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 光忠のスマホを慎重に操作しながら、ぐるぐると思考を巡らす。ホテルと旅館。どちらを選ぶのが正解か。光忠はどちらに泊まりたいのか。 二つの写真を見比べ、そこにいる光忠の姿を思い描いてみる。光忠の華やかな雰囲気に合うのはホテルだが、四季折々の風情を愛でる感性を持つ光忠には旅館も似合う。

2018-03-12 20:18:42
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx (光忠はどちらでも良さそうだが……) なかなか決断できず光忠の様子を盗み見る。長い睫毛を伏せ、ゆったりと珈琲を啜る光忠。くそっ余裕そうな面をしやがって! (ここで俺が「ホテルのダブルにしよう」と言ったらこいつは珈琲を噴くんじゃないか?) そんな意地の悪いことも思いついたが、やめにした。

2018-03-12 20:20:02
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx そんな選択をしたら、結局俺自身が当日緊張で死ぬ羽目になるだろう。 (悩みすぎて知恵熱が出そうだ……ああもうどうとでもなれ!) 頭の中では捨て鉢に叫びながらも、表面上は平静を装い静かに息を吸った。 「俺が挙げたルートで巡るとするなら」 光忠が目線を上げる。 「旅館に泊まる方が効率が良い」

2018-03-12 20:21:19
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 目線をスマホに落としたまま早口に喋る。 「部屋は、せっかく旅館に泊まるなら和室がいいんじゃないか。俺もお前もベッドには苦労する体格だし、畳に布団の方が楽だろう」 「あはは、確かに」 朗らかな笑い声。同時に俺の手から光忠のスマホが抜き取られる。 「決まりだね。今、旅館を予約しちゃうね」

2018-03-12 20:23:11
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 光忠がどこか嬉しげに手続きをするのを、頬杖をついてぼうっと眺める。どうやら正解できた模様だ。 頭を使ったせいか、昨夜あまり眠れなかったせいか、とろりと瞼が落ちてきた。 「よし、予約完了!……長谷部くん?」 「ん……ああ」 「……ごめんね、疲れたよね。連日付き合ってくれてありがとう」

2018-03-12 20:33:29
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 光忠が俺に向けて腕を伸ばす。頬を預けた自分の手の甲に、光忠の手が重なった。じんわりと温かい。心地好い。 (……旅先では、いつもより長く手を繋げたらいいな) 不意にそんなことを思った。ぼっと頬が燃えた気がして慌てて姿勢を正す。 「もう帰ろうか。旅行までに体調を崩したら大変だ」 「ああ」

2018-03-12 20:46:36
朝凪 @hamu2march

@1co_xxxx 俺達はいつものように駅で別れた。 それからは慌ただしい日々となった。″旅行の前に新しい服がほしい″と光忠から買い物に誘われたり、″余すところなく旅を楽しむために歴史や地理の勉強も必要だ″と俺が旅のしおりを作ったり。二人ともなかなか浮かれていた。 そして、ついに旅行当日の朝が訪れた。→

2018-03-12 21:12:37
前へ 1 2 ・・ 8 次へ