日向倶楽部世界旅行編第42話「悪魔の兄妹」

三隈グループ @Mikuma_company

すると少年は、尻尾を揺らしながら笑った 「クククッ…知りたいか？知りたいなら地獄の相談窓口にでも…行くんだな！」 彼は尻尾をこちらに突き出す！すると尻尾の先についている口の様なものがパカリと開き、筒の様なものが出てきた！ 「まさか！避けろッ！」 長門さんのまさか、それは的中した！

三隈グループ @Mikuma_company

ボォォン！飛び退いた私達の後ろで爆発が起きる、あの尻尾が弾丸を撃ってきたんだ！ あの尻尾、何かに似てると思ったけど、今分かった、深海棲艦だ…！ 「チッ、煙幕を！」 長門さんは単装砲を地面に撃ちまくり、土と砂を舞わせる、むせそうだったが、私達は今これに守られている。

三隈グループ @Mikuma_company

「フン…避けたか、だがな！」 少年の声が聞こえる、第二波が来る！ その時！どこからか車のモンスターなエンジン音が聞こえて来た！ 「…そうか！野分、跳ぶぞ！」 「えっ？」 まごつく私の身体を掴み、長門さんは音の方へジャンプした！ ぼすん！っと音を立て、私達は椅子の様なものに落ちる。

三隈グループ @Mikuma_company

「掴まってろ！飛ばすぜ！」 そこは、ローズハルトさんの運転するオープンジープの後部座席！ 「ローズハルトさん！大丈夫だったんですか！？」 「俺の鎧は硬い！…結構痛かったけどな、とにかく逃げるぞ！」 ローズハルトさんはアクセルを全開にし、ジープを猛スピードで走らせる。

三隈グループ @Mikuma_company

ジープは凄まじい音を立て、私達の姿に驚く兵士達を置き去り、村を走り去った… 「あの村で何が…」 「分からん。分かるとすれば、何か大きな悪が蠢いていると、そういう事だ！」 狼狽える私に答えつつ、長門さんは連装砲で後方を撃ち、追撃を防ぐ。

三隈グループ @Mikuma_company

「薄暗いおかげで顔は見られてないはずだ。とにかく泊地へ、泊地へ戻ろう、あそこなら警備も厳重だ」 「クッ、あの様な輩を前に、すごすご逃げ去らなくてはならんのか…！」 長門さんは車のドアをぶっ叩き、眉間にシワを寄せ、歯をギリギリと言わせた。

三隈グループ @Mikuma_company

「はぁ…はぁ…あの子達、何なの…」 私はその間、もう遠くなった村の方を見ていた。 私達が一泊したあの村で、一体何が起きていたんだろう…私達の暮らす世界で、何が始まっているんだろう…？思い出すと、あの少年は深海棲艦みたいな姿だった、彼等は、何…？ 私の胸に疑問と不安が生まれる

三隈グループ @Mikuma_company

だけどそれだけじゃない、他に何か、不思議な感情が生まれた。 (鳥肌が立って、身体が熱くなる…なんだろうこの気持ち、分からない…) ぼこぼこした道をジープが走る、揺れるジープの振動が、突然の出来事、不思議な感情、私のごちゃごちゃとした考えをかき混ぜていった。 〜〜

三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 その頃、野分達が逃げ去った村では… 「…逃げられたか、アラシオの攻撃を耐えるとは黒い奴、随分頑丈らしいな」 少年ラマリは尻尾を揺らしながら呟く。 取り逃がしたという失態を犯しながらも、彼はとても冷静で理知的であった、慢心や強がりではなく、本心から落ち着いていた。

三隈グループ @Mikuma_company

すると少し離れたところで、倒れていた少女アラシオが起き上がった。 「んんぅ〜…」 「アラシオ、大丈夫か？」 「うう…ひぐっ…痛い…」 下を向いて目頭を抑えるアラシオ、ラマリは駆け寄ってしゃがみ、顔を覗き込む。 「どこだ？痛むか？」 すると、アラシオは動きを止めた。

三隈グループ @Mikuma_company

「…ふふっ！」 「のあっ！」 そしてしゃがみこんで来た兄に飛びかかり、じゃれ付くように馬乗りになった。 「私は平気よ〜、お兄〜ちゃん」 「なんだなんだ、また兄ちゃんを騙したなぁ？」 ラマリは寝転びながら妹の頬を突く、ふにふにとしていて柔らかい。

三隈グループ @Mikuma_company

「うふふ〜それでも毎回心配してくれるお兄〜ちゃん、私だーい好き！えいっ」 「アハハ！こいつめ、兄ちゃん怒るぞ〜？」 兄妹はゴロゴロとじゃれ合う、すると一人の兵士が二人の元へ走って来た。 「ラマリ様！」 「…どうした」 ラマリは冷淡に答え、アラシオを抱っこして立ち上がる。

三隈グループ @Mikuma_company

「先程の者達は如何しましょう？」 ラマリは舌打つ 「放っておけ、ここでの出来事を話そうが狂人扱いされて終わりだ。俺たちは余計な事はせず、手筈通り撤収、処理する。」 「ハッ！では予定通り、焼却に移ります！」 「それで良い、何一つ残すな。」 「了解！」 兵士は一礼し、走り去った。

三隈グループ @Mikuma_company

すると、抱き抱えられていたアラシオが不満げに口を開いた 「…お兄ちゃん、あいつら追わないの？」 「ああ、イヤか？」 「だってあいつら、お兄ちゃんがくれた大切な服をボロボロにしたのよ」 幼い言動や身体からは想像もつかぬ殺気を剥き出し、アラシオは村の外を見つめる。

三隈グループ @Mikuma_company

そんな妹の頭を撫で、ラマリは宥める様に言った 「大丈夫だ、服なら兄ちゃんがまた作ってやるからな。」 「本当？」 「ああ本当だ。だから兄ちゃんの前でそんな怖い顔をするな、可愛い顔が台無しだぞ？」 彼は赤子でもあやす様に、彼女の頭をめったらやたらに撫で回す。

三隈グループ @Mikuma_company

アラシオはしゅんとし、兄の顔を見て謝った 「うん…ごめんお兄〜ちゃん」 「良い子だ。もしあいつらを次に見たら、兄ちゃんがしっかり懲らしめてやるからな。」 「本当？ありがとうお兄〜ちゃん、だーい好き！」 しゅんとしていたアラシオはまた笑顔になり、ラマリの頭に抱きついた。

三隈グループ @Mikuma_company

やがて二人は村の中を、仲良く話しながら歩き出した。 「そういえばアラシオ、ナカチャンはどうした？」 「ナカチャンはお留守番〜汚しちゃったら困るもの。」 ナカチャンとは、トラック泊地のあの那珂を模した、ラマリお手製のぬいぐるみである。

三隈グループ @Mikuma_company

「そうか、寂しくないのか？」 「お兄〜ちゃんと一緒だもの、寂しくないわよ〜」 「アハハ、じゃあナカチャンが寂しがってるから早く帰らないとな」 「うふふ、優しいお兄〜ちゃんがやっぱり好きよ〜」 兄妹は和気藹々と崩れた村の道、星空の下を歩き、輸送車へと乗り込んだ… 〜〜

三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 その日、一つの村が一夜にして消えた。 電話も通っていない、貧しく迷信深いその村が消えた事は、多くの人々にとっては不思議な出来事、一種のオカルトに過ぎなかった。 ましてやそれが、何者かによって「消された」など、人々は夢にも思わなかった。

三隈グループ @Mikuma_company

それは人々が鈍いからではない、仕方のない事だった。 あの日その場に居合わせた者ですら、彼等の正体を、悪魔の正体を知らない、その尻尾すら、掴めて居ないのだから。 彼等はこの世界で動き続けている、誰にも気取られず、悟られず… 第42話 「悪魔の兄妹」 おしまい

三隈グループ @Mikuma_company

【ナカチャン】 アラシオが大事にしている、那珂を模して作られた大きなぬいぐるみ。 ラマリが彼女の為に手作りしたもので、当然非売品。

三隈グループ @Mikuma_company

【アラシオ】 野分達の前に現れた謎の少女。 可愛らしい服に身を包んだ女の子だが、鎧に身を包んだローズハルトを殴り倒す程の怪力の持ち主、身体能力や体力にも優れ、至近距離で攻撃を受けても平然と起き上がった。 ラマリを兄と慕っており、彼の言う事は大抵聞く、那珂の大ファン。 pic.twitter.com/J2iRYhfabM

拡大

三隈グループ @Mikuma_company

【深海棲士ラマリ】 野分達の前に現れた謎の少年、深海棲艦を彷彿とさせる風貌に、悪魔の様に生えた尻尾が特徴。 尻尾は単装砲となっており、先から弾丸を発射する事が出来る、また身体能力も極めて高い。 冷静な性格だが、妹と溺愛するアラシオの前では柔らかくなる、趣味は裁縫。 pic.twitter.com/u4EdQgXnsX

拡大

三隈グループ @Mikuma_company

【ラマリ兄妹】 野分達の前に現れた謎の兄妹。 正常ではない戦闘力を持ち、秘密裏に人々を攫い、村を一つ消滅させた。 何らかの組織に属しているようだが、その詳細は不明である。 pic.twitter.com/BRdDbk637D

拡大