編集部イチオシ

電車の冷房化改造の難しさを振り返る。昭和の電車が平成に生き延びるための運命の分かれ目

サービスレベルを向上させる改修工事、新しい順にする、古い順にする?
99
憑かれた大学隠棲:再稼働リプレイスに一俵 @lm700j

その中で富士電機や三菱電機は路面電車用の軽量冷房ユニットを開発。古い路面電車も一気に冷房化を進めた。これは路面電車の経営には好影響を与えたが、車両更新が進まない一因にもなったろうな #レトロフィットの鉄道技術史 #冷房化

2018-04-15 14:02:46

実は改造できるか分かってなかったアルミ車編、あるいは経済設計の罠

靖間 誠 @SEI_YASUMA

いや、ボロって貴方、これが先陣切って冷房改造してなかったら世の非冷房アルミ車の冷房化はもっと遅れてた(例えば営団6000の冷房化はこれの冷房化後に同じ川重で開始)んですがな。それに構体設計や重量で言えば実は後の「新工法」アルミ車よりこっちの方がずっと手間かかってるし軽いという。 twitter.com/40akatonbo/sta…

2018-04-14 20:04:15
靖間 誠 @SEI_YASUMA

山陽の第2世代アルミ車はもう3500・3501しかなくて、しかも見た目しょぼいのでひどい言われようなんだけど、実はあれ、前にも言ったけどアルミ車を巡る技術開発の歴史の中では3000・3600の3両セットより重要で。何しろこれらの改造の際に溶接欠陥を徹底調査してアルミ車冷房化の道が開かれたので。

2018-04-14 20:07:18
靖間 誠 @SEI_YASUMA

1989年に山陽電鉄が実施した第2世代アルミ車である3500形3500・3501の冷房化は、当時同社が保有していた4連用冷房付きT車が払底する状況を背景として見切り発車的に実施に踏み切られたもので、それ故様々な試行要素を含んでいた。

2018-04-15 14:32:34
靖間 誠 @SEI_YASUMA

重大な勘違いによる間違いがあったので訂正。 溶接性に優れた7N01の適用は3000系1次車、つまり第2世代の最初から、第3世代の型押し材は押し出し性と強度のバランスを重視し1980年代に実用化(1982年JIS登録)の6N01を使っている。

2018-04-15 14:39:25
靖間 誠 @SEI_YASUMA

実際3078Fなど3500・3501を組み込んだ新工法アルミ車編成を見ると、その材質差が如実に表れている。同じアルミの「銀」でも3500・3501のそれは若干黒ずんだ色調で白っぽく見える新工法アルミ車とは明らかに違う。まぁこの車の場合は2012・2013・2505の窓構造を踏襲し、更に台枠部分の接合も異なるが。 pic.twitter.com/qcQfLqOaj0

2018-04-15 00:19:51
拡大
拡大
靖間 誠 @SEI_YASUMA

これも同じく勘違いなので訂正。2012Fでは非熱処理アルミ合金で最強強度の5083を型材と外板に使用し、押し出し性に優れた6063を桁材など複雑な断面形状の型材に用いた。同編成が主要部にリベット接合を使わざるを得なかったのは、この桁材等と他の部材の接合で異種アルミ合金の溶接が難しかったため。

2018-04-15 14:43:46
靖間 誠 @SEI_YASUMA

山陽3000系3000・3002Fの3連×2に始まる第2世代アルミ車では溶接部分の強度低下が少なく時効硬化で強度が時間経過と共に回復する7N01が開発された事でこの材料を主体として使用、全溶接化を達成した。そして1982年の3066F 3066・3067に始まる第3世代アルミ車では押し出し性が重視され6N01採用に至る。

2018-04-15 14:48:44
靖間 誠 @SEI_YASUMA

ちなみに第2世代と第3世代の間には第2.5世代と呼ばれるグループが存在する。これはメーカー側で大型の押し出し機が導入されたことで、おなじ7000番台ながら7N01より押し出し性に優れた7003による大型薄肉形材が利用できるようになったもの。ちなみに山陽はこの世代でアルミ車を作っていない。

2018-04-15 14:52:47
靖間 誠 @SEI_YASUMA

訂正内容を反映してここでアルミ車の世代と材料・工法を列記してみる。 第1世代:5083・6061合金 溶接・リベット接合併用 第2世代:7N01合金 全溶接 第2.5世代:7003合金 大形薄肉型材全溶接 第3世代:6N01合金 大形薄肉型材+大型中空型材 MIG溶接/FSW 第4世代:6N01合金 大型中空型材 MIG溶接/FSW

2018-04-15 15:03:58
靖間 誠 @SEI_YASUMA

×6063 ○6061 ちなみに双方とも熱処理構造用合金にカテゴライズされ、6061の方が強度が高い。

2018-04-15 15:05:52
靖間 誠 @SEI_YASUMA

事実上1編成3両しかなく、それが淘汰されたらそれで終了だった第1世代はともかく、かなりの両数が非冷房車として設計製作された第2世代アルミ車の冷房改造は、その車齢(概ね1964年~1973年頃までに製作)を考えると不可避であったが、その実現は1989年の山陽3500・3501の改造実施まで大きくずれ込んだ。

2018-04-15 15:09:35
靖間 誠 @SEI_YASUMA

これは、それらに用いられたのがいかに溶接性に優れた7N01合金であったとしても、一旦箱に組まれた車体を切除し補強を入れて風洞を天井に通す工事を実施するには、その溶接管理が難しかったためである。

2018-04-15 15:12:32
靖間 誠 @SEI_YASUMA

アルミ合金を他の材料(アルミ合金を含む)との間で接合するのは難しく、例えば普通のはんだ付けでは接合できない。実際、アルミはんだ付けには強酸性のフラックスを塗布してアルミ合金表面の酸化アルミニウム被膜を除去して合金層を形成・露出させる、超音波はんだごてを用いるなど特別な策を要する。

2018-04-15 15:17:21
靖間 誠 @SEI_YASUMA

また、溶接できても溶接時に化学反応で発生するガスが部材溶接部に閉じ込められて発生するブローホールや溶接割れなどの欠陥が発生しやすかった事もこれらの車両の改造を難しくした。このため3500・3501の冷房化改造の際にはこうした溶接欠陥の検査と検出、そして対策に大変な手間がかけられた。

2018-04-15 15:29:00
靖間 誠 @SEI_YASUMA

山陽で3000~3003・3600・3601の6両より先に中間T車であり抜き取りが可能な3500・3501がまず生贄もとい改造試験に供されたのも、工事実施時点でなお技術陣にアルミ材溶接への不安が強かったことを物語っている。山陽技術陣は最悪、この2両を廃車処分することも覚悟していた筈である。

2018-04-15 15:32:21
靖間 誠 @SEI_YASUMA

幸い、この改造は大成功に終わり、翌年以降全国の非冷房アルミ車保有各社で相次いでそれらの車両の冷房化工事が開始されたが、それでも各社とも慎重な姿勢を崩さなかった。営団などは6000系冷房化に合わせて車体について様々な調査を実施している。

2018-04-15 15:35:34
靖間 誠 @SEI_YASUMA

一つ言い忘れていたことがあった。アルミ車の冷房化改造を難しくしているのは、何もこうした車体の溶接問題ばかりではなかった。軽量車であることが祟って、冷房化にあたって台車が既存のままでは使えない車両があちこちで発生したのだ。

2018-04-15 15:36:58
靖間 誠 @SEI_YASUMA

アルミ車は軽量だが材料費が高いため、軽量であることを最大限に生かして軌道保守負担を軽減することでその高価さを相殺し正当化していたのだが、そうすると車体が目に見えて軽くなったのを活用すべく、輪軸や台車の荷重上限を普通鋼製車より1段下げて軽量化・低価格化する事が珍しくなかった。

2018-04-15 15:45:11
靖間 誠 @SEI_YASUMA

この問題が一番深刻だったのは大阪市交通局だった。同局では1970年の日本万国博覧会開催に向けて1967年頃からアルミ・スキンステンレス車体による通勤車の量産を実施していたのだが、この際多数製作した30系電車のアルミ車で冷房化の際に「冷房が重くて台車が持たない」という問題が生じた。

2018-04-15 15:49:28
靖間 誠 @SEI_YASUMA

不幸中の幸いと言うべきだろうか、大阪市交の場合は冷房改造が遅れたお陰で非冷房のまま廃車が進みつつあった30系スキンステンレス車が履いていた高強度高荷重対応の台車・輪軸を大規模振り替え流用できたので、それ以上深刻化することはなかったのだが。

2018-04-15 15:56:08
憑かれた大学隠棲:再稼働リプレイスに一俵 @lm700j

@SEI_YASUMA 堺筋線60系でも、一部編成を廃車してM車用の台車を捻出して冷房改造する編成に回してましたなあ。問題にならなかったアルミ車は母体となった鋼製車とかステンレス車の台車をそのまま利用してたからかも

2018-04-15 16:01:42
靖間 誠 @SEI_YASUMA

@lm700j あれは、万博輸送で予算窮乏状態だった大阪市交が特にコスト計算にシビアであり過ぎたのが後で祟った印象ですね。ちなみに山陽3500・3501は台車が最初がアルミ車用とされたKW-2Aで入線後ただちにこれを3600・3601に供出、これら2両のOK-21Dに交換していた経緯があります。

2018-04-15 16:09:39