オング『声の文化と文字の文化』を受けての所感

@qothr による連ツイのまとめです。
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怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ クレリカの感性詞の用法は、それぞれの句に複製を持つという意味で冗長という見方もできるけど、一方で、head-directionality による従属化という振る舞いの代わりに統語的グループ化を図る手段としては(タグ付けは)必要十分であるという意味で、まったく冗長ではないという見方もできそう

2018-04-28 07:32:14
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 『声の文化と文字の文化』、 #人工言語学徒向けの推薦図書 に加えたい。というか人工言語作者必読では?

2018-04-28 08:52:41
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ なぜ古い物語で定型的なキャラクター像が用いられるのか、なぜ子供たちが絵本を親に読み上げてもらいたがるのか、そして、なぜクレリカが「あどけない」という印象を持たれるのか。そういった問題に強烈な示唆を与えてくれる

2018-04-28 08:55:18
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 声の文化における思考と表現は「累加的 additive であり、従属的ではない」「累積的 aggregative であり、分析的ではない」「冗長ないし「多弁的 copious」」とするオングの提言は、クレリカに存在感と真実味をもたらすとともに、その印象を声の文化に近づける

2018-04-28 08:57:55
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ オングは『創世記』第一章一〜五節の文体で例示する。ドゥエー版聖書(1610)では、文のつなぎに「そして」のみが使われるのに対し、ニュー・アメリカン・バイブル(1970)では、文は重文に入り込み、「したとき」「こうして」「一方」といった分析的で推論的な従属関係に置き換えられる

2018-04-28 08:59:03
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 言語の文法的複雑さの度合いは、にーにがクレリカのシンプルな文法の根拠として考えていたとおりに、話すことと書くことの文脈依存度の違いが直接的に関わっているというようなことをオングは述べている

2018-04-28 09:01:09
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 書くことなしには、人間の意識に「それだけで独立した話し」といった感覚は現れない。声の文化での言語運用は、かならず生活に寄り添ったものであり、言葉のうえで厳密に従属関係を明示しようという意識は薄く、そういったシステムがまだ言語に反映されてこない

2018-04-28 09:03:21
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ また、声による発話を聞く人は、文字を読むときのように読み返すことができない。冗長にことばを繰り返すことは、声の文化における思考と話しの経済において自然なのだと言う。現代でも街頭演説が繰り返しや決まり文句を多く含むことも参考になる

2018-04-28 09:04:28
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ これらのことはすべて、クレリカの言語が声の文化に基づいているという示唆につながる。クレリカが漠然と「あどけない」「幼い」印象を持たれるのも、学んで習得しなければならない「書くこと」よりも、人間が生まれつき持っている「話すこと」に基づいた様式を備えているからだと思う

2018-04-28 09:05:34
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ「書くこと」のもたらす人間の思考と言語への影響にも段階があって、手書きの文化と印刷の文化とでは決定的な違いがある。「印刷は、あらゆることばを網羅するような辞書をつくり出し、そして〔それとともに〕、「正しい」言語のための規則をうちたてたいという欲求をつくり出した」

2018-04-28 09:08:07
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ つまり、人工言語作者が普段やっているような仕事は、書くこと、さらに言えば印刷技術が人間の意識にもたらしたパラダイムの上でのみ成り立つ類のものだということになる。これは多くの人工言語作者にとって衝撃だと思う

2018-04-28 09:10:44
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 逆に言えば、その言語の手の込んだ複雑で「正しい」文法や正書法、辞書を持つ文化は、「話すこと」から「書くこと」への、つまり音声から視覚的対象への意識の以降のみならず、印刷か、それにあたる何らかの技術的革新を経た文化であることが要請される

2018-04-28 09:16:34
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 細かいところだと、「書くことによってわれわれは「ことば〔語〕」をモノのようなものと思ってしまう」。単語の分かち書きも、「書くこと」が人間の意識に十分に内部化されてからのものであって、声の文化においては、発話は語に分かたれてはいない。この点ではクレリカは文字の文化指向だ

2018-04-28 09:20:50
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ オングはレヴィ=ストロースの「野生の思考は全体化する」を言い換えて「オーラルな思考は全体化する」と述べる。声の文化と文字の文化の決定的な差異に気づかないまま言語を作ろうと思ったら、普通は単語や音素などの「単位」から作ろうとしてしまうけれども、もともと言葉に「単位」はない

2018-04-28 09:27:02
すきえんてぃあ@書け @cicada3301_kig

これ。そこらの駅前の赤ら顔のオッサンの会話は、モーラ構造もぐちゃぐちゃで、別言語になってる。認知症の会話とか、知的障害の会話とか、語彙はむちゃくちゃ文脈依存的で、大部分は社交辞令の丸暗記をリピートしてる。語順もぐちゃぐちゃで、言語類型論の一部は書き言葉による幻想に思える。

2018-04-28 09:31:54
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ そういった構造主義言語学的単位の代わりにあるのは、記憶術としての決まり文句や叙事詩にみられる韻律だという。書くことを知らない文化では、重要な事柄を覚えておく必要があるわけだが、神話における定型的なキャラクター像や、決まったリズムで口を動かすことがそれを助ける

2018-04-28 09:32:34
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ これらのことをどう捉えるべきかを、それぞれの人工言語作者は一度は考えてみるべきだと思う

2018-04-28 09:35:07
すきえんてぃあ@書け @cicada3301_kig

これも「音素の最終決定から入るのは変だ」って主張してきたけど、人工言語作者に声が届いたことはない。僕は中学時代に、書かずに延々独り言と、友達との隠語会話から入って、どんどん音を変えていった。本当は最初に喃語プレイから入るべきだろうけど。 twitter.com/qothr/status/9…

2018-04-28 09:46:16
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ セレン氏のいう「発生的」な言語制作はまさにそれだね

2018-04-28 09:48:30
怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ 他にも「書くことは、独占的で〔いわば〕帝国主義的な活動である」「まったく文字を知らなかったときの無垢な人間の意識」「秩序という概念そのものの感覚的な基盤は、かなりの部分、視覚にある」「書くこととともに、剽窃へのいきどおりが現れはじめる」とかパワーワードに溢れてる

2018-04-28 10:13:54

Langueプロジェクト

yuhr/langue - GitHub

怪文書 @exograph

ʕ•͠ω•ʔ Langueプロジェクトのデザイン原理にも影響しそうで、仕様書書いてる段階で読めてよかった

2018-04-28 10:21:16

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ところてん @tokoroten

電子書籍の時代では、もはや箇条書きでいいんじゃないかという気がしてきた。箇条書きならマッハで書ける。 文章という形態は、どうしても直列になってしまうので、並列概念をうまく取り扱えない。 接続詞を読者が暗黙的に補えれば、箇条書きで十分意味は伝わる。 #マッハ新書 pic.twitter.com/gQViHUT6oz

2018-05-01 07:38:46
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