咲夜と天国(オムライス篇)

ちっさく。メモ
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ハチ山 @hachisu_bread

オムライスは卵ふわふわが好き? かたいのがすき?

2016-05-06 00:03:48
ハチ山 @hachisu_bread

半熟の卵をひらくと、黄金の龍のやわらかな鱗みたいにゆっくりと流れてきて、咲夜は目を丸くしながらそれに見入るんだよ……!

2016-05-06 00:16:44
ハチ山 @hachisu_bread

「これ……なに?」 「卵、」 「……たまご」 繰り返す咲夜は、それが信じられないようにじいっと流れる卵に見入っているわけ!

2016-05-06 00:17:49
ハチ山 @hachisu_bread

それは、自分の知ってる卵と違うから。もっと臭くて、もっとおかしな色で、こんな風に金色に耀くものじゃないから。

2016-05-06 00:19:46
ハチ山 @hachisu_bread

ほわりと立つ湯気の甘い香りが、ふわんと鼻先をくすぐってくる。熱い、初めての卵の香り。甘いトマトの匂い。ごく、と咽喉がなる。咲夜は知らず知らず、パチュリーを見つめている。 「食べていいのよ、あなたのもの」 「わたしの、」 「あなたの」

2016-05-06 00:24:43
ハチ山 @hachisu_bread

@hachisu_bread スプーンで黄金(きん)と紅の食べ物をそっと掬う。恐る恐る、ほんの少しだけ口に運ぶ。 咲夜の目がいっぱいに見開かれる。

2016-05-06 00:37:13
ハチ山 @hachisu_bread

パチュリー「おいしい?」 さくや「…………」 呼吸した肩がゆっくりと膨らむようにあがったまま、目を見開いて動かない咲夜は、しばらくして思い出したようにまばたきをしたあと、放心したようにゆっくりと肩をおろす。 頬が、みるみる薔薇色にそまる。 空色の瞳に、曙の菫が差す。

2016-05-06 00:42:10
ハチ山 @hachisu_bread

さくや「…………、おいしい」

2016-05-06 00:42:34
ハチ山 @hachisu_bread

天国みたい、と咲夜は言った。 その感想を、今もパチュリーは覚えている。 ほろりとほんのひとしずく、呆然と見開いた瞳から涙を流した、その少女の言葉を。

2016-05-06 00:45:42
ハチ山 @hachisu_bread

おいしくって思わず色んな感情が一瞬振り切って涙でちゃったんだよ。

2016-05-06 00:48:26