加藤節『ジョン・ロック 神と人間との間』岩波新書1、2章 要点。

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UM @uocham

加藤節『ジョン・ロック』岩波新書① まずプロローグはもちろんだが「あとがき」も先に読むとよい。本書の叙述のしかたの理由とプロローグでのかつてのロック研究の傾向と新たな解釈の流れに加え、日本のロック研究の潮流について自戒も込めて述べている。植民地支配の正当化理論を含意するものとして

2018-06-05 14:59:49
UM @uocham

のロックについて、近代への影響を重視する日本の研究傾向は目を塞いできたといってよい。丸山眞男以降の研究の基調は、彼の問題関心を引き継ぐがゆえに、ロックの近代性の支えとなる宗教性にはじゅうぶんには光を当てなかった。

2018-06-05 14:59:50
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加藤節『ジョン・ロック』岩波新書② プロローグ。「天才の世紀」17世紀の著作家の中でもロックが群を抜いて「思想史の広範なジャンルに決定的な影響」を及ぼした理由、故に「後世への影響力」がロックのイメージを形づくり、その実像の理解を妨げたことを指摘。

2018-06-05 15:00:07
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新たな資料の公刊と1960年代以降の「厳密な歴史学」としての再解釈によりロックの「思想的核心を宗教性」にみる傾向が強まり、「多面的で錯綜した構造」が明らかに。ロックが「思想的課題の解決に失敗」し、「精神の奥深くに何らかの挫折感をかかえる思想家」であることを暗示する。

2018-06-05 15:00:08
UM @uocham

加藤節『ジョン・ロック』岩波新書③ 第1章。ロックの生涯、とりわけ彼の信仰の形成過程が重要である。激動の時代にあって学びと生活の基盤を他者に依存していたがゆえに翻弄された青年期ロックは「神への信頼と人間への不信との間を生き」た。自己の実存的危機を救ったのは、自らの資質を配剤してくれ

2018-06-05 15:00:27
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た「神の摂理」との同一化によってであった。壮年期以降、亡命潜伏など危機的状況に陥りながらも探究を止めなかった自己の確立期と言える。また代表作の多くが晩年期であり、改訂と批判への論駁に驚くほどの旺盛さで取り組む姿勢は信仰が基盤となった探究の源泉が奈辺にあったかを感じさせる。

2018-06-05 15:00:27
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加藤節『ジョン・ロック』岩波新書④ 第2章。ロックを単純化してきた解釈の誤りとともに彼の思想の複雑性が明らかにされる。認識論と政治学との亀裂(『人間知性論』『統治二論』)、道徳哲学内における変容(『自然法論』『人間知性論』)など。著者は一見、一貫性や自己同一性を見いだすのが困難か

2018-06-05 15:00:58
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に見えるロックは「全体的な自己同一性を保ちつづけ」たと主張する。彼が「根源的な思想的課題」に死力をつくすがゆえに非一貫性や亀裂に見えるものが逆説的に彼の思想の自己同一性を暗示する。また知的遍歴は「驚くほど限定された問題枠組みの内部でたどられた」と指摘。

2018-06-05 15:00:59
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加藤節『ジョン・ロック』岩波新書⑤ 続第2章。著者はロックの問題枠組みの原型を『世俗権力二論』『自然法論』に見、各々の系譜から読み解く。『世俗』『寛容論』『統治二論』『寛容の手紙』は「政治的統治の統制範囲」や「政治的統治の目的」に関わる問題関心であり、政治=寛容論の系譜とする。

2018-06-05 15:01:59
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『自然法論』『人間知性論』『キリスト教の合理性』には道徳原理や宗教をめぐる認識問題という一連の問題意識があり、認識=道徳論の系譜とされる。それぞれの系譜の発展と二つの系譜の「相関や交錯」はいかなるものかがロックの思想構造理解の鍵となる。

2018-06-05 15:02:00
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加藤節『ジョン・ロック』岩波新書⑥ 著者は政治=寛容論の系譜におけるロックの権威的からリベラルな立場への転換の理由を『人間知性論』における自律的存在としての人間像に見る。それは政治権力の統制範囲についての議論に貫かれていく。宗教と政治の関係に真の解決を与えるという持続的な問題関心

2018-06-05 15:02:22
UM @uocham

は認識=道徳論においても見られる。「理性と啓示とがともに同一の自然法への通路であることを確信」するロックにおいて『自然法論』の理性による自然法の認識可能性から、晩年『キリスト教の合理性』でのその否定は「高貴な学問」道徳哲学に徹するロックの「根源的な問題関心の自己同一性」を伺わせる

2018-06-05 15:02:23
UM @uocham

加藤節『ジョン・ロック』岩波新書⑦ 第2章第3節。著者は「思想家の思考が絶えずそこへと回帰していく不動の信条や確信を探りあてる」ことでロックの思想に自己同一性を与えた「個体化の原理」を突き止めようとする。ロックにおいてそれはクリスチャンとしての宗教的確信であった。「神を人間に服す

2018-06-05 15:02:44
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べき規範をあたえる存在として信仰し、生きるに値する人間の善き生の条件をその規範にしたがい生きることにみいだすゆるぎのない信条」。著者は3つの傍証を挙げるが、つづめて言えば3つめロックの「思想世界が、ロック的な意味での「神学」に属するものとして構想されていた」

2018-06-05 15:02:44
UM @uocham

加藤節『ジョン・ロック』岩波新書⑧ 「ロックの思想を方向づけ、規定したその宗教的信条を以下「神学的パラダイム」と呼ぶとすれば、40年以上にわたってつづけられたロックの思索は、《全体として》、その「神学的パラダイム」のうちに同一性の根を置くものであった。もとより、

2018-06-05 15:10:08
UM @uocham

ロックの思想における宗教的関心の理論的な中核性に注目することの重要性が指摘され、世俗的なロック解釈が修正を迫られた理由もそこにあったのである」64

2018-06-05 15:10:08