日向倶楽部世界旅行編第53話「予選三回戦 VS美少年艦隊」

三隈グループ @Mikuma_company

そして武蔵の読み通り、乱戦は複雑なものとなっていた。 (あの紫の筋肉…躑躅とかいったか、厄介な動き方だ…。適当に見えるが、こっちに丁字を取らせないよう意識してやがる…) 石楠花の相方である躑躅の動きは、カウント奪取をチラつかせる事で鈴谷達の動きを縛る、非常にいやらしい動きだ。

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しかし、それでも鈴谷一人なら、これへの対応は楽なものだった。問題はそこでは無い。 「ぐっ…！」 問題、それはあきつ丸だった。 彼女はこの四人の中で明らかに一人、実力で劣っていた。鈴谷もそれをカバーするよう努めていたが、カウントを守る事までやるとなると、僅かに綻びが差が生じた。

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そして美少年艦隊の石楠花も、それに気付いている。 「…躑躅、やるよ」 「分かった」 彼は相方の躑躅に声をかけると、進路を転換、鈴谷との戦闘を放棄した！ 「チッ、待ちやがれ！」 当然鈴谷はそれを逃さんとする、しかし！ 「…ッ！？後ろか！」 彼女がそう言うと、死角から艦載機群が出現！

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それは美少年艦隊の艦載機、躑躅の操る対空型艦載機の紅音(アカネ)と、攻撃型艦載機の姫蜂(キバチ)、そして石楠花の使う万能型艦載機の揚羽(アゲハ)！ この艦載機群は、美少年艦隊の策略であった。彼等は護衛ボールへ到達する以前から、艦載機でここを包囲するよう仕向けていたのだ！

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「完全にハマった訳か…！」 鈴谷は石楠花との戦闘に使用していた瑞雲を戻し、対空戦の構え。あきつ丸の方は逆に烈風を出し、艦載機群の迎撃に向かわせる。 しかし！そのあきつ丸に向かう者！ 「おっと、そいつはさせないよ」 それは、鈴谷から進路転換した石楠花！彼の狙いは格下のあきつ丸だ！

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石楠花はあきつ丸に砲撃を開始！迫る攻撃！ 「くっ、しかし、鈴谷殿を！」 だがあきつ丸はなんとか回避しつつ、烈風を出す！飛び出した烈風は編隊飛行で敵艦載機群へ！ 「サンキュー…ッ！あきつ丸ちゃん！」 無数に放たれる攻撃を避けつつ鈴谷は返礼、あきつ丸の烈風と共に迎撃開始！

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が！彼女はすぐ、顔をしかめた！ (ッ！烈風が押し負けてやがる…！) 美少年艦隊の艦載機紅音が、烈風を押している！その事実を見て、石楠花は嘲笑う！ 「フッ、驚いてるのかな？紅音は蜻蜓より上の艦載機、最大の仮想敵である対深の烈風に、負ける訳がないよ」 そしてその言葉に、鈴谷は舌打ち！

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「紅音…アカネ…そうか、TGSのカンムスか…お前ら」 「TGS？凡俗の出来損ないである彼等と一緒にされては困るな、僕らは選ばれた美少年艦隊さ。」 石楠花はそう言って笑うと、揚羽に攻撃を指示する。同時に姫蜂も迫り、鈴谷は凄まじい攻撃に晒され始めた！

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「鈴谷殿！」 「構うな！こっち潰すまで、今は守ってろ！」 叫ぶあきつ丸を鈴谷は叱責する。その言葉は強がりでもなんでもなく、彼女は凄まじい猛攻をほぼ無傷に凌いでいた。 だが状況は悪い、凌ぐ代償に、あきつ丸の支援は一切不可能となっていたのだから！

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そしてその好機を、この状況を作り出した美少年艦隊が、逃すはずはなかった！ 「あきつ丸さん、君の相手は僕だよ」 「なんと…！」 石楠花があきつ丸に攻撃開始、その後方からは躑躅も支援攻撃を行う！ただでさえ実力で劣るあきつ丸を、二人のカンムスが強襲している！

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「くっ…！」 あきつ丸は辛うじて攻撃を避ける、しかし当たるのは時間の問題と思えるほど、追い詰められていた！ 「この程度なら、まだ何とか…！」 だがまだ避けている！鈴谷が艦載機を駆逐し、支援に駆けつければ、状況は好転する！彼女にある勝ち筋は、ひたすらに耐えること！

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しかし悲劇的な事に、彼女はそれを完全には理解出来てなかった、攻撃を受け続けている鈴谷を、ちらちらと気にかけてしまうのが何よりの証だ。 彼女のそれは間違いなく優しさだが、この状況ではただの甘さ！人の心配できる程じゃないのだから、そこに集中力の穴ができるのだ！

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「うあっ…！」 その甘さが被弾を招く！一撃が掠り、彼女の艤装が一部破損した！されどまだ、まだ直撃ではない！ だがあきつ丸にとって、その被弾は大きな一撃！精神が徐々に徐々に、焦りを吸い込み始める！余裕がない！ そしてそんな彼女に、石楠花が語りかけてきた！

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「あきつ丸さん、大丈夫かい？」 「なっ！？」 突然の言葉にあきつ丸はビビる、そこへ石楠花は武器を一旦下げて続ける。 「まあ大丈夫じゃないよね。それより君、三隈の娘と一緒にいただろう？知ってるよ、君の事」 淡々と話す石楠花には、昨日とは違って不気味さがあり、あきつ丸は異物を覚える。

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「そ、それが何でありますか！？」 言葉から滲む動揺！石楠花、好機を見る！ 「いや、君みたいな無能が、どうして三隈グループの娘なんかと一緒にいるのか、気になってさ。」 「なっ…」 無能！あまりにひどい暴言！だがあきつ丸もそこまでは動じない、分かりやすい挑発にあっさりは乗らない。

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「確かに自分は、無能と言われても仕方ない…自分も、正直…」 そこまで言ってあきつ丸は口ごもる、そこへ石楠花は呆れるように言った！ 「まあ、何はともあれ三隈の娘も大した事ないんだな」 「何！？」 あきつ丸の反応が変わった！石楠花はほくそ笑み、さらに続ける！

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「どんな事情があれ、君みたいな無能の凡俗を側に置いてるんだ。人を見る目が無いんだろうなぁ」 「あ、貴方！」 「それとも利用しやすいバカを側に置いてマスターベーションする、とんでもない悪女か？どちらにせよ、ロクでもない女だなッ！」 石楠花、怒涛の挑発！そして暴言！

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これには辛うじて冷静さを保っていたあきつ丸も、頭血した！自分の事を貶されても、自覚がある、仕方がない。 だが誰よりも尊敬する友人に暴言を吐かれて、黙っていられるあきつ丸ではない！ 「そ、その言葉ァァッ！」 あきつ丸は回避行動の中、主砲を構える！この状況下、初めて攻撃の手を見せた！

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しかしそれが！石楠花の真の狙い！人は攻撃する時、最も防御が疎かになる！それを知る鈴谷は、あきつ丸に叫ぶ！ 「ッ！？何してんだ、よせ！」 だが時既に、遅し！ 「やっぱり無能だな、君は！」 石楠花の背中から、隠されていたサブアームユニットが牙を剥いたのだ！それは隠し腕！

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「なっ、しまっ…」 先端についた主砲はあきつ丸の狙いよりも早く、彼女を捉えていた！弾丸が放たれ、あきつ丸に直進！ 「うあぁぁぁっ！」 命中！弾丸はあきつ丸の身体に、命中！彼女の制服が弾け飛ぶ、直撃だ！この一撃であきつ丸は自分のミスに気がつく、足りなかった精神力に！冷静さに！

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しかしもう遅い！ 「あきつ丸さん、もう少し冷静になる事をオススメするよ」 石楠花が迫り、彼女の艤装を狙う！ 「最も君みたいなのが冷静になったところで…ただの愚図(ノロマ)だろうけどなァァァァァッ！」 主砲が、火を噴く！ 弾丸があきつ丸に、迫る！

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命中！弾丸が爆ぜる、あきつ丸の艤装に、直撃したのだ！ 「ああぁっ！」 衝撃！破損！あきつ丸の艤装は致命打に悲鳴を上げる、その損傷は甚大！ 「うっ…ぐうっ…！」 そしてそれ以上に、あきつ丸本人のダメージも大きかった！身体へのダメージは少なくとも、衝撃に揺れ、視界は霞む！

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加えて艤装も損傷、制服も破損、最早あきつ丸、限界！ 「その言葉…訂…」 速度が落ち、安定も保てなくなる、視界が揺らめき、意識が遠のく。 「フン、無能の凡俗は頭を冷やすに限るよ」 最後に聞こえたのは屈辱的な言葉、あきつ丸は揺れる水面に身を投げ出され、気を失った。

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第53話 「予選三回戦 VS美少年艦隊」 おしまい

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【紅音、姫蜂、揚羽】 GO傘下の艦娘が使う艦載機、蜻蜓や巌蜂より性能が向上しており、より上位の部隊に優先して配備される。紅音は蜻蜓同様の対空型、姫蜂は巌蜂同様の攻撃型、そして揚羽は立羽(未登場)同様の万能型である。 いずれも対艦娘戦を強く意識されており、艦娘にとっては手強い性能を持つ。