「フラグメンツ・オブ・エピック:ディープ・オーダー」「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#1

深海騎士団叙事詩断片第2章 生まれたばかりのネームド深海棲艦・ナバル。 彼女とディープ・オーダーの出会い。そしてある巨人との別れについて。
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ハァーッ…!ハァーッ…!」白い影は荒く息を吐き、しばらくしゃがみ込んでいた。リカルドと吹雪は目を合わせ、やがてリカルドがアイサツを繰り出した。「ドーモ、見知らぬ方。俺はリカルド・ベレンゲル。こっちは弟子の吹雪だ」「ハァーッ…!ハァーッ…!ドーモ……ナバル……です……」 25

2018-08-15 19:08:11
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((ネームドか))((ネームドですね))師弟はアイコンタクトで言葉を交わし、目の前の存在がコミュニケーション可能な存在であると同時に結論付けた。リカルドは言葉を選びながら、語り掛けた。「あー、あれだ。こちらはそちらに敵意は無い。横にいるのは艦娘に見えるかもしれないがな」「敵意…?」 26

2018-08-15 19:10:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ナバルは息を整え、不思議そうに言った。「別に、私に敵意は無いわ。それにその…艦娘ってのが良くわからないのだけど…」「艦娘を知らない…?」リカルドは顎に手を当てた。((生まれたばかりとか、そう言う奴か?それか、特定のコミュニティに所属していないのか…?)) 27

2018-08-15 19:12:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドの脳裏に、今まで出会ってきた名を手にした深海棲艦たちの存在が過る。彼らは一様に、何かしらのコミュニティに所属していた。深界帝国軍、拝神派、ディープ・オーダー、そして名前のない小規模なものまで。((もしや今俺は、かなり貴重な体験をしているのでは?))リカルドは訝しんだ。 28

2018-08-15 19:15:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((司令官))傍まで寄ってきた吹雪が、小声で問うた。((私も聞きたいことがあるのですが))((いいぞ。だが戦闘終わりで気が立ってるかもしれん。言葉は選べよ))((留意します))「あの、スミマセン」「はい、なんでしょうか?」「ナバル=サン、でしたね。私は艦娘・吹雪です」「ドーモ、ナバルです」 29

2018-08-15 19:17:52
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「お聞きしたいことがあるのですが」「ええ、どうぞ。私に答えれることがあれば、ですが」「ここ最近、この海域に大きな白い影が目撃されたとの情報がありました。あなたの事なのでしょうか?」「白い…影…」ナバルのアトモスフィアが変わった。絶妙な変化だ。臨戦態勢でない吹雪は気付けない。 30

2018-08-15 19:20:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「それを聞いて……どうするつもりですか?」ナバルは顔を下げ、低い声で問う。リカルドは吹雪を止めようとした。吹雪は正直に言った。「私たちの最大の敵かもしれません。あなたの事であればこのまま捜査を打ち切って我々は帰ります。そうでないなら、教えてください。場合によっては、殺さねば」 31

2018-08-15 19:23:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」一瞬、世界が凝った。ナバルが跳ね上がるように立ち上がり、カラテストレートを繰り出した。吹雪は己の失策を察した。限界までの集中した世界で、ナバルの拳を見た。疲弊と、カラテ練度の低さ、そして天性の膂力を感じ取った。((なれば、“力に力で対してはならず”!)) 32

2018-08-15 19:25:49
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」「ンアーッ!」一瞬の交差!「えっ、えっ?」ナバルは気が付けば、地に押さえつけられ、腕をねじ上げられていた。読者の皆様はご覧になられたであろう。吹雪はナバルの足を払い、そのカラテストレートの勢いを利用して引き倒したのだ。ジュー・ジツのワザマエである! 33

2018-08-15 19:29:19
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ちょ、おま、馬鹿弟子!」リカルドは思わず吹雪に怒鳴りつけた。「オブラートに包むってのを知らんのかお前は!」「いや、ですが嘘をついたところで後でこじれるだけでは…」「今こじらせてどうすんだよ!」「離せ!離せよ!」ナバルは身じろぎしたが、吹雪は微動だにしなかった。 34

2018-08-15 19:31:40
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「相当疲弊していらっしゃるようですね。先ほどの深海棲艦の戦闘と言い、もしや連戦でしたか?」「離せ!」ナバルは答えず、更に身をよじった。「離せよ!死んだって話もんか!あの子のことは!」「ほう…?」吹雪の目が獰猛に光った。「やはり何かを知っているようですね」「絶対に言うもんか!」 35

2018-08-15 19:34:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「今答えずとも結構。インタビューしてでも聞き出します」「だからヤメロつってんだろ……どうすんだこれ」リカルドは思わず空を仰ごうとした。その時だ!「イヤーッ!」「グワーッ!」海から現れた稲妻めいた影がトビゲリを繰り出す!吹雪は左腕で受け、ナバルから離れた。 36

2018-08-15 19:37:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「オイオイオイオイオイオイ…」リカルドは猛烈に顔をしかめた。現れたのは、黒い深海棲艦だ。頭に王冠めいた10の角。海めいて青い瞳。白い布メンポで口元を覆い、紅いマントを身に纏う、鉄塊めいた巨大な剣を掲げる深海棲艦を、リカルドは知っていた。「最悪のタイミングじゃねぇか…」 37

2018-08-15 19:38:52
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あなたは…」吹雪はカラテを構えた。黒い深海棲艦はナバルを吹雪から庇うように立ち、言った。「見慣れぬ同胞からの救難信号を受け取ってきてみれば、今まさに行われる悪逆の舞台とはな…!深海殺しの死神よ、まさか君と戦う機会が来るとは…だが、友を虐げるものを私は許さん!」 38

2018-08-15 19:41:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

紅いマントが翻る。マントに刺繍された「波を断つツルギ」のエンブレムが輝いた。それは虐げられし名付き深海棲艦を護る者たちの旗印。虐げられし者たちの王が率いる騎士団の証。彼の名は…!「ドーモ、ディープ・オーダーのライオンハートです。友を護る為、死神にも剣を向けよう!」 39

2018-08-15 19:44:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは今度こそ顔を覆い、天を仰いだ。「どうすんだこれ」 40

2018-08-15 19:44:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ナバルの章:ワット・イズ・ザ・ヴァリュー・オブ・ライフ?」#1 おわり #2 へ続く

2018-08-15 19:45:39