[R-18]魔女シリーズ終~転生したら全知全能の神仙ショタだったので魔女を家畜にハーレムでやりたい放題する話・中編

災いの子ムンリトと玄徹真君ヨーハン、暗行夜叉セーそのほかの物語。 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 続きを読む
5
前へ 1 ・・ 6 7 9 次へ
帽子男 @alkali_acid

少年は小さな髪飾りを一つ、鎧のかくしから取り出し、暗い泥濘に落とした。 “ドゥニドゥニエンヌが、汝を思い、作り上げた飾。ほかの魔女に守られたかの魔女は、誰よりも強く思いを保ってきた”

2018-08-26 17:09:17
帽子男 @alkali_acid

“災いも悲しみも…乗り越える絆を…望みを今こそ示すべきときだ、うなばらのおおきみ。四元のうち最も偉大なる媼よ” 泥の腕が伸びて飾りを掴む。ムンリトが微笑んだせつな、さらに無数の腕がその鎧の四肢をとらえ、そのまま水面に上昇した。

2018-08-26 17:11:36
帽子男 @alkali_acid

おおしけの洋上で、へどろが四方を囲み、おぞましい醜貌がいっぱいに神仙のすぐ目の前に迫っていた。 「そなたがわらわを目覚めさせたのかえ」 「はい」 「ドゥドゥの飾を…もっておるのは、あれは…無事かえ」 「いいえ」 ムンリトは正直に答えた。 「神仙の家畜になりました」

2018-08-26 17:14:08
帽子男 @alkali_acid

へどろの巨躯がおののくと轟きだけで耳を聾さんばかりだった。 「あれは…ほんの幼い娘であったぞ」 「はい」 「なぜ…さような真似ができるのだわえ…神仙は」 「なんとなく、でしょうか」 「そうかえ」 少年は何かを作動させようともがいた。 「汝が探しておるのはこれかえ?」

2018-08-26 17:16:41
帽子男 @alkali_acid

切り札を収めた容器を泥の腕がつまみとっていた。 「はい」 「そうかえ…ならば汝も困ったことになったわえ。神仙」 「そうですね」 「周到そうな子だわえ。もう一つ隠してあるのであろ。このように」 もう一つの容器をまた泥の腕がつまみとる。 「あたりです」 「汝は困ったことになったわえ」

2018-08-26 17:18:57
帽子男 @alkali_acid

「まったくですね」 「さていかにするのだわえ」 「降参でしょうか」 「おおそうかえ。するとわらわは汝をいかにすると思う」 「わかりません」 「まずそのこづらにくい鎧の隙間からたっぷり毒を流しいれる。汝がもがき苦しみ、神仙らしくもなく命乞いをするのを仲間に聞かせてから」

2018-08-26 17:20:33
帽子男 @alkali_acid

泥の媼はにんまりした。 「生かしておいてやるわえ。ずっと。毒にむしばまれた汝を。いつまでも。いつまでも…汝等の仲間にずっと見せてやるわえ。わらわのドゥドゥを傷つけたものがどうなるかを…よく教えてやるのだわえ…みずからがそうなる心の備えができるように」 「こわいですね」

2018-08-26 17:22:30
帽子男 @alkali_acid

「では始めようかえ。せいぜいかわゆく鳴きや…虫けら」 たちまち猛毒のへどろがすっぽりと甲冑を包み込んだ。

2018-08-26 17:23:50
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ “あれでどうやって助かったのだ” 「なんとなく」 “今度ばかりはんとなくでは通じん” 「交信がとぎれているあいだに僕の秘められた力が働いたのかもしれません」 “確かに太陽のかけらに似たる力は発動した。ヘドローバは海上で蒸発したと思われる” 「よかったです」

2018-08-26 17:25:51
帽子男 @alkali_acid

前回に輪をかけた師父の困惑をよそに弟子は青黒く変色した甲冑のフジツボを落とそうとして、諦めた。 「これ、ついたままでもいいですか」 “ただの海棲生物ではなさそうだが。一度戻って調べ整えた方がよいぞ” 「いえ。ほかの怪物が滅ぼされたと知れば、魔女の森の守りは固くなります」

2018-08-26 17:28:13
帽子男 @alkali_acid

ムンリトは淡々とヨーハンに説明する。 「魔女の森には怪物が二体。それに」 “森の女王リリがいる” 「はい」 “お前は森の女王リリに会い、捕えるつもりだな” 「はい」 “その話をなぜしなかった” 「交信では話せません」 “なぜだ” 「聞き耳をたてているものがいるかも」

2018-08-26 17:30:31
帽子男 @alkali_acid

“分かった” 「ヨーハン。神仙のさまざまなくわだてには優先の順がありますね」 “ある” 「僕とあなたのくわだてが、優先の一番に来るようにしなくては」 “むろんだ” 「よろしくお願いします」 “成功を祈る”

2018-08-26 17:32:41
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 紫電改ロックの墓所は、巨大な甲冑と一つになった大樹だった。 周囲には喫菜がいたが、ムンリトが近づくと退いた。 拝むように二つに合わさった籠手の掌を、神仙の仔はしばらく見上げていた。 「何か思うことでもあるか、ムンリト」 「こんにちはハヴァフ」 白い男児が顔を出す。

2018-08-26 17:35:24
帽子男 @alkali_acid

銀髪に色素を欠いた肌には氷の結晶が花となって咲いている。森の大気は暖かかったが、小さな冬鬼の族長のまわりは冷え冷えとしている。 「初めて会った時、余は貴様の血から人食いの味がすると言ったな」 「はい」 「あたっていた」 「そうですね」

2018-08-26 17:37:29
帽子男 @alkali_acid

「甘ったれの貴様の仲間、シュトイやサルウ、ウィリンカは皆悲しんでいる。貴様の仲間を」 「はい」 「それはよいがカズサも落ち着かぬ」 「そうなんですね」 「何とも思わぬか」 「…ハヴァフ」

2018-08-26 17:39:30
帽子男 @alkali_acid

少年は、ほほえみを見せず、まじめな表情で見返した。 「あなたが皆の友達になってくれて、とてもよかったです」 「…ふん。余はカズサを心配しただけだ。さあ通れ。このむくろは冬鬼とは何の縁もない」 「ありがとうございます」 冬鬼の仔が木々のあいだに消える。

2018-08-26 17:41:49
帽子男 @alkali_acid

紫の甲冑に近づくと、少年はみずからも甲冑を守った。胸にある槽のうちひとつが紫の光を点している。 “ロック…雷のもののふ…忠義の人、ただひとりの主君に仕え、ただひとりの主君を愛した。燈の魔女ヴェルヴェルーチは…助けを待っている。死してなお残る忠義があるなら、いまひとたび槍を振るえ”

2018-08-26 17:45:05
帽子男 @alkali_acid

詠唱してから、数歩さがる。まるで目覚めるのを恐れているかのように。 “どうしたムンリト” 「なんでもありませんヨーハン」 “元は尚武であったにせよ、もはや怪物だ。ためらうな” 「それは気にしていません」 霹靂が迸り、甲冑が巻き付いた木を引きちぎって動き出す。 「ぬうううううん!!」

2018-08-26 17:47:18
帽子男 @alkali_acid

雷を放つ紫の巨人は、槍と盾とを掴んで立ち上がった。 「ぬ?これはお初にお目にかかる。拙者はロック。尚武のもの」 「僕はムンリト。神仙です」 「ぬん!神仙!おぬしヴェヴェ殿を知らぬでござるか。拙者の主君にござる」 「ヴェヴェさんは、神仙の家畜になりました」

2018-08-26 17:50:03
帽子男 @alkali_acid

「ぬ、ぬう…!!」 「ヴェヴェさんは家畜として薬や拷問を与えられ、今はセーという尚武だった方に無理矢理身も心も奪われそうになっています」 「ぬう!!!!!」 「僕はその神仙の仲間です」 「つ、つまり」 「敵です」 「ぬぬううう!!!」

2018-08-26 17:51:36
帽子男 @alkali_acid

ロックは四方八方に雷を飛ばした。 「しかし、おぬしは悪いやつには見えぬでござる」 「そうでしょうか」 「ぬん」 「…でも悪いやつだと思います」 「いや、見えぬでござる」 「…困りましたね」

2018-08-26 17:52:47
帽子男 @alkali_acid

少年は黄金のマントをひるがえし、真紅の大剣を振るって斬りかかった。 「ぬん!!」 巨人は槍で防ぐ。 「何をするでござる」 「敵なので」 「しかしおぬしの太刀筋には迷いがあるでござる」 「ないです」 「いや、戦うのがつらくてたまらぬようでござる」

2018-08-26 17:54:09
帽子男 @alkali_acid

「気のせいでしょう」 「ぬう…あい分かった!」 「なんでしょう」 巨人はあぐらをかく。 「おぬしの好きにするでござる」 「あなたを殺すことになりますが」 「ぬん!拙者は死なぬ!」 「…困りましたね」 少年は小さな容器を取り出した。 「でもまあ折角ですから」 閃光が迸った。

2018-08-26 17:55:50
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ “交信をしてだいじょうぶか” 「はい。森の女王リリはやはり眠りについているようです」 “雷怪ロックは奇妙だった” 「ああいう方なんですか?」 “私はあまり面識はないが、初期に産まれた尚武はおかしなところが多い” 「セーさんのように」 “そうだ” 「簡単に勝てたのはよかったですね」

2018-08-26 17:58:50
帽子男 @alkali_acid

師父とやりとりをしながら、少年は紫がかった槍の穂先を兜にはめこんでいた。 “ロックの槍穂を得たのか。いつだ” 「さっきです」 “それは組織として有効なものか” 「雷怪は乗り込んでいる甲冑と一体化していたようでした」 “では肉片と言うべきなのか” 「そうですね」 “もし違えば” 「困りましたね」

2018-08-26 18:00:48
前へ 1 ・・ 6 7 9 次へ