編集部イチオシ

cdbさんの映画版「響」感想

「響」原作がどうにも好きになれなかったのだけれど、この人の解釈を聞いてもう一回読んでみようかなって気持ちになりました。 これが正解だとは思ってなくて他にも解釈の余地有ると思いますが、私はこの感想好きです。
15
ナガ@映画垢🐇 @club_typhoon

映画「#響HIBIKI 」の感想を書きました。#平手友梨奈 さんも素晴らしかったんですが、#アヤカウィルソン がとにかくすごい。月川監督またやってくれましたね…!! 【ネタバレあり】映画『響』感想・解説:月川監督、うっかりアヤカ・ウィルソンを発掘しちゃったの巻 club-typhoon.com/archives/2018/…

2018-09-16 11:36:46
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

映画『響 -HIBIKI-』感想。ある特殊な人物像を演じることに特化した役者を「性格俳優」と呼ぶのだけど、平手友梨奈には間違いなく「性格女優」としての資質はあると思う。私見を挙げれば、庵野秀明という映画監督はたぶんこの子の演技をすごく欲しがる。彼女だけ庵野映画のリズムで呼吸し演技している

2018-09-21 23:54:49
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

平手友梨奈の演技の優れた点は、響の優秀さや才能ではなく「響には何ができないのか」という欠落の表現がすごく卓越していて、響は普通のコミュニケーションが取れない、文字の世界に生きている子で、ある意味ではヘレン・ケラーのように、一般人に見えるものが見えていない。その表現がとても上手い

2018-09-21 23:56:24
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

『レインマン』のダスティン・ホフマンが演じたレイモンドのように「イディオ・サヴァン(愚かな天才)」と呼ばれる、欠落と才能が背中合わせになった人物像が映画の系統にあって、鮎喰響はある意味で文学的サヴァン症候群みたいな所がある。その欠落、心のエッジラインを抑えた演技で表現している。

2018-09-21 23:57:25
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

原作の鮎喰響って、もっといかにも偏差値が高くて優秀そうなんですよね。キャラクターとして少女の形はしているものの、思春期の少年のエリート意識、知的な特権意識を投影しやすい「無双キャラ」なんだけど、平手友梨奈の響は無双でも超人でもない。そこに実写的なリアリティを構築できてると思う。

2018-09-21 23:58:08
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

『響』の原作がイヤっていう人は結構多くて、あの世間知らずな全能感、マッチョな自意識が嫌いという声はあるでも平手友梨奈の響ってそういうマッチョさをすごく上手く脱構築して、脱力した天衣無縫な響になっている。サヴァンとしての鮎喰響、強者であり弱者でもある響の人物像にすごく魅力がある

2018-09-22 00:00:30
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

この「響はある面では何もできない、何も知らない子なんだ」という平手版の解釈が逆に響の才能の突出にリアリティを与えていて、昼間は半分目を閉じて眠りこけていたフクロウが、世界に文学の闇が降りた瞬間に翼を広げて飛びたつような躍動を見せる。そのギャップはすごく映画的に成功していると思う。

2018-09-22 00:01:16
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

平手友梨奈の響って原作よりガーリッシュなんですよね。原作は絵柄もあってボーイッシュで尖った子なんだけど平手友梨奈の響には「いわゆる女の子らしさ、女子力」とは別の、物を書いて考えている女の子の無意識のよどみ、ダークな沼のような深みがある。ある意味では究極の同人女子みたいな所がある

2018-09-22 00:02:43
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

だから僕は、平手友梨奈の響って原作からかなり解釈を変えていると思う。にも関わらず「平手友梨奈は響そのもの」という声が多いのはキャラクターの芯を捉えているからで、上手い文章家が単語を入れ替えて書き直しても、書いた相手に「そう、本当はそれが言いたかった」と言わせてしまうのに似ている。

2018-09-22 00:03:33
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

これは原作と映画だけではなくて、秋元康ら運営が世間に対して押し出そうとしている平手友梨奈像って、ある意味では原作の『響』と同じように天才、カリスマというマッチョに偶像化されたイメージなんだけど、彼女自身がそういう自己イメージを脱構築してガーリッシュで自由な平手友梨奈を見せている。

2018-09-22 00:04:12
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

これは映画からは離れるけど、日経エンタテイメント女優SPという雑誌の月川翔監督のインタビューで「秋元康さんと話した時に『平手は尾崎豊みたいだなあ』とポロッと言っていた」という言及があって、ある意味では運営がそう意図してる面があると思うんですよ。でも当たり前だけど、それは危険なことで

2018-09-22 00:05:17
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

だからこの映画の平手ちゃんの演技を褒めることがそういう運営の「偶像化」に荷担しないか心配ではあるんだけど、映画としてはそうなってないんですよね。偶像ではない、鮎喰響も平手友梨奈も尾崎豊にはならない、尾崎よりも長く生きてもっと遠くまでいくんだという映画になっている。そこは良かった。

2018-09-22 00:05:34
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

『響』についてはまだ色々書きたいことがあり、特に月川翔監督については『黒崎君の言いなりになんてならない』のころから注目している監督で、今回も演出の素晴らしさについて書きたいのでまた追加します。長すぎるのでいったんここまで一区切り投稿。いつものようにスレッドで書き加えて行きます。

2018-09-22 00:05:51
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

あ、アヤカ・ウィルソンの演技もすごく良いです。平手友梨奈=鮎喰響と正反対の、本当の気持ちを言いたいのに愛想笑いを浮かべて忖度してしまう、日本的な曖昧さから逃げられない普通の子を演じていて、響との対照性が生きている。ナガさんも書くとおり月川監督の発掘だと思うtwitter.com/club_typhoon/s…

2018-09-22 00:20:47
ナガ@映画垢🐇 @club_typhoon

自分も映画見た後に原作を読んで、随分と響というキャラクターのイメージは違うなぁと感じました!ただどちらが良い悪いではないですし、映画版の響は平手友梨奈だからこそ!! twitter.com/c4dbeginner/st…

2018-09-22 00:40:41
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

月川翔監督については、これまでも「黒崎くんの言いなりになんてならない」「センセイ君主」などの過去作の演出について言及してきたんだけど、ジェネレーションムービー、十代を対象にした原作の映画化する時のバランス感覚がズバ抜けてるんですよね twitter.com/i/moments/1034… twitter.com/i/moments/8148…

2018-09-22 06:45:18
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

今回の映画『響 -HIBIKI-』でも、原作で「これ漫画はともかく実写映画だと見るに耐えないな」という部分は全部カットして再構成している。固有名詞でハッタリをかますつもりが逆効果になってる純文学論みたいなのは全て捨ててるし、無駄な暴力描写も削って、それでいて響の尖った危険さは残している

2018-09-22 06:49:51
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

原作の『響 ~小説家になる方法~』って、タイトルでも判るとおり「小説家になろう」サイト、いわゆる「なろう小説」を書いてる子の全能感、超人願望をターゲットにして無双させるコンセプトがあるわけですその欲望を受け止めつつ社会の中に映画として着地させる大人の映画監督としての手腕がある

2018-09-22 06:54:04
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

月川翔監督映画にはティーンズポルノと性教育を両立させてるような所があって、『黒崎くん』の小松菜奈と中島健人が王と下僕を入れ替えながら階段を上っていくラストシーンも、『センセイ君主』で浜辺美波が大好きな先生のために歯を食いしばって自立する描写も原作にはないんですよ。今作『響』もそう

2018-09-22 07:08:19
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

月川翔監督が映画版の『響』で興味深いのは、鮎喰響が自分の携帯を持っていない設定なんですよね。響から編集者に架けるときは固定電話から、編集者から架かってくる時も友人の凛夏の携帯に架かって響に渡す。原作はガラケーを持っているんだけど、映画では一切ない。ラストも警官の携帯を借りている。

2018-09-22 07:18:39
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

この時代になんで響が携帯を持っていないのかというと、文学に溺れているから承認を必要としないんですよね。社会がネットやSNSの波に呑まれて付和雷同していく時代に、高校生の少女が一人だけ誰も読まなくなった純文学を読み続けている。そして作家たちに彼らが捨てた『文学』をつきつけにやってくる

2018-09-22 07:24:42
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

『響』って、実は天才的な作家の物語ではなくて、天才的な読者の物語であり、高校生の批評家の物語なんですよ。鮎喰響が鬼島仁、メディア出演に溺れる芥川賞作家を蹴り上げた後に吐く「あなたは昔、天才だったでしょ?」という言葉は文学について語っている言葉で、文学を愛する読者からの言葉でもある

2018-09-22 07:29:52
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

最後のクライマックス、芥川賞に落選して自殺しようとする不遇の作家、小栗旬の演じる山本春平と響が踏切で対峙するシーンも、実は作家と作家の対決ではなく、読者としての響が立っているんですよ。映画の中盤で、実は響が自宅の部屋で『豚小屋の豚』という山本の小説を読んでいる場面が挿入されている

2018-09-22 07:41:26
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

たった四千部しか刷られない純文学を、携帯やネットに背を向けて読む高校生の少女がいる。家族に買い物を頼まれて『豚小屋の豚』に栞をはさむということは「続きを読もう、面白い」と思ってるわけです。だから踏切の響は山本を天才作家として憐れんでいるのではなく、彼の読者として怒り狂っているわけ

2018-09-22 07:45:15
CDB@初書籍発売中! @C4Dbeginner

「作家の分際で読者を否定してんじゃねえ」という響の言葉は、文学を捨てようとする作家に対する響の怒りで、このクライマックスで映画で描かれる響の暴力が何に対する怒りなのかが明らかになる。響は読者の象徴、作家に対する読者からの反響の響きで、文学に対する破壊と慈悲、怒りと愛の神でもある。

2018-09-22 07:55:11