迎えに来て、王子様

rin @5ty_r

大きなプロジェクトがひと段落したからチームで飲み会に来たんだけどジジイ上司に半ば強引に飲まされてやばいかも…ってなってる私を同期の大倉が助けてくれるお話。 #エイトで妄想 odaibako.net/detail/request… #odaibako_5ty_r

rin @5ty_r

気持ちわる…。トイレの個室で吐き気と戦う私。全てはあのクソ上司のせい！訴えてやろうか？！と思うけどまだ入社2年目の私には何もできず。とりあえず体調悪いって言って帰らせてもらおうと思って席に戻ると飲み会特有の知らないうちに席交換がされてて、遠くにいたはずの大倉が私の席に隣にいた

rin @5ty_r

「おーくら、ごめ、かえる」『ええ〜？◯◯帰んの〜？』こいつはだいぶ出来上がってんな。気分良く飲めるだけ羨ましいわ！高身長イケメン、よく笑いよく食べるTHE・好青年で社内からも社外からも人気ナンバーワンの同期、大倉忠義は酔うとこの有様。ぐでっぐで。

rin @5ty_r

そしてなぜか彼に気に入られて頻繁にしょーもない連絡したり、貴重なノー残業デーに二人だけで飲みに行ったりもする。付き合ってるの？！っていろんな人から聞かれるけどきっと彼は私を喋るぬいぐるみ、くらいにしか思ってないだろう。その証拠にみんなの前では好青年な大倉のブラックな部分知ってるし

rin @5ty_r

だからちょっと高いイタリアン奢らせたりもする。けど私が大学から3年付き合ってた彼氏と別れた去年の冬、大倉に相談はしてたから一応【フられちゃった〜（笑）】って落ち込んでません風にメッセージ送ったら速攻で既読がついて電話がかかって来たのね。『もしもし』「うん」『泣いてへんの？』

rin @5ty_r

「必死に耐えてるんだからそんなこと言わないで…」大倉の穏やかな声のせいで我慢してた分が一気に溢れて来たら、『今家おるでしょ？めっちゃオシャレして待っとき』って言って一方的に電話切られた。よくわからないけど急いで着替えて目が赤いままメイクして髪の毛も緩く巻いたら大倉が車で迎えに来た

rin @5ty_r

こいつは背もあるし顔がいいから何着ても様になる。顔は好き、うん。と思ってると『こういう時はなんでも知ってる友達に頼るのが一番やで〜』とか言いながら車でさらわれる私。「どこ行くの？」『どこ行きたい？』「いやなんでデートみたいなテンション？」『アホか（笑）』

rin @5ty_r

あー、大倉と話してるとどうでもよくなる気もする。結局大型のショッピングモールに来て私が見たい！ってずっと言ってた映画を見せてくれたり。そこからまた少し車を走らせて夕方にめちゃめちゃオシャレなイタリアンバルに連れて行ってくれたり。しかもえーの！の一点張りで全部大倉持ち。

rin @5ty_r

結局コイツのおかげで引きずることもなく前に進めたから感謝はしてる。が！酔った大倉は別人のようにダルい。ダル絡みの代名詞ですよねって感じ。他の女の子は隙あらば襲ってやろうくらいの勢いなのでは？って程にがっつくし。いや〜イケメンは大変だね〜

rin @5ty_r

「今日はマジでギブ、じゃあね」って言って帰ろうとしたら『まってぇ〜』って薄目でふにゃふにゃした顔の大倉から間延びした声が聞こえる。と同時に長い腕で私が持ってたカバンをつかんだせいで転びそうになる。くそやろうめ。

rin @5ty_r

『俺も今日限界やわ、かえる』とか言って一緒に店を出てきた。はあああお前は何も知らんのだろうけど(いやコイツの腹黒さ的には気づいてるかもしれないけど)私！女子から！冷ややかな目で見られちゃう！店を出て駅まで歩こうとするにも頭がぐわんぐわんしてうまく歩けない。平衡感覚どこいった、、？

rin @5ty_r

やばい、と思ったら大倉がしっかり受け止めてくれて一安心だけどいやまてよ、大倉も最高に酔っ払いだから力ないんじゃ…と思ったのに『歩ける？大丈夫？』って普通の声。え？と思って見上げると店の中での酔っ払い具合が嘘みたいにいつもの大倉がいる。「？？」『なにハテナ浮かべてんの』

rin @5ty_r

「酔ってたんじゃ…」『今日は酔ってへんよ』『ウーロンハイのフリして烏龍茶飲んでた』だって。あ、そうですか…。と思ってたら目の前で急にしゃがむ大倉。『ん』「は？」『歩けへんのやったらおぶるしかないやん』「いやいやいや！だったら這ってでも自分の足で駅行くよ！！」

rin @5ty_r

『乗りって』「やだ」『早くして？！俺が恥ずかしいわ』「立ちなよ」『いやや！』なんだこのやり取り。路地裏の店でよかったわ、、「とにかく大丈夫だから」って言って歩き出そうとしたんだけど結局うまく力が入らずによろけちゃう。そんな私を見て『ほらもう諦めた方がええって』って半笑いの大倉

rin @5ty_r

結局諦めておんぶしてもらう。重い！とか言われると思ったのに『あんだけ飲み食いしてこんなに軽いってなんなん？普段なんも食べてへんの？内臓売った？』とか言われた。大倉の背中の上で感じる揺れが心地よすぎて眠くなりながら「んー」とだけ答えておく。

rin @5ty_r

『お前がめっちゃ飲まされてんの見て飲むのやめたんやから感謝してな』「あ、りがとー」『ほんまに思ってるんかそれ（笑）』もう半分夢の中にいるけどぽつりぽつりと話し出す大倉の声が聞こえて一生懸命意識を声に集中させる

rin @5ty_r

『チーム内にもな、他の部署にもお前のこと狙ってる男おるの知らんやろ』『そんな奴らの前でこんな酔ってたら一発で持って帰られるで』とかなんとか。なーに言ってんだ。『酔ったフリして一緒に店出られてセーフやったわ〜。俺演技の才能あるんちゃう？』「はは（笑）」『笑い事じゃないって』

rin @5ty_r

「おおくら、意外と体しっかりしてるねー？」思ったことが判断を通さずに口に伝わってつい言っちゃうのが酔った時のたまに出るよくない癖。『なんなん急に』『まあ鍛えてるからなあ』「へえ」『いつでも姫のピンチから救えるように週3以上ジム通ってんねん』「姫」『そう、姫』「へんなの」

rin @5ty_r

『俺の姫の話聞く？』「聞かない、眠い」『今すぐ地べたに落としてもええんやで？』「バカ義」『俺の姫はな〜』結局喋るんかい。『普段は普通にしてるんやけど実は弱虫やしすぐ泣くし一回泣いたらなかなか泣き止まんし』ええ、なにこれ？のろけなの？

rin @5ty_r

どうしようぜんっぜん、聞きたくない。あの日、私を慰めに連れ出してくれた大倉があまりにも優しくてかっこよくて、不覚にもときめいてしまった自分がいたのは覚えてる。別れた直後でなんて尻軽女だ！って自分に言い聞かせたりもした。それからはこの小さなモヤモヤと共存して来たわけですが。

rin @5ty_r

今わかってしまった。多分私は彼のことが好き、だ。そしてそんな彼は今私を背中に抱えながら好きな子の話をしようとしてる。大倉、好きな子いたんだ…ええ、やだこれ、今なら全力で走れる気がする。何だかんだ特別扱いされてる気がしていい気になってた私がバカだった。

rin @5ty_r

『俺も数回しか見たことないんやけど、弱音吐く時むっちゃかわいい。小さい体でよく踏ん張ってんなーかわええわー、って思うと毎回抱きしめそうになるけど今の関係崩したないし、どうしよって思って…え？◯◯？なんで泣いてんの？』あまりにも嫌すぎて気づいたらポロポロ泣いていた。

rin @5ty_r

「かえる」『え？』「おろして」『なんで？俺なんかした？！』明らかに何もわかってなくて動揺してる。「帰れるから、おろして。お願い…」逃げ出したいと思えば思うほど涙が出てくる。『…いやや』『俺の話最後まで聞け』静かに、命令されると逆らえないことがわかった。ちょっと怖い。

rin @5ty_r

『ほら、俺の姫今も泣いてんねん』『はよ泣き止めや〜なんで俺が泣かせたみたいになってるん〜』「お前の好きな子の話とか聞きたくないし、」『聞きたくなくて泣いた？』「うん」『子供か（笑）』『ていうかなんか反応してくれへん？俺今一応言うたやんか』「え？」『はぁ？』

rin @5ty_r

「ごめん本当にわかんない、もう一回言って」『俺の姫、今俺におぶられながら泣いてんねんけど』『ピンチ救えたし鍛えてた甲斐あったわ〜』「え」『…なんなん（笑）もうちょっと可愛い反応ないの？』「ちょっとよくわからない」今大倉に背負われながら泣いてるのなんて世界中探しても私しかいない