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400年前の三世ものスピンオフ三国志小説! 江戸時代から日本各地で読まれ続けた三国志演義続編の日本語翻訳に関する話。

三国志演義の続編として、中国の明代に書かれて刊行された書物に「三国志後伝」というものがあります。日本に渡り、「通俗続三國志」・「通俗続後三国志」として翻訳され、現在でも古書やネットにおいて読むことができます。中国では三国志後伝は長い間、忘れ去られていましたが、「通俗続三國志」・「通俗続後三国志」は日本における江戸時代の三国志ブームの中で、何百年もの間、昭和に至るまで刊行されてきました。その変遷と流通を日本における三国志演義の受容とともに語るものです。こちらのまとめの姉妹編となります。https://togetter.com/li/1247279
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

また、「通俗漢楚軍談」は、「長尾論文」によれば、「後世への影響の大なる点、異版の数の多さから推測され得る発兌部数の多さ、と同時にそれが示す世上の人気に高さなどの点から見なして、「通俗三国志」に十分比肩し得る作品とすることができよう」とされています。

2018-11-16 21:48:46
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

また、刊行も元禄8年(1695年)と近いです。そのため、比較的、流通したと思われる、この二作品を比較として選んでいます。なお、「漢楚軍談」からは、異本とみなしてものは、外しています。

2018-11-16 21:49:10
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

結果を再度、お見せします。特に、「通俗漢楚軍談」とは圧倒的な差がつくと思われましたが、「通俗続三国志」はその4割程度、現存することが分かります。「唐玄宗」で検索しても「通俗唐玄宗軍談」以外はほとんどなかったので、江戸時代に人気のある盛唐を上回る流通を誇っていた可能性もあります。 pic.twitter.com/ifAZEzQ1Nh

2018-11-16 21:49:47
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これは、当時としてはかなり流通していたとみなしていいのではないでしょうか。漢楚や盛唐みたいに、川柳や講談の題材にされるなど、特定のファンの存在がほとんど確認されないことを考えれば、なおさらです。

2018-11-16 21:50:17
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

ただ、「通俗続後三国志」に関しては、前編・後編があり、片方だけ所有している図書館もあることを考えると、あまり流通しなかったようです。

2018-11-16 21:50:32
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

残念ですが、話の分かりやすさ、面白さを考えると、「通俗漢楚軍談」と「通俗続三国志」・「通俗続後三国志」の差はあると考えますので、納得できるものがあります。

2018-11-16 21:50:49
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

続いて、再版状況と日本各地への流通の調査です。これは、置いている大学図書館・大学と、そこに記載された刊行年で調べます。基本的にその地方に存在した図書が、現地の図書館や大学に置かれ、もしくは寄贈される傾向があると思われます。

2018-11-16 21:51:09
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こちらについては、大学の図書館も調査にいれ、国立情報学研究所の全国の大学図書館等が所蔵する本(図書や雑誌等)の情報を検索できるサービスCiNii Booksの図書検索も、かぶっていると思われるものを外して、あわせて利用します。

2018-11-16 21:51:28
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

「通俗続三国志」の調査結果がこちらです。寛永元年とあるのは宝永元年とあるものの間違いと思われるので、そちらに含んでいます。CiNii Books検索結果の九州大学のそれぞれ37巻・38巻の38件は分冊かもしれないので、九州大学×2と記載しています。 pic.twitter.com/BfcJGggoer

2018-11-16 21:52:34
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これを見ると、初版から12年経って、正徳六年(1716年)に再版が行われていることが分かります。「通俗続後三国志」の発行で新たな読者が生まれ、要望が多かったのかもしれません。また、書誌の所在については、中部地方ばかりか、東北・九州にも分布しています。

2018-11-16 21:53:04
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

特に、肥前島原松平文庫のもの、また、盛岡中央公民館のものは南部家文書、佐賀県立図書館のものは鍋島文庫とありますから、各藩で所有していた可能性が高いでしょう。また、韓国国立中央図書館所有のものは日本から輸入されたものでしょうか。

2018-11-16 21:53:24
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

これは「通俗続三国志」の普及が、地方にまで広がり、輸出されていた可能性すらあることを示していることと思われます。

2018-11-16 21:53:44
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

こちらは、「通俗続後三国志」です。正徳二年・享保三年の双方の記述のある図書館については、前後編ともに置いてあると判断しています。初版の後、百年以上経過して、文政六年(1823年)に前後編ともに再版しています。 pic.twitter.com/18npnuiQg0

2018-11-16 21:54:17
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まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

なお、内容の画像を確認したところ、文政六年の再版は、尾田玄古が撰した、史実や「通俗続三国志」の内容をまとめた、大まかな人物紹介である「首巻續後三國志姓氏」がないものがあるようです。こういった違いも確認することができます。

2018-11-16 21:54:51
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

こちらも東北や長崎に置いている図書館が及んでいます。宮城県図書館のものは伊達文庫とあるため、藩で所有していたものと思われます。これは、地方にまで普及していることを示唆するものでしょう。

2018-11-16 21:55:09
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

以上、確認のためには本格的な調査は必要としますが、おおざっぱにデータベースで見た限り、「通俗続三国志」・「通俗続後三国志」についてはいえることはこうなります。

2018-11-16 21:55:27
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

①正徳六年と文政六年に再版されていること。② 現存する書誌が多く、東北地方や九州地方にも現存していること、③現在では韓国にも存在し、輸出された可能性すらあること、④以上により、それなり以上の売り上げがあったと推測できること。 です。

2018-11-16 21:55:55
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

なお、「日本古典籍総合データベース」base1.nijl.ac.jp/~tkoten/の頁から皆様も検索ができます。画像を見ることができるものも多いので、原本を見ていただけると、当時の書誌が持つ雰囲気が伝わってくるのではないかと思われます。

2018-11-16 21:56:16

## 7 明治時代以降の通俗三国志・通俗続後三国志の展開について

まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

江戸時代も終わり、明治時代もはじまりましたが、明治15年(1882年)から翌年にかけて、漢文学ブームが起こりました。

2018-11-16 21:58:46
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

その時流に乗り、兎屋誠(うさぎ屋誠)という出版社から、春風居士訳編として、「通俗續三國志 巻一」が明治15年(1882年)11月に、「通俗續三國志 巻二」が明治16年(1883年)2月に、発行されました。

2018-11-16 21:59:01
まめ@史記人物大好きクリエイター @mamesiba195

これは、約30頁の糸綴じの簡略なつくりの袋綴装と呼ばれる種類の和装本です。訳編とありますが、「三国志後伝」を直訳したものではなく、中村昂然の「通俗続三国志」を漢文調で要約したもので、巻三以降は発行されたかは定かではありません。

2018-11-16 22:00:13
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