あのラノベはこう映画化せよ！

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『新幹線大爆破』の出だし。ひかり109号に特殊な爆弾を仕掛けて国家を脅迫するという、捕まったら死刑確実の大犯罪に挑む、元自動車速度計メーカー社長。印象的なカット。 pic.twitter.com/E8mrGnUIlB

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私の『～追憶』アニメ版も同じ始まり方。どこか薄暗い、高貴な方がお住まいを思しい部屋の天井をカメラがゆっくりなめていって、カメラが下がる（または切り替わる）と、医者や看護婦とおぼしい人々が、ベッドを囲んでいる。最新の医療機器が並び、電気コードが床を這っている。

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ベッドには誰か老女が横たわっているが、顔は写さない。まわりの医療チームがささやく。「ファナさま」「女王さま」「陛下」　臨終が近づいている。

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カメラが切り替わって、何かをなめながら、医療チームの背中を遠巻きにとらえる。 カメラが左にパンして、ピントが手前に移る。画面奥の医療チームはピンボケになって、代わりに画面左に、これがピントくっきりになって映し出される。老女の執務机と思しいテーブルの隅に置かれた、飛行機の模型… pic.twitter.com/SicAlScSmW

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薄暗い画調を通すのです。画面右三分の二はピンボケなのでほぼ暗闇となり、そこに映画タイトルがふっと浮き上がる。 画面左三分の一に、あの偵察機の模型、右三分の二に映画タイトル。

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pic.twitter.com/8oZ6frFwFm

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ここで画面は、白黒スタンダード、擦り傷がやたら混じる、昔のニュース映画に切り替わる。 アナウンサーが大時代な口調でまくしたてる。「このたび、海のかなたにある友邦国との友好と親善を深めるべく、国宝陛下は、特別親善大使として、王太子殿下と、そのご長女であるファナ・なんたらかんたら妃を

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飛行軍艦の特別艦隊によって派遣されました」 こういうのが海をけたてて空に駆け上がっていく様を、カメラはとらえる。白黒です。 pic.twitter.com/aDPYa0eBtp

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映画内映画（ニュース映画）の画面が切り替わって、海図が浮かぶ。西から東に向かって線がつーっと伸びていって、やがて二手に分かれる。 「王太子とファナ姫はそれぞれ別のコースで、各国の各都市を訪れ、途中のなんとかかんとか市で合流され、わが国との友好と連帯の重要性を訴えられるご予定であり

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ます」とアナウンスがかぶさる。「各地でお二人の艦隊は、現地の飛空機によって迎えられ、市民からの歓迎の喝さいを受けております」　たくさんの戦闘機が飛行艦隊を護衛するかのように空を舞う様を、カメラは地上から見上げる。

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「いずれもわが国の誇る戦闘機アイレス・フォー。いかなる軍事的脅威に対しても、鉄壁を誇る飛空機の傑作といえましょう」

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…と、大本営発表を見せていって、この物語の世界観を手際よく観客にわからせる。 その後は先に語ったとおりの展開に。歓迎と友好パーティが成功裡に終わったその夜、謎の戦闘機群が、王太子と姫の滞在する屋敷を急襲！ 画面が切り替わり、港に停泊する飛行艦隊群が、やはり急襲で燃え落ちていく。 pic.twitter.com/j5l2z7swaU

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王太子は亡くなり、これで姫様は自動的に王位継承権第一位となってしまう。 なんとしても本国に帰還させよ！ かくして海猫作戦が立案され、パイロットが選抜される。 pic.twitter.com/T3jIsdpqjU

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後は前に述べたとおりです。南の島は大洋横断の際の中継基地としてもともと使われていたので、そこにたどり着けば機体修理の部品や機材があるし、居住設備もそこそこあるという新装版の設定を生かすのです。修理を手伝いながら姫様は航空機のしくみ、整備、それに操縦のイロハを一から教わっていく。

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島のまわりを自らの操縦で一周するとかね。海の上を、フットバーをつかって（つまり垂直尾翼についている方向だを使って）ぐるーっと回ったりして、パイロットくんは操縦席の横に、翼の上に立ったまま指示を出すの。プロペラの風にどこまで立って耐えられるものなのか私知らないけどね。

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ほかにも空戦のイロハも教わっていく。敵機１４に囲い込まれながらも逃げきれたのはどうしてか？海面ぎりぎりを這うようにして飛んで、敵機が上から撃ってこれないようにした、等。木の棒を組み合わせて戦闘機に見立てながら、姫様に技を伝授していく。

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料理のコツとかも教わっていく。

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こうやって観客も「ああなるほど飛行機ってこういう仕組みなのか」「うわーあたしもああやって教わってみたいわー」とふたりに感情移入していく。体感を刺激されていく。 現行のアニメ版は（原作もだけど）ここが弱いんですよ。

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姫様は結局パイロット氏からは引きはがされる。そして親善旅行の行きと同じ機種、同じ機数の艦隊に乗せられる。「私は記録からも歴史からも消されるのです」という別れ際の彼の台詞（私のアイディア）がここで生きてくる。彼女が乗せられた大艦隊は歴史のうねりそのもの。彼は乗せてもらえない。

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原作では、二夜目に姫様が「あなたのことが記録からは消されても、私はあなたのことを覚えています」と語りかけますよね。あれもここで生きてくるわけです。

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ＥＤでは一枚絵を順に見せていく。彼女の死後、この敵中横断作戦の全貌が明かされるわけですが、その本の各ページが映し出される。二人の偵察機を追った敵機の元パイロットの老いた顔写真と、本の文字列（この世界の文字だから読めない）。頁が変わると、最後の決闘の際のあのパイロットとおぼしい

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老人の顔写真（原作の続編では戦死するのですがアニメのほうでは生き残る）があってやはり何か文字列。別の頁には、姫様臨終の際にいたひとりの女性の顔写真があって、やはり文字列。

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大瀑布の写真、南の島の写真、ふたりがキャンプをしたという台地の写真、岩礁の写真が、本の内容紹介という体裁で、順にＥＤに映される。 カーテンコールですね。観客は「ああ、あそこだ」「ファナが酔っ払ったところだ」「シャルルが殴り倒されたところだ」と旅の記憶をたどっていく。

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最後は王室の墓地。彼女の墓石がある。鳥がそのうえに止まっている。別の鳥の鳴き声が響く。そちらに首を向ける。その鳥が飛び立つと、墓石にとまっていた鳥も後を追うようにして空に向かって飛び去っていく…終。