貨幣乗数理論という完全なる虚妄

貨幣乗数メカニズムは、流麗で尤もらしいが、現実の経済・金融システムとは全く無関係な空論である。 貨幣乗数メカニズムは一度たりとも実在したことはなく、したがって貨幣乗数が「復活」することもない。
3
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

貨幣乗数理論というのは、根本的に間違った完全なる虚妄なのだが、教科書含め、未だに大手を振って蔓延しているというのが現状である。 かのようなベーシックなところでの誤りがいつまで経っても修正されないのだから、同様にして、財政破綻論が一向に衰えないのも当然と言えよう。

2018-12-13 14:54:51
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

歴史的に見て、公的教育を含めた広範の教育カリキュラムにおいて、誤った事項が教育されてしまうということは別に珍しいことでも何でもないのだが、とはいえ、この貨幣乗数理論という、現実経済とは全く乖離した完膚なきまでの虚構が、高位の学者に至るまで浸透している様子には、深い諦念を覚える。

2018-12-13 14:57:25
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

既に長らく、そして重ね重ね論じてきたことだが、改めて貨幣乗数理論の何が間違いかについて論じておこう。 twitter.com/criticalmind_E…で平易に解説していることだが、端的に言うと、貨幣乗数理論が想定するような「銀行が手元の現金を次々に又貸しして銀行預金を増やしている」という取引は実在しない。

2018-12-13 15:04:02
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ビル・ミッチェルの「貨幣乗数、及びその他の神話」 econ101.jp/%e3%83%93%e3%8… や、「貨幣乗数 ― 行方不明にて死亡と推定」 econ101.jp/%e3%83%93%e3%8… などもご一読願いたいが、銀行融資というのは、単に銀行負債=銀行預金の新発という形を取るのであって、融資自体は現金準備or拠出を必要としない。

2018-12-13 15:34:31
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

そして、銀行預金の増加に応じて、銀行預金決済を通じた現金需要(銀行間決済や対政府決済など)がある程度増える。例えば、新規融資による信用創造を1000億行う場合、平均的に現金決済需要が100億増えると仮定するならば、

2018-12-13 15:41:41
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

銀行は、1000億の融資による収益と、100億の現金調達のコスト(=短期金利)を比較して、融資の是非を決定することになる。 ここで重要なのは、現金調達のコスト=短期金利は、中央銀行の短期金利誘導政策に基づき、一定の値(政策金利)に誘導されているということである。

2018-12-13 15:43:04
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

中央銀行は、予め誘導する短期金利(政策金利)を決定し、それに基づいて受動的に準備預金量を随時調節しているのであるから、銀行も、手元の準備預金量ではなく、今後の随時の準備預金調達にかかるコスト(即ち短期金利)を元に、新規融資の是非を決定する。 したがって、準備預金量は無意味である。

2018-12-13 15:45:16
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

なお、法定準備を議論に加えても含意はほとんど変わらない。(最初に法定準備を除いて話をしたのは、法定準備を加えても含意が変わらないということに加えて、法定準備制度の無い国々も普通に存在するから) 法定準備制度は、新規の信用創造によって発生する現金需要をさらに追加するものなのだが、

2018-12-13 15:47:16
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

既に論じたように、中央銀行は、政策金利を目標値として短期金利を誘導するのであり、準備預金需要が増えるなら、それに応じて準備預金を追加する。つまり、法定準備制度が準備預金の需要を増やし、短期金利上昇圧力となるなら、当該需要を充足するように準備預金供給を増やすだけなのである。

2018-12-13 15:48:50
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

したがって、法定準備制度は、銀行の信用創造を制限するものには全くなっていない。 銀行の信用創造を実態的に制限しているのは自己資本比率規制なのだが、通常の買いオペのような、国債と準備預金を交換するような政策は、銀行の自己資本を増やさないので、銀行の融資余力は変化しないことになる。

2018-12-13 15:50:17
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

この手の 「法定準備制度は銀行融資を制限するものにならない」 「銀行融資を制限しているのは自己資本比率規制であり、量的緩和は融資余力拡張にはならない」 という話はビル・ミッチェルの「銀行融資は―準備預金ではなく―自己資本によって制約されている」 econ101.jp/%e3%83%93%e3%8… に詳しい。

2018-12-13 15:53:07
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

以上の議論から、 ①貨幣乗数理論が想定するような、現金又貸しによる銀行預金創造はない(銀行預金は、手元の現金とは無関係に、銀行負債として新規発行される)。 ②銀行の投融資は、準備預金量ではなく、準備預金調達コスト=政策金利と投融資収益率の比較に基づくのであり、準備預金量は無意味。

2018-12-13 15:59:59
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

そもそも、貨幣乗数理論のような考え方だと、現実の金融調節プロセスがほとんど理解不能になるだろう。 例えば、決算期近辺では、各企業の決済需要の増加に伴い、銀行預金決済の増加と、それに伴う現金需要(銀行間決済、対政府決済)の増加が生じる。仮にマネーサプライが一定だとしても、

2018-12-13 16:02:30
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

こうした決済需要の増加は、現金需要の増加と短期金利上昇圧力を発生させるので、中央銀行は受動的に準備預金供給を増やす。 当然、決算期が過ぎ、決済需要が低くなれば、現金需要が低下するので、短期金利が下がり過ぎないように、中央銀行は供給した準備預金を売りオペ等で回収することになる。

2018-12-13 16:03:33
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

貨幣乗数理論のような、「マネタリーベースを増やせば、それが又貸しされてマネーサプライが増える」というような非実在のメカニズムを想定していると、上述したような金融調節実務が全く理解不能になるだろう。 現実には、銀行融資によるマネーサプライ創造が先にあり、その後に現金需要が発生する。

2018-12-13 16:04:49
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

余談になるが、既に論じたように、中央銀行は政策金利を目標に、受動的に準備預金を調節するのである。そしてその手段は、(短期)国債の売買(公開市場操作、所謂買いオペ・売りオペ)である。 こうした実態から、国債の本質的機能、及び役割が浮き彫りになる。以下に詳説していこう。

2018-12-13 16:12:13
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

国債売買を通じて短期金利(=銀行間のベースマネー融通金利)を調節するということは、裁定的に(短期)国債金利と短期金利を収斂させるということと本質的に同じことになる。 というのは、国債金利の方が高ければ、銀行は国債を相対的に選好してしまい、短期金利が上昇してしまうし、

2018-12-13 16:15:20
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

逆に、短期金利の方が高ければ、銀行は国債を購入せず、インターバンク市場に準備預金を回すだろう。そして、短期金利を一定の目標値=政策金利に誘導するように準備預金量を受動的に調節することは、国債金利もまた一定値に誘導していることと同じことになる。

2018-12-13 16:21:02
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

というよりむしろ、中央銀行は直接的には国債を売買しているのだから、逆に、国債金利(国債価格)の調節を通じて、準備預金の融通コスト=短期金利の調節を行っている、と考える方が合理的である。 短期金利誘導政策は、現実的には、事実上の国債金利(国債価格)の誘導政策となっているのだ。

2018-12-13 16:22:35
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

上記の話を踏まえるとミッチェルが「準備預金の積み上げはインフレ促進的ではない」 econ101.jp/%e3%83%93%e3%8… や、「明示的財政ファイナンス(OMF)は財政政策に対するイデオロギー的な蔑視を払拭する」 econ101.jp/%e3%83%93%e3%8… で論じている『有利子国債と付利のある準備預金は等価』が理解できる。

2018-12-13 16:28:48
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

ゼロ金利政策の場合が分かりやすいので、まずは政策金利がゼロの場合で考えるのだが、既に論じたように、(短期)国債金利がゼロより大きければ、銀行はインターバンク市場の融資ではなく国債に準備預金を回してしまうので、ゼロ金利政策は必然的に(短期)国債金利のゼロへの誘導と同義になる。

2018-12-13 16:37:45
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

中央銀行が(短期)国債金利をゼロに誘導するという事は、(短期)国債の元本額での随時の等価交換を約束することになるの、つまり、額面100万の国債を常に100万で売買可能なように公開市場操作を行うと宣言しているのと同じことになる。

2018-12-13 16:39:57
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

したがって、銀行側から見れば、ゼロ金利政策下において国債は、常に同額の準備預金と交換可能だと中央銀行に保障された資産であるということになり、本質的に準備預金と同一物だということになる。 当然、元々同一物なのだからこの状況で国債と準備預金を入れ替えても(=量的緩和)何も起こらない。

2018-12-13 16:41:30
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

政策金利が正の場合を考えてみよう。仮に2%とする。 方法は二種類で、公開市場操作、即ち国債売買を通じて短期金利2%を達成する場合と、2%の準備預金付利を通じて、短期金利2%を達成する場合である。 この二つを比較することで、有利子国債と、付利のある準備預金の等価性が分かるのである。

2018-12-13 16:44:59
望月慎(望月夜) @motidukinoyoru

そもそも、2%の準備預金付利が、短期金利2%を達成可能であるということは了解可能だろうか? 簡単な話で、仮に準備預金が2%より低ければ、準備預金をインターバンク市場へ融通する機会費用(逸失利益)が2%未満となるので、準備預金がインターバンク市場に集まり短期金利が下落するからだ。

2018-12-13 16:49:42