茂木健一郎さん連続ツイート2011年5月
雑(1)植木鉢の植物を買ってきて、それが枯れてしまったあとでも、放っておくとやがてさまざまな植物が生えてくる。その移りゆく様子をながめているのを私は「雑草ガーデニング」と称して、密かに推奨している。
2011-05-26 07:43:59雑(2)この植物を育てる、と決めて、生えて来る他の草を抜いてしまうのではなく、草たちの「自主性」に任せてその勢力争いを見ていると、もともと自然はそういうものだと思うし、変化が興味深く、またなぜか癒されるのである。
2011-05-26 07:45:19雑(3)目的に囚われていると、「雑」な時間を警戒する。友だちとだべっていたり、ぼんやりとあれこれ考えていたり、街を歩いたりといった、分類不可能な時間。しかし、そのような雑草の時間にこそ、生命への肥やしがあるように思う。
2011-05-26 07:46:22雑(4)「雑用」というと、いかにも無駄なことのようだが、よく考えてみると、そこにこそ生命という複雑系の「腐葉土」がある。分類不可能だからこそ、発酵し、熱を帯び、自分の滋養になってくれることがあるのだ。
2011-05-26 07:47:48雑(5)発想を育むのは、間違いなく雑多な要素である。雑多な要素が結びつき、組み合わさることによって有機体となる。だから、心の無菌状態は良くない。むしろ、ばっちい雑多な環境の中に自分をひたさないと、発想の果実は生まれてこないのだ。
2011-05-26 07:49:48雑(6)自分ひとりで元気になろうとするのは無理。元気というものは、その人の周囲に生えている雑草が与えてくれるもの。生きる元気は、もともと、集合的な現象なのである。一つが倒れても、また生えて来る。雑草だから。
2011-05-26 07:51:28雑(7)日本の高度経済成長期が元気だったのは、日本人の多くが雑草だったからだろう。みんなあれこれやってたんだよ。過剰なコンプライアンスは雑草を根絶やしにする。効率なんてクソクラエ。猥雑な土壌からしか、天を衝く発展は生まれない。
2011-05-26 07:53:25雑(8)だからねえ、元気になる方法は、自分の中に、さまざまな雑草が生えてくることを笑って許容する、そのような態度の中にしかないのです。
2011-05-26 07:54:04雑(9)雑草ガーデニングをお薦めします。「雑草という名前の草はない」と昭和天皇もおっしゃったそうです。一見、小さくて、地味な植物も、よく見ると一生懸命生きています。ひそやかに可憐な花を咲かせています。
2011-05-26 07:55:46太陽(1)しばらく前に、これからは個人の遺伝子配列からさまざまな病気にかかる確率が計算できるようになることを話していて、気をつけないと「脅迫」産業になると言った。こんな病気になるから、この健康食品を飲めなどと言って売りつけるのである。
2011-05-27 08:26:40太陽(2)「あるべき状態」について研究するのは良い。しかし、それを、「そうならなかったら大変だ」と脅迫に使うのは間違っている。脳科学の受容でも似たようなことがあって、そういう議論をする人を見ると腹が立つ。
2011-05-27 08:27:37太陽(3)幼児教育は、「脅迫」に使われやすい分野である。さまざまな学習が幼い時に始めた方が良いことは事実だとしても、だからと言って、「早く始めないと大変なことになる」などと脅迫するのは間違っている。発達の道筋はそれぞれ。もっと大らかに構えていて良い。
2011-05-27 08:28:54太陽(4)昨今のグローバリズムで、「英語をやらないと時代に取り残される」などと煽るのも脅迫である。好きならばやればいいし、苦手ならば取り敢えず放置しておいても良い。いずれにせよ、義務だと思ってやっても、ろくなことにはならない。
2011-05-27 08:29:55太陽(5)やらないかと北風をぴゅうぴゅう吹きつけるよりも、こんなに楽しいよ、嬉しいことがあるよと太陽で照らす方がよほど効果があるし、生きることの本質にも沿う。世の中には北風産業がたくさんあるけれども、そんなものは無視していればいい。
2011-05-27 08:31:39太陽(6)ジョン・ボウルビィは、保護者が「安全基地」を与えることが子どもの発育に重要だと主張した。しかし、その研究の目的は、不幸にして幼い時に「安全基地」が失われた子供を助けるためであって、そうでなければダメだと決めつけるためではなかった。
2011-05-27 08:33:02太陽(7)「ありうべき」理想の状態はある。しかし、人生はいろいろなことが起こるから、必ずしも思うようにはいかないかもしれない。それでも、前向きに生きることを助ける。これが、本当の科学だし、あるべき人間の態度だろう。
2011-05-27 08:34:08太陽(8)テレビで、評論家が「子どもの生育環境はやはりこうでないと」などとしたり顔で喋っていたら、くだらないやつだと無視してしまっていい。本物は、どんな環境に置かれた子どもでも、助けようと必死になって考えるはずだから。
2011-05-27 08:35:48太陽(9)一般において、「あるべき論」を展開し、そうでないものを切り捨てたり決めつけたりする人は、さびしい人である。北風は生命を育まない。太陽は、ものみな照らす。どんなに条件に恵まれなくても、仕方がないじゃないか。人生は一度しかないんだよ。
2011-05-27 08:37:00でい(1)一緒にアート&デザインの番組をやっているShellyさんがチャリティイベントをやるというので、植田工にキャンバスを買ってきてもらった。クレーの「黄色い鳥」にリスペクトして、白い木と鳥を描こうと思った。そしたら、うまく描けんかった。
2011-05-28 07:34:19でい(2)最近、「できない」ということが快感でたまらない。あれもできない、これもできない。それをできるようにしてやる! というのが、人生において最大かつ唯一の課題となりつつある。
2011-05-28 07:35:02でい(3)英語で本をバシバシ書いてやる! リチャード・ドーキンスのような圧倒的な知性を感じさせる文体で。ドーキンスの向こうにはチャールズ・ダーウィンがいる。しかし、今はできない。だからうれしい。日々精進する。
2011-05-28 07:36:43でい(4)クオリア問題を解決したい。しかし、できない。だから、いろいろと考え、あがく。直近はベルクソンを英語で読み返している。彼も同じところでぐるぐる回っていたんだな。クオリア問題についてはみんなできない。人生みな不能だ。なんて気持ちいいことなんだ!
2011-05-28 07:38:18でい(5)朝、Shellyのチャリティのために絵を描こうとして描けなかった。そのShellyとの番組のゲストに、浦沢直樹さんが来て、休憩時間に目の前で絵を描いていた。すごかった。ぼくにはできないことがさらさらできる人がいる。だから人生って面白いな。楽しいな。
2011-05-28 07:39:29