ピノコがナウシカを越えていく

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uroak_miku @Uroak_Miku

頭の整理をしておこう。訳読が重要視された理由として①授業が進めやすい、②試験を作りやすい の二つがあって、面白いことに国語の古典読解についても当てはまる。実際、旧制高校入試問題を眺めていくと「口語ニ訳セ」という問が必ず設けられている。 外国語と国語が口語体を介して同じ土俵に。

2019-01-19 09:33:07
uroak_miku @Uroak_Miku

敗戦後、英語教科書に会話が登場して、これの口語訳という新たな課題がニホンジンに突き付けられた。 アメリカ導入の民主主義の理念にそくしているということで「です・ます」が小中学校に広まり、英語教科書の訳読文体としても採用された。

2019-01-19 09:35:22
uroak_miku @Uroak_Miku

国語科は国語科で敗戦の衝撃を乗り越えるために文語体が追放され、現代国語/古典/漢文の三枚看板をあげることで追放劇はあいまいにされた。 それからもうひとつ、「日本語」が外地から引き上げてきたけれど国語科の戸籍には入れてもらえなかった。大学のアカデミックな世界にようやく籍を得た。

2019-01-19 09:37:52
uroak_miku @Uroak_Miku

英語教科書の訳読文体「ジャック&ベティ語」は、国語の戸籍にも日本語の戸籍にも入らない、無戸籍児童だった。 これがやがて無国籍児童に「進化」していって、教科書のなかに幻のインターナショナルスクール(しかし設定上は公立中学校!)が生まれていった。

2019-01-19 09:40:26
uroak_miku @Uroak_Miku

こうもいえるか。無戸籍児童を無国籍学校が回収していったのだ、と。 pic.twitter.com/1zmvBXpjFi

2019-01-19 09:42:29
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uroak_miku @Uroak_Miku

いっぽうで国語科のほうでは「日本語」の入籍が拒否され、戦前開発の文法が温存された。この文法は英文法の血が濃くて、日本のことばとは実は相性が良くないものだったが、敗戦後もそのまま使われ続けた。

2019-01-19 09:45:57
uroak_miku @Uroak_Miku

そのせいで「主語ははっきりさせましょう」という文の主語は何なのか?というパラドクスを抱えることとなった。英文法は主語の存在を自明のものとして組み立てられたものなので、その血を受け継いだ国文法では、主語の概念がもともとない日本のことばを分析するのは原理的に無茶だった。

2019-01-19 09:48:38
uroak_miku @Uroak_Miku

このパラドクスが、やがて英語を習いだすと顕在化していく。例の「限りなく透明に近いYou」を、英語の授業でうまく教えることができなくて、それで「We」で代用したおかしな英文が中学英語教科書を彩っていく。ほかにも国語科のいろいろなパラドクスが英語科のほうで顕在化していく。

2019-01-19 09:51:39
uroak_miku @Uroak_Miku

英語科の教師が「『限りなく透明に近いYou』を日本の学校で教えていないと批判されるがちゃんと教えているぞ」と反駁したところで、それは「We」でお茶を濁した英文を生徒たちに教え込んだ後に「限りなく~You」を後出しじゃんけん的に教えているにすぎない。ゆえに生徒は教師の説明についていけない。

2019-01-19 09:54:56
uroak_miku @Uroak_Miku

インフルエンザのワクチンは、感染前に注射してこそ威力を発する。感染後ではほぼ無力。それと同じことです。

2019-01-19 09:55:51
uroak_miku @Uroak_Miku

「ニホンジンの英語」ウイルスは、小学校にあがってこくごのじゅぎょうのなかで感染していく。先に指摘した主語のパラドクスも、小2の国語で発生する。小2ですでに私たちは「限りなく透明に近いYou」を理解できなくしてしまう「ニホンジンの英語」ウイルスに感染しているといえる。

2019-01-19 09:58:01
uroak_miku @Uroak_Miku

そして小5から英語科がスタートすることで(すでにスタートしているわけですが)「ニホンジンの英語」ウイルスの感染どころか発症までが2年も早くなってしまうわけです。

2019-01-19 09:59:34
uroak_miku @Uroak_Miku

今でさえワクチン接種が手遅れなのに、もっと手遅れになってしまう。

2019-01-19 10:00:05
uroak_miku @Uroak_Miku

国が「読む」「書く」「話す」「聞く」の4つをしっかりやらせましょうと主張していますが、これは要するに対処療法です。インフルエンザの特効薬が望めないなか、解熱薬とか咳止めとかの対処薬でお茶を濁すしかない――そんな風に私の目には映っています。

2019-01-19 10:02:19
uroak_miku @Uroak_Miku

「読む」「書く」「話す」「聞く」の4つを押さえられれば、すなわちモノホンの英語力ではないか、という理屈です。解熱薬や咳止めや頭痛薬やほかいろいろを一度に呑めばインフルエンザのすべての症状が収まるじゃないか、というわけです。 そんなわけないのに。

2019-01-19 10:04:04
uroak_miku @Uroak_Miku

私たちがものごころつく前から使っているこのことば、明治期から現代にかけて国家によって改造されたものです。すでに英語の血がたくさん入っています。「ニホンジンの英語」ウイルスは、私たちが幼い頃にことばをみにつけていく際にすでに体内に入っているともいえる。

2019-01-19 10:06:23
uroak_miku @Uroak_Miku

ワクチンの効果が期待できない、そういう運命なのです。

2019-01-19 10:06:54
uroak_miku @Uroak_Miku

打つ手はふたつ。幼いうちから英語環境にさらして、英語を外国語としてではなく第二母語として習得させるのが第一の手。言語脳を二つ同時に育てるわけです。 しかしこれはメンテナンスが大変。実際、もし幼稚園で英語ペラペラになっても小学校に上がってしまえばじき忘れてしまう。

2019-01-19 10:09:32
uroak_miku @Uroak_Miku

もうひとつの手は、あえて感染させて、後日外科手術でなんとかすることです。「Ms Baker, this is your pen.」という誤った英文をあえて教えておいて、大学生になった時点で「それって『ベーカー先生、このペンは受け取れません』って英語だよ」と真相を明かしてショックを受けさせ、矯正を始めるの。 pic.twitter.com/MmZV6Jnqxr

2019-01-19 10:14:25
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しかしこれは大きな痛みをともなう。自分自身の体を自ら外科手術するのと同じだから。 pic.twitter.com/MTtjTRylMj

2019-01-19 10:24:58
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だから助手がいる。BJ氏は自己手術で一度へまをして、ピノコに救われていますね。ピノコ役がいるのです。 pic.twitter.com/OEvJYIhNXg

2019-01-19 10:29:08
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もうひとつこんなまんがを紹介。 自分たちはもとから毒対応に生まれているので世界の浄化後には滅びる運命であることを思い知らされる。 pic.twitter.com/AaUqP3nNO5

2019-01-19 10:34:11
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uroak_miku @Uroak_Miku

どうも「ニホンジンの英語」も同じに思えてならない。私たちがことばをみにつけていくなかに、すでにウイルスが混じっていて、それの除去は非常に難しいのだと。

2019-01-19 10:36:22
uroak_miku @Uroak_Miku

ナウシカでも越えられなかったこのジレンマを、ピノコが乗り越えていく―――なんだかわくわくしますね。

2019-01-19 10:37:23